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「あと6分でハリケーンタービンが爆発を開始します。」


時間も残りわずかになってきたということもあって、獄寺は勝負に出た。
入り口が1つしかない図書室でベルを迎え撃つ気だ。
全体的な勝負の流れは獄寺にあるはずなのだが、ベルはいくらボムをくらっても倒れない。むしろ、快感を得ているようだった。


「しししっ。」


ベルは何の躊躇もなく図書室に乗り込み、ナイフを投げた。
獄寺もボムで迎え撃つが、またナイフが触れていないというのに獄寺のボムは真っ二つにされてしまった。
何かが不自然なのだが…ベルはそれを考える暇さえ与えないというように、ナイフを投げ続けた。
怪我のせいだろうか、狙いは獄寺から大幅にずれている。わざと外しているのだろうか。


「!!?」
「隼人!?」
「獄寺殿止まってはダメです!!」
「早く逃げないと!!」


ベルが「できあがり」と言ってナイフを投げたあと、獄寺は戦闘中にも関わらず足を止めてしまった。


「逃げないんじゃなくて逃げられないのさ。」
「「「「!?」」」」


その理由を説明したのはヴァリアーの霧の守護者、マーモンだった。
モニターでは微かにしか見えないが、今獄寺の周りには鋭利なワイヤーが張り巡らされているのだと言う。
その手段はナイフ。ナイフにワイヤーをつけていたんだろう。やはりさっきからのナイフはわざと外していたのだ。


「ししししっ、おっしまーい。」


絶体絶命だと思ったその時……


「お前がな…」


ドガガガガ


爆音とともに周りの本棚が崩れていった。獄寺がこぼれた火薬を導火線のように使って爆発を起こしたのだ。
これによって張り巡らされていたワイヤー緩み、獄寺の肌に触れても殺傷力はまるでない。


「そしてこのボムの行き先は……てめーのワイヤーに案内してもらうぜ!!」
「!!」


身動きがとれるようになった獄寺はベルから伸びているワイヤーにボムを取り付け、ボムは一直線にベルに向かっていった。回避は不可能だ。


「これが嵐の守護者の、怒涛の攻めだぜ。」


ドガガガンッ











「勝った…の…?」
「やりやーったな……いいんじゃねーか?あいつが嵐の守護者で。」


爆発の煙が晴れてベルが倒れる姿が映った。今度はもう、ピクリとも動かない。
しかしこれで終わりではない。この勝負の勝利条件は嵐のリングを完成させること。
獄寺はフラつきながらもなんとか踏ん張って倒れるベルに向かっていった。


「その程度の出血でフラついてんじゃねーよ。とっとと終わらせて祝杯あげるぞ。早くしねーと名前にチューしちゃうぞー。」
「なっ!?」
「あああ危ない!!ちょ、ちょっと油断してた…!」


そんな獄寺をちゃかすようにシャマルが言ったが、キスするというのは本気だった。
隣にいた名前にたこのような口を向けるが間一髪でかわされた。


「ちっ…もー1回!」
「されてたまるかー!」
「あのエロオヤジ…!!」


そんなことでめげないシャマルはこんな場所でもいつものように名前を追い掛け回した。
名前もいつものように逃げてはたまにビンタで追い払う。
その様子を音声で理解した獄寺は心なしか歩く速度が上がっていた。


「……ったく、バカ面しやがって…天才が笑わすぜ。」


そして獄寺は倒れるベルのそばにしゃがみこみ、ベルが首にかけている嵐のリングを手にした。


「あ…隼人…!!」
「ん?」


それを見て名前が慌てて声をかけた。ちなみにシャマルは地面に伏している。


「あれ?えーと…ごめん、なんでもない…かも…?」
「はあ?何言ってんだお前…」
「あ゛…はあ゛…」
「!!」


「意味わかんねー」…と、獄寺が思った瞬間。気を失っていると思っていたベルがいきなり獄寺のリングを掴んだ。
と言ってもその力は僅かなもの……のはずなのだが、獄寺が殴っても決して獄寺の服を離そうとはしなかった。
体はとっくに限界のはずなのに……おそらく彼を動かしているのは勝利への本能なのだろう。


「間もなく約束の時間です。」


ドガガン


どうやらここで15分が経過したらしく、奥から1つずつハリケーンタービンが爆破され始めた。
チェルベッロによると、爆破が図書室に届くにはおよそ1分後とのこと。
それまでに何とかしなければ…勝者なしということになってしまう。


「そ……っそんな〜!このままじゃ獄寺君が!」
「敵もろとも死んじまうぞ。」
「何をしているタコヘッド!急がんか!」
「隼人…」
「るせー!やってんだよ!!」


お互い立ち上がる力は残っていなく、床に倒れながらリングを奪い合う2人。


「いかん…出血とともに体力が落ちてる…。」
「隼人…もういいよ!やめて!このままじゃ2人とも死んじゃう!!」


耐え切れずに名前が叫んだ。


「やむをえんな。リングを敵にわたして引き上げろ隼人!!」


名前に続いてシャマルが言った。


「ふざけんな!オレが負けてみろ!1勝3敗じゃもう後がねぇ!!致命的敗北なんだ!!」


しかしここまできてそんなことを素直にきく獄寺ではない。
確かに獄寺の言うとおり、ここで負けたらあとの戦いが苦しくなることは必須だ。


「おまえの相手はいかれちまってんだ!もはや勝負になっちゃいねぇ!戻るんだ!!」
「早くしないと…!」
「手ぶらで戻れるかよ!!これで戻ったら10代目の右腕の名がすたるんだよ!!」


そうしている間に爆発音がどんどん図書室に近づいてきていた。残り20秒。


「隼人!!修行に入る前に教えたことを忘れたのか!!」


獄寺が修行に入る前、シャマルに教えてもらったこと………自分の命の重さだ。
確かにあの時理解したし、忘れてもいない。だが……


「ここは死んでも引き下がれねぇ!!」
「ふざけるな!!」


今叫んだのはシャマルではない………ツナだ。
ツナが獄寺にこうも怒鳴るのは初めてだった。


「何のために戦ってると思ってるんだよ!!」
「!!」
「またみんなで雪合戦するんだ!!花火見るんだ!!だから戦うんだ!!だから強くなるんだ!!」
「綱吉さん…」
「またみんなで笑いたいのに、君が死んだら意味がないじゃないか!!!」
「…………10代目…」


ドガガァンッ


ツナが言い終えて数秒後、ついに図書室のハリケーンタービンが爆破された。それと同時に観覧席のモニターは映らなくなる。


「獄寺君!」
「隼人!!」
「…………あのバカ…」
「そ…そんな…うそ…」


シャマルが悔しそうに下唇をかんで、山本やバジルは俯いて、ツナと名前は涙をためて廊下に座り込んだ。


「隼人ぉ…」
「…あそこみろ。」
「?」


みんなが悲しみの表情を表に出すなか、リボーンはニコっと笑って煙の中を見つめていた。
するとそこからは重症ながらも獄寺が自分の力で歩いてくるではないか。気付けば赤外線センサーは解除されていた。
獄寺はある程度近くにきたところで力尽きたのかうつ伏せに倒れて、名前たちはそれに駆け寄った。


「すいません…10代目……リングとられるってのに、花火見たさに戻って来ちまいました…。」


最後の最後で、獄寺は1番大きな成長を遂げた。
リングはとられてしまったが、この結果に後悔をする者は誰一人としていなかった。







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