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「これで………いいですか?」


初めのうちは苦戦を強いられると思われていた霧戦だったが、結果は骸の圧勝に終わった。


「骸様!!」
「すんげーー!!やっぱつえー!!」
「骸くん…」


ザンザスに意味深な言葉を投げかけた後、帰ってきた骸を千種と犬、そして名前が出迎えた。
名前は2人の間から骸の前に出て、心配そうに骸を見上げる。
何か言いたそうなその表情に、骸は優しく「何ですか?」と聞いた。


「大丈夫なの…?出てきちゃって…体は…」


早く返事を聞きたかったのか、そのあとの言葉は省略した。
名前は前日に骸の今の現状を本人から聞いていた。
骸は今、ヴィンディチェの最下層の牢獄にいるのだ。身動きとれるはずがない。
それなのに自分の体を具現化までするなんて……相当な負担をかけているに違いないと、名前は思ったのだ。


「大丈夫ですよ。…お久しぶりです、名前さん。」
「…うん…」


名前の推測は間違っていなかったが、心配をかけたくない骸は名前の頭を優しく撫でてすぐに話を変えた。


「てんめーーどの面下げてきやがった!!」
「ちょっ…」
「おい!獄寺!!」


以前は敵だったことに対してか、名前といい感じになっていることに対してかはわからないが、獄寺は骸に敵意むき出しでボムを両手に構える。
が、そんな獄寺に対して骸はいたって冷静だ。


「僕が霧の守護者になったのは君の体をのっとるのに都合がいいからですよ、沢田綱吉。」
「骸くん…!」


名前が何か言いたげに骸を見上げた。名前はさっき、骸たちがヴィンディチェの牢獄を脱獄するときの光景を見た。
骸が守護者になったのは、犬や千種を守るためだと知っていた。
しかし骸は名前に何も言わせない、とでも言うかのように、名前の肩を抱き寄せて自分の胸の中におさめた。


「てめー!」
「ま、待って獄寺君!」


そんな行為がまた獄寺の怒りを買うのだが。
今にもボムを放り投げそうな獄寺はツナがなだめて、ツナは改めて骸に言った。


「と、とりあえず…ありがとう。」


その言葉に骸はフ…と薄く笑っただけで、何も言わなかった。
そして何事もなかったかのように名前の両肩を持って、自分の胸から少し離して見つめる。


「骸くん…」
「…名前さん。」
「…!」
「な…!」


相変わらず骸の体を心配している名前に骸の顔が近づいた。
誰がどう見ても、それはキスだった。唇ではない。だからといって、頬でもない。その中間に骸の唇が触れた。


「…明日の試合…頑張ってくださいね。」


唇を優しく離すと、骸はしっかりと名前の目をとらえて言った。


「……うん。」


名前も骸の目をしっかりととらえて答えた。
まだどこか弱弱しいが、そう言った名前の表情には迷いが一切見られなかった。
それに安心して骸は目を半分閉じる。


「では…このこを…」


その瞬間、骸の体が傾いたと思ったら名前に向かって凪が倒れこんできた。


「わわっ!」
「……」
「あ、ありがとちーくん。」
「いえ。」


いきなりのことで、でも避けるわけにはいかずにその体を受け止めて体勢を崩した名前を千種が後ろから支えた。
名前が体勢を立て直すと肩に触れていた手はすぐに離れた。


「勝負は互いに3勝ずつとなりましたので、引き続き争奪戦を行います。」
「明日は――――…風の守護者の対決です。」


名前と絆の目が合った。






■■
次は過去編挟まります。





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