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「雲雀ー…」
「ああ名前、ご苦労…」
「校長室の場所、わかんなかった…えへ。」
「……」
「え、えっと…一応、探したんだけど…ね?」
「…はあ。」


自分が預けた書類を綺麗なまま持ってきた名前に、雲雀はため息をついた。


「わ、わかりましたよ!もう1回探してくれば…」
「いいよ、もう。」
「へ…」


雲雀は応接室を出て行こうとする名前の腕を掴んで引き止めた。そして少しだけ自分の方に引いてみる。
不意に引っ張られて名前は抵抗できずに雲雀の胸に飛び込む形になってしまった。


「わった、と……ディ、ディーノは!?」


雲雀の胸板に額が当たると先ほどのことを思い出したのか、名前は即座に雲雀から距離をとった。
顔が少し赤い。視線も合わせてくれない。いつもとは違った名前の初々しい反応に雲雀は口の端を上げた。


「帰ったよ。…これ。」
「…あ。」


まだ握ったままだった名前の手の上に、ついさっきディーノから預かった名前の携帯を置いた。不在着信が3件……全て雲雀のものだ。


「いい度胸してるね…名前。」
「これは、その…とにかく行かなきゃって思ってて…携帯…忘れちゃって…」


しどろもどろに名前が説明する。


「そんなに僕に会いたかったんだ?」
「んなッ…ち、違いますー!!」
「……おいで。」


ムキになる名前を一笑して、雲雀はソファーに座り込んだ。そして自分の隣をポンポン、と叩いて名前を呼ぶ。


「……」


名前も不機嫌そうな顔をしているものの、素直にその言葉に従う。


「会いたかった…」
「!」


名前が隣に座ると雲雀は名前の頭を優しく撫でるように、自分の肩の方に抱き寄せた。
名前は大きく目を見開いたが抵抗はしない。


「……おかしい、な…」
「……」


やがて名前は、雲雀の肩に体重を預けて目を瞑った。


「雲雀と一緒にいると……すごく、安心するの…」
「……」
「何でだろうね……最初は苦手だったのに。」
「……」


雲雀の肩の上でゆっくりと深呼吸をした。この匂いが、あたたかさが、名前を安心させる。


「お願い…」
「……なに?」
「そばに…いて…。」
「!」


これにはさすがの雲雀も動揺を隠し切れなかった。
なんてったって、あの名前に「そばにいて」なんてそんなことを言われたんだ。平常でいられるわけがない。
幸いなことに名前は雲雀の肩に体重を預けているから、名前から雲雀の顔は見れないはずだ。
それでも雲雀は赤くなった顔を手で覆った。自分の落ち着かない心臓の鼓動が名前に聞こえてるんじゃないか、と。


「……」


内心かなり余裕のない雲雀に対して、名前は雲雀の学ランのすそをぎゅっと握ったまま動かない。
雲雀の耳に、静かな呼吸の音が聞こえた。どうやら安心して寝てしまったらしい。


「ん…」


とさ


「!」


すっかり眠りに入って力が抜けてきた名前は雲雀の肩からズレ落ちて、雲雀の太ももの上…つまり雲雀に膝枕をしてもらう形になった。
名前の無防備な寝顔が雲雀に向けられる。それだけなのに、雲雀の心臓はいつにもなく速く動いた。
「群れ」を咬み殺しているときも、どんなに疲れてても、こんなにも速く脈を感じたのは初めてだった。
死んでしまうんじゃないかという思いさえもよぎった。


「まったく君は…」


雲雀はため息をついて、自分の膝の上でぐっすり眠っている名前の髪をそっと撫でた。
決して呆れているというわけではない。むしろ愛しいくらいだ。


「……好きだ。」







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