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「名字絆……ヤツは名前の兄で、名前の…自分の親のファミリーを惨殺した男だ。」
「「「「!!」」」」















「ん…」


今は使われていない病院のベッドで名前が小さく身じろぎをした。眉間に小さくシワを寄せて、オレの服のすそをぎゅっと握ってくる。
怖い夢でも見てるんだろうか。それでも起こしてはいけないと、そっと額の汗をタオルで拭いてやった。

最近の名前は随分立派…って言うかなんつーか、しっかりしてた。ほんの4年くらい前では考えられないくらいに。
でも今となってはこんなにも弱弱しい名前が逆に珍しくて、また前みたいに口もきいてくれなくなるんじゃないかと怖くなる。
頼られてる…って思うと嬉しいけど、やっぱり名前は元気な方がいい。

それにしてもまさか絆がヴァリアーの一員で…しかも風のリングの守護者だったとは…。
血が繋がってるんだから同じリングを持つのはわかるけど……それ以前の問題だ。
ヤツはいつヴァリアーに入った?組織団体を嫌うヤツがわざわざヴァリアーに入って、リング争奪戦に加担する理由は何だ?
名前が目的なんだろうか…。まさかこの争奪戦で名前を……?いや、それだったら何故ファミリーを惨殺したときに名前だけ残した?

……ちくしょー、考えれば考えるほどわかんねー!
とりあえず、名前のためにオレができることをしよう。


「ディーノ…」
「ん?」


寝言かと思ったけど、オレはできるだけやわらかく返事をした。こうすると名前が安心するって知ってるから。
そしたら名前のまだ眠たそうな目がオレを見つめていた。起きたみたいだ。
少し涙目で、首筋には汗でくっついた黒髪………いやいやいやこんな場面でそんなこと考えてはいけないやめろオレ!!


「ん…」
「い、いいって!まだ寝てろよ。疲れてるだろ?その…朝食、持ってきてやるから!」
「……」


起き上がろうとした名前の肩を押し戻して、またベッドに寝させた。
今の押し倒したみたいだ…なんて思ったら顔が赤くなりそうで、オレは逃げるように病室を出た。
やばい…今のはやばい。そしてオレもやばい。こんな態度じゃ名前を不安にさせちまうかもなのに……ダメだな、オレは。
つーかもう11時過ぎてたのか……朝食じゃなくて昼食だ。















「……」


夢を見ていた。どんな夢だったか、詳しくは覚えていないが何の夢を見たのかは明白だった。…あの時の夢だ。
名前は自分の額や首もとの汗を、そばに置いてあったタオルで拭いた。


「(ディーノに、お礼…言わなきゃ。)」


意識が定まってきた名前はまずそう思ってディーノのあとを追おうと、再び体を起こした。


み〜どりたな〜びく〜♪


その時。急に机の上に置いてあった携帯が鳴り響き始めた。
しかも着信音は並中校歌。雲雀にもらったらしい。そしてこの音楽が流れるのは……雲雀からのメールか電話のときだけ。


「……!」


急に名前はハッとしてベッドから軽く飛び降りると、なり続ける携帯を取りもせず一目散に病室を出ていった。昨日、雲雀に言われたことを思い出したのだ。
車にも乗らずに、名前は並中応接室に向かって走った。













「(…出ない…。)」


これでもう3回目。いったいどうしたんだろうか。ちゃんと昨日来るようにって言ったのに。
寝てる?いや、違う。名前は遅くても10時には必ず起きる。
委員会に来ないことは多々あるけど、これだけかけても電話に出ないのは初めてだ。
彼女の身に何か起きているんだろうか。また…前みたいに動けなくなっているんだろうか…。
それとも避けられてる…のか…?いや、でも昨日は普通だった。


ガチャッ


「…はぁ…ッ…」
「!」


電話をかけながらそんなことを考えていたら、応接室のドアが勢いよく開いた。
どうやら杞憂だったみたいだ。
まったく…応接室にノックもせず入ってくるのなんて名前くらいだよ。息切れしてるけど…まさかここまで走ってきたの?
名前は僕と目が合うと、眉を寄せて早歩きで僕に近づいてきた。怒ってる…?っていうより、何て、言うんだろう…


「名前…」
「……」
「!」


「遅刻だよ」……そう続けようとしたのに、出なかった。
銃を押し付けられたわけでも、平手打ちをくらったわけでもない。
ただ、僕の左手が名前の両手に、ぎゅって握られただけ、だ。それだけなのに僕の心臓を跳ね上がらせるには充分だった。
いきなり何をするんだ、この人は。僕がどれだけ動揺してるか、わかってるんだろうか。


「雲雀…」


やがて名前は俯いていた顔を上げて僕を見上げてきた。
その名前の表情を見た瞬間……握られた手をほどいて名前を強く抱きしめた。
抱きしめるのは別に初めてじゃないし、抱きしめたいって思うことはしょっちゅうあった。
でも、自分でも不思議なくらい体が自然に動いた。いつもならブレーキがかかるのに。


「名前…」


自意識過剰だと自分でも笑えてくるけど……僕を見上げたときの名前の顔が、「抱きしめて」って、言ってる気がしたんだ。
じゃないと名前が消えてしまうんじゃないかと、思った。






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