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「ふかく…。」
「何が?」
「……何でもない…。」
6時間も雲雀の膝の上で寝ていたなんて…!
「ちょ、雲雀!みんなはこっち…」
「群れたくない。」
「……そーですか…。」
雨の守護者同士の戦いの日。
フィールドはB棟でみんながそこに集まっているなか、雲雀は名前の手を引いて屋上に向かってしまった。
確かに雲雀が自分からツナたちの集団のところに行くはずがない。名前は諦めて雲雀についていった。
「え…こ、ここで見るの!?」
「そうだよ。早く来なよ。」
屋上につくと、雲雀はそこの給水タンクの上に上ってB棟を見下ろした。
「早く来い」と言われても高いうえに狭いそこに上るには少し勇気がいる。
それでも一応、名前はゆっくりと恐る恐るはしごを上っていった。
「落ちちゃいそう…」
やっとたどり着いたそこはやはり狭くて、ギリギリで2人座れるくらいだった。
「…怖いなら掴まってればいい。」
「……」
引き腰の名前に、雲雀が左腕を差し出すように少し上げた。
名前はゆっくりと雲雀の隣に腰を下ろしたあとその腕に自分の右腕を組んで、雲雀に寄り添った。
まさか本当に掴まってくるとはあまり期待していなかった雲雀は名前に見えないところで驚く。
本当に今日の名前は素直だ。いつもなら雲雀が屋上に行くと言った時点でツナたちのところに向かうはずなのに。
それもこれも実の兄、絆との再会が関係している。本人でも気付かないうちに、心のよりどころを求めているんだろう。
「……名前…」
理由が何にせよ、名前が自分を頼ってくれているということが嬉しくて雲雀は名前に顔を近づけて名前を呼んだ。
そして名前がこちらに振り向いたとき、頬にでもキスをしようとしたのだが……
「あれ…霧…?」
「……」
突然濃霧が現れて名前の顔がよく見えなくなってしまった。
もちろん名前からも雲雀は見えなくて雲雀が今しようとしてたことなんてわからないわけで、「それでなに?雲雀。」と霧の向こうの雲雀に尋ねた。
雲雀はなんともいえない罪悪感と悔しさを感じて、「何でもないよ。」と答えて顔を逸らした。
「…モニターよく見えないね。」
霧の中で名前が呟いたが、雲雀にとってはどうでもいいことだった。
「山本ファイッ!!!」
「「「「「オーーーー!!!」」」」」
「あ!」
少し経って、霧が晴れてきたところでモニターから了平を始めとして、円陣の声が聞こえてきた。
その声にさっきまで足をブラブラさせていた名前が過剰に反応する。
「…どうしたの?」
「円陣……私もやりたかった…!」
「……」
声をあげてまで反応したから雲雀が聞いてみると、名前の答えはこんなものだ。
雲雀は心底呆れた。多分名前と会ってからベスト3には入る呆れ具合だろう。
「それでは雨のリング、S・スクアーロVS.山本武……バトル開始!!」
チェルベッロが試合開始の合図をすると、名前も雲雀も真剣な眼差しをモニターに向けた。
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