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「クフフフ…」


渦巻く霧の中から聞こえたのは凪ちゃんよりもはるかに低い声。
この声、聞き覚えがある。懐かしいな…。


「随分いきがっているじゃありませんか……マフィア風情が。」


霧が晴れたそこには……骸くんが立っていた。


「骸くん…!」


昨日骸くんから今の骸くんの状態だとか、凪ちゃんのこととか聞いてたけど、骸くんの姿が見れるなんて一言も聞いてないよ!?
え、幻覚…なのかな……だって、骸くんは今ヴィンディチェの牢獄に……


「お久しぶりです。舞い戻ってきましたよ………………輪廻の果てより。」


骸くんは私たちの方を横目で、でもしっかりと見てそう言った。
ああもう何でもいいや!とにかく、骸くんが今目の前に無事にいるっていうことだけで、涙が溢れてきた。


「……ウム、六道骸…どこかで聞いた名だと思ったが思い出したよ。」


骸くんの攻撃を受けて転んでいたマーモン…くん?が起き上がって、また宙に浮いた。


「たしか一月前だ。ヴィンディチェの牢獄で脱走を試みた者がいた。そいつの名が、六道骸。」
「なあ!!」
「えええ!?」
「ま…っ、また脱走したのーー!!?」


ちょっと待ってよ骸くんそんなの聞いてない!!
あ、あのヴィンディチェの牢獄から脱走しようとしたの!?私はてっきり家光さんかリボーンが手を回してくれたのかとばっかり…。


「だが脱走は失敗に終わったはず。更に脱走の困難な光も音も届かない最下層の牢獄にぶちこまれたと聞いたよ。」
「!!」


じゃあ今骸くんは、光も音も届かないようなところにいるの…?そんなこと、昨日言ってくれなかったじゃん…!
でも、脱走が失敗したのに犬ちゃんとちーくんがここにいるってことは……骸くん、2人を助けるためにおとりになったんじゃないかなぁ…。


「クフフフ。ボンゴレが誇る特殊暗殺部隊ヴァリアーの情報網もたかが知れてますね。」
「ム。」
「現に僕はここに在る。」


多分マーモンくんが言ったことは間違っていない。そして、真実も。


「面倒くさい奴だなぁ。いいよ、はっきりさせよう。君は女についた幻覚だろ。」
「!」
「おや。」


マーモンくんの顔が光ったと思ったら、どこからともなく吹雪が骸くんを覆っていって、骸くんの足元が凍り始めた。
うう…幻術だってわかってるのに、ものすごく寒い…!もう1枚着てくればよかったな…。


「おやおや?」
「骸くん!」


ちょ、のんきに「おやおや」って言ってる場合じゃないよ!そんなうちにもうお腹のところまで凍ってきちゃってるよ!?
ってああああたった今全身氷付けにされました骸くんーー!?
それでもなお骸くんの顔は余裕の笑みを浮かべている。
これは大丈夫だととっていいのか……それとも、マーモンくんの言う通りこの骸くんはただの幻覚なのか……


「さて、化けの皮をはがそうか。もっとも砕け散るのはさっきの女の体だろうけどね。」
「ああっ!」
「やめて!!」


ズバンッ


マーモンくんがハンマーに変身して、すごい勢いで骸くんに向かっていったんだけど……
骸くんまであともう少しってところでスバンッって何かが……え!?マーモンくんに何か絡み付いてる!あれは……


「蓮の……花………」
「きれい…」


コロネロが言ったとおり、淡い紫色の蓮の花。す、すごい…きれいだな…。


「クフフフ、誰が幻覚ですか?」
「ムグ!!」


きれいだけど、やってることはちょっと怖いんだよね。
つるがマーモンくんをしめつける間に、骸くんの氷はすっかりとけてなくなった。
それからこっちももう全然寒くないや。…幻術ってすごい…。


「やっぱり本物なんだ…。」
「しかし…だとしたらさっきまでの女はどーなるんですか…!」
「リボーン…」
「クロームと骸をわけて考えちゃダメだぞ。クロームがいるから骸は存在し、骸がいるからクロームは生きていられるんだ。」
「……!?」


リボーンの言うことはよくわかんないけど……今骸くんがここにいるのは、骸くんだけじゃなくて凪ちゃんの力でもあるのかな…。
骸くんも昨日、凪ちゃんには骸くんが必要で、骸くんには凪ちゃんが必要なんだって言ってた。


