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「明晩の対戦は…霧の守護者同士の対決です。」












「ん…」


雨戦が終わった日の夜中2時。ふと、名前が目を覚ました。
寝つきが悪かったわけでもいやな夢を見たわけでもない。ただ突然目が覚めたのだった。
名前は数回瞬きをした後ゆっくりと起き上がった。そしてぐっすり寝ているであろう3人を起こさないように、静かにリビングへと向かった。
リビングのドアを開けると小さな明かりがついていて、名前は人の気配に気づいた。


「誰…?」


名前がリビングの電気をつけると、台所に凪がコップを片手に名前を見ていた。


「凪ちゃん……じゃなくて骸くん…?」
「…クフフ、流石名前さんですね。」


一言もしゃべってないのに、名前は今凪の中にいるのが骸だということを当ててみせた。
骸は薄く笑いながらコップを置くと、名前に近づいていった。


「名前さん…」
「骸くん…!」


名前の頬に添えようと動かした手を、名前に言葉を遮られて握られた。


「骸くん…聞きたいこと、いっぱいあるの…。」
「…何ですか?」


少し驚いた骸だが、名前の真剣なまなざしに優しくこたえた。


「まず……骸くん、大丈夫なの…?まだ…牢獄にいるんだよね…?」
「…大丈夫ですよ。今こうして僕はここにいるんですから。どうか心配しないでください。」
「…本当?」
「はい。いずれ…必ず戻ってきます。」


その返答を聞くと名前はほっと胸をなでおろして続けた。


「それから…凪ちゃんのことなんだけど…」
「……」


名前がもう1つ、骸に聞きたかったのは凪のことだった。
家光に聞いたときも身寄りがないこと以外は教えてもらえなかった。
やはり一緒に生活していくうえで知っておきたいと思ったのだろう。


「…彼女にとっても、僕にとっても、お互いが必要なんです。」
「……?」
「僕は六道輪廻すべての能力を取り上げられてしまいましてね…」
「!」
「凪の体を借りて、力を使えるというわけです。」


それを聞くと、名前は悲しそうな顔を隠すように俯いた。


「凪は僕と出会う前に事故で内臓を失っています。」
「…え!?」
「大丈夫、僕の幻覚で今は正常に機能していますから。」
「幻覚で…」
「そう…ですから凪には僕が必要だし、僕にも凪が必要なんです。」
「…とりあえず…今は2人とも大丈夫…なんだよね…?」
「…はい。」


最終的に名前が知りたかったのは2人の安否だった。


「…もういいですか?」
「うん、ありがとう。」


骸から安心できる答えをもらった名前は握っていた骸の手を放した。


「では今度は僕が質問します。」
「…なに?」


名前に解放された骸の手は、当初の予定通り名前の頬に添えられた。


「大丈夫ですか?」
「…!」


何がとは言わなかったが、名前には骸の言いたいことが充分に伝わっていた。
名前は切なそうに、でも笑顔を作りながら骸の手の上に自分の手を重ねた。


「ダメだなぁ…あたしは…。」
「…?」
「みんなに心配、かけちゃって。」


名前は目を伏せてそう言った。目尻に少しだけ涙が見える。


「でも、心配してもらえてすごくうれしいよ。私にはみんながいるって思えるの。」
「……」
「だから…戦う。みんなを守るためなら、戦える。」
「……」
「!」


名前の言葉を静かに聴いていた骸だが、名前の目尻から涙が溢れてくるのを見ると名前を抱きしめた。
抱きしめた…と言っても今は名前よりも身長が低い凪の体なので、抱きついたという方が正しいのかもしれない。


「僕が貴方を守ります……それじゃあ、駄目ですか?」
「!」


名前の背中をぎゅっと抱き寄せて骸が言った。
その言葉に名前の瞳が大きく開かれる。そして触れるくらいに、骸の背中と頭に腕をまわした。


「いやだよ。」
「!」


名前にしては珍しく駄々をこねるように言った。


「守られるだけはいや。私だって骸くんを…みんなを守りたいんだよ。」
「…いやです。僕は名前さんを守りますが、名前さんは僕を守らなくていい。」


負けじと骸も意見を押し通してきた。


「やだ。守るもん。」
「いいです。」
「守る。」
「僕が守ります。」


どちらとも一歩も引かない。だんだん口喧嘩っぽくなってきた。


「もう…何で守っちゃだめなの?」
「好きな女性に守られるというのは、男として立場がないじゃないですか。」
「!」


しびれを切らした名前が聞くと、骸から返ってきたのはストレートな告白。
名前は思いがけない言葉に少しひるんだ。


「それじゃあ、私と同じだよ。」
「!」


自分と同じ……ということは、骸の告白に名前がこたえたのだろうか…


「私だって、大好きな人たちを守りたいんだから!」
「……」


と思われたがさすが名前。見事に骸の期待を裏切ってくれた。
骸は名前にとって大好きな人ではなく、大好きな人“たち”のうちの1人なのだ。


「……まあ…、今はそれでいいです。」
「うん!」


今はまだ、大好きな人“たち”の1人でも…と、骸。
名前はそれを守ってもいいと解釈。







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