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89



7年前、イタリア某所。
尊厳とした趣で建つ、この大きな城の広間では盛大なパーティーが行われていた。
黒いスーツと華やかなドレスに身を包んだ貴人婦人が多くいる。
しかしこれはただの楽しいパーティーというわけではない。
実はこの城、最近力をつけてきているマフィア、アンコーラファミリーの本拠地。
つまり、今楽しそうに談笑しているのは全員マフィア関係者なのだ。
そしてアンコーラファミリー7代目ボスが、名前の父だった。


「どうだい名前、絆。楽しんでいるか?」
「とっても!」
「はい。」


仲でも一際大きなテーブルに名前と、名前の父、母、兄の4人は座っていた。


ザワザワ


食事がそろそろ終わるという頃、会場内がざわめきだした。
人々の視線は扉の方に集まっていて、感嘆のため息をもらす者もいた。
たった今会場に入ってきたのはミオーネファミリーボスの一人娘、リーアだった。
リーアの容貌はマフィア界でも評判が良くて、ひっきりなしに結婚を求められていると聞く。
何故そのリーアがこんなところに姿を現したのだろうか。


「おお、よくぞおいでになられました!ここに来られたという事は承諾してもらえたんですね?」


リーアとその父の姿を見た名前の父は立ち上がり、嬉々として2人に歩み寄った。


「ああ。リーアも彼のことを気に入ったそうだ。それに腕もたつと評判だからね。」
「ありがとうございます。絆、来なさい。」
「……」
「リーアお嬢様だ。お前のお嫁さんだよ。」
「…父上、話に聞いていませんが…」
「ああ、驚かそうと思ってね。この前のパーティーでリーアお嬢様をずっと見ていたじゃないか。」
「……」


そんな話一切されていなかった絆は静かに驚いた。
その表情を満足気に見た父は得意気にそう言った。このパーティーは絆とリーアの結婚を祝うために催されたのだ。


「絆君、リーアを頼むよ。君にはとても期待している。」
「…ありがとうございます。」
「お兄ちゃんおめでとう!よかったね!」
「…ありがとな。」


リーアの父に頭を下げた絆に名前がかけよった。
絆の婚約を心から祝ってくれる名前に、絆は優しく笑って頭を撫でた。


「妹?かわいいわね。」
「あっ、名前です!よろしくお願いします、リーアお姉様!」
「よろしくね、名前ちゃん。」
「はい!(きれい…!)」


リーアも名前の視線に合わせてしゃがみこんで、名前の頭を優しく撫でた。
近くで見ても綺麗なその顔立ちに名前はつい見とれてしまった。


「さて、では早速親睦を深めるためにダンスでも踊ってみるか?」
「ええ…是非。」


〜〜♪


父が指をパチンと鳴らすと、優雅な音楽が流れ始めて絆はリーアの手をとりステップをふんだ。
それにつられるように、まわりの人々も音に合わせて踊り始める。


「いいなあ…私もいつか、好きな人と踊りたい…」
「そうだな…あと3年もすれば、な。」
「楽しみ!」


パッ


「「「「「!?」」」」」


ダンスもそろそろ終盤にかかるという頃。いきなり場内の電気が消えた。
一同はいきなりのことに驚いたが、イベント好きのボスのことを知ってかあまり警戒はしていなかった。


「何…?もしかしてここで披露宴をするのかしら。ねえ絆……絆?」
「アンタと結婚する気はない。」


リーアが暗闇の中絆に話しかけると、自分の額に冷たいものが当てられている。その先には絆。
リーアも一応マフィアのボスの娘だ。この状況を理解できないほど馬鹿ではない。


「な、何のつもり…!?」
「わかりませんか?」
「……ここで私を殺したら貴方のお父様のファミリーは終わりよ…!」
「そんなくだらないものはどうだっていい。」
「!?」


絆は嘲笑して、吐き捨てるように言った。


「…じゃーな。」


パァン


「きゃあああ!!」
「「「「「!?」」」」」


リーアの断末魔を始めとして、次々と銃声と叫び声とが響き渡る。
パーティーは既にパニック状態。誰もが自分の命を何よりも優先して出口を目指した。


「な、なんだ!何が起きているんだ!」
「お父様…」
「! 大丈夫だよ名前…お父さんの側に……ぎゃああ!!」
「!」


会場の真ん中で名前の肩を必死に抱いていた父が突然叫び声をあげて倒れた。
名前の真っ白なドレスが、小さな手が、視界が、父の血で真っ赤に染まっていく。


「あなた!……絆…!?」
「……」


父の悲鳴をたよりに駆け寄った母にも、絆は銃を向けた。


「何で…こんな事を…」
「…心当たりがないんなら話になんねーな。なかなか楽しかったよ。……オママゴト。」
「! 名前っ逃げ…ッ!!」
「…お母様…」


名前が息絶えた父から視線を上げたと同時に、母の胸から弾けたように赤いものが溢れてきて、その後ろから銃を持つ兄の姿が見えた。
その服と肌はいろんな人の返り血で赤く汚れていた。絆は先ほどの優しい笑顔からは考えられないくらい、無表情で名前を見つめている。


「お兄…ちゃん…?」
「……」


事の状況がよくわからずに絆を見上げる名前に、名前を見下ろす絆。
絆は白い方の銃を、名前に向けた。
名前はどうしていいのかわからずに、ただただ絆を見上げた。


「…またな。」


言った瞬間。銃からは針が出てきて名前の首下に刺さった。
途端に名前は力なく床に倒れて、やがて目を閉じた。






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