「さぁ……どうします?アルコバレーノ。のろのろしているとグサリ……ですよ。」
「ムゥ!!図にのるな!!」


グサリって骸くん…。
マーモンくんのおしゃぶりが光ったと思ったら、マーモンくんに巻きついていた蓮のつるがボロボロになって解かれていった。
そしてマーモンくんが5人10人……何十人にも増えていく。


「ぶ、分身の術…!」
「ええーーーー!?」
「それ拙者も知っています!」
「バジル君もーーー!?」


だってこういうのテレビでやってましたよ!にんじゃが使ってました!
やっぱりバジルとは意見が合うなあ!こっちに来てから何回か一緒に日本文化の勉強したんだよ。
バジルは私よりも物知りでえーと、かんめいを受けました!


ズババッ


「!!」


なんてことを思ってたら骸くんが武器を大きく振り回して、マーモンくんの分身を次々とけちらしていった。
骸くんの目の数字は……四。格闘能力の修羅道だ。


「ムムゥ!!格闘のできる術士なんて邪道だぞ!!輪廻だって僕は認めるものか!!」
「ほう。」
「人間は何度も同じ人生を無限にくり返すのさ。だから僕は集めるんだ!!金をね!!」


キラーンと、マーモンくんの頭上にお金が現れたかと思ったらいきなり視界がゆがんだ。
足場も崩れてきて、立つのが困難なくらい…


「きゃ…!」
「ったく…つかまってろ。」
「あ、ありがとう隼人。」


よろめいた私を隼人が支えてくれた。
助かったけどまた呆れられちゃった。いけない、体がなまってるなぁ……動かしとかないと!
とりあえず今は「つかまってろ」っていう隼人の言葉に甘えることにします。
それにしてもすごい幻覚…。さすがはアルコバレーノの1人。骸くんは普通に立ってるけど大丈夫なのかな…。


「クハハハ!強欲のアルコバレーノですか。面白い……だが、欲なら僕も負けません。」


ドドドドド


「なに!?」


骸くんが武器を横に構えると、あらゆる場所から蓮が巻きついた水柱が突き出てきた。
やっぱりすごい、骸くん……頭がくらくらしてきた。これだけすごい幻術を受けてるんだもんな…。
マーモンくんも骸くんに負けじと、骸くんが出した水柱を凍らせてみせる。


「うう…頭がっ…!!」
「ツナ…?」
「10代目!!」
「綱吉さん!」


ひどい幻覚汚染に耐えかねたのか、綱吉さんが座り込んでしまった。
確かに2人ともすごい幻覚だもん。私も少し立ってるのがつらい。
でも綱吉さんは本当に苦しそうで、きっと私の痛みなんて比にならないくらいつらいんだと思う。


「うっ!!!」
「大丈夫ですか綱吉さ……!?」







「骸様……もう追っ手が…」
「ダメれす!逃げられないびょん!!」
「クフフ…さすが鉄壁と言われるヴィンディチェの牢獄…伊達じゃありませんね…。ここからは別れて各々で逃走しましょう。僕一人なら何とかなりますがお前達がいては足手まといだ……。」







頭を抱える綱吉さんの肩に触れた瞬間……鋭い頭痛が走って、それから頭の中に映像が流れ込んできた。
その映像にはちーくんと犬ちゃんと、骸くんの姿があって…場面は多分、脱獄のとき。
綱吉さんの肩から手を離すととたんに映像はそこで途切れてしまった。
けど…やっぱり骸くん、犬ちゃんとちーくんを助けるために、自分がおとりになったんだ…。


「死ね!」


ブワッ


「…骸くん!!」


ハッとして顔をあげると、骸くんが大きく広がったマーモンくんにパクンと食べられるように、包み込まれてしまっていた。
そしてその外からマーモンくんのカエル…蛇…?が、鋭いトゲを出して締め付ける。それじゃあ中にいる骸くんが…!!


「……!!バカな!!」
「骸…くん……」


静かに、だけど一気に、骸くんを包んでいた幻覚のマーモンくんが破裂するように粉々になって、中から蓮の花と、それからやっぱり笑みを浮かべた無傷な骸くんが姿を現した。


「堕ちろ。そして巡れ。」







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