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「6分経過。」
「おりゃあ!!!」
「……」
日本のとある山奥にて。ツナはバジルとリボーンと修行をしていて、名前はその様子を体育座りで見ていた。
「…いつまでそこにいるつもりだ?」
「だって…」
私にだけ家庭教師つけてくれないんだもん!!
あれからいろいろあたったけど誰1人として私の家庭教師になってくれないんだもん!!
シャマルは隼人の家庭教師みたいだし、家光さんはそんな暇ないだろうし……
あああ綱吉さんを始めとして、みんなはこんなに頑張ってるっていうのに私だけ何もしてないって…!
「名前は技術的にはもう十分だ。」
「十分じゃないよ…全然…」
そうやって誉められても全然嬉しくはない。余計に不安になっちゃうよ…。
「もっと精神的に落ち着いたらどーだ?」
「え…?」
それはつまり私は精神面が弱いと…?ま、まあ確かに…、否定はできないけど……うーんでもどうすればいいんだろう…。
「ほーお。死ぬ気の中にも強弱がついてきたな。」
「家光さん!」
い、いつの間に…!さすがです!
「どーした名前?悩み事なら相談のるぞ。」
「う…ありがとうございます…!」
「おいリボーン、あんまうちの娘をいじめんなよ〜。」
「いじめてねーぞ。アドバイスしてやってんだ。」
「家光さん私いじめられてません!」
確かにリボーンはたまに酷いこと言ったりするけど、それは私のためを思っての言動であって…!リボーンが優しいことぐらいずーっと前から知ってるもん。
ゴッ
「あっ…」
バジルくんのパンチが綱吉さんの頬にモロに入って…あ、あれは痛そうだ…!私は無意識に立ち上がっていた。
「!?」
「うお゛お゛お゛!!」
「!!」
駆けつけようと思ったけど綱吉さんはまだ倒れていなかった。
足でバジルくんの腰を捕まえて、そこから思いっきり頭突き……す、すごいです綱吉さん!!
それから倒れたまま、2人とも動かない。気絶しちゃったのかな…でも大丈夫だよね。
2人とも朝からずっとこんな調子だったんだから…。少しは休まないと。
「ま、これで第二段階は完了だぞ。」
綱吉さんはもう修行の半分の段階を終えているっていうのに……私は何をしてるんだー!
「よし…じゃー名前!行くぞ!」
「はい!…ってあの、どこへでしょうか!?」
「うちだ!」
「へ…うち、ですか…?」
「ああ。ついてこい。」
「もう本当に山本くんちのお寿司はおいしくて…」
「…名前。」
他愛もない話を(名前が)しながら並盛の住宅街を歩いていると、ふいに家光が思い口調で名前の名前を呼んだ。
「…はい。」
名前もその雰囲気を察知したのか、さっきとは違った真剣な面持ちで返事をして家光の次の言葉を待つ。
「名前は何のために戦う?」
「え…?」
思ってもみなかった家光の言葉に、名前はうまく反応できなかった。返事に困る名前に構わず、家光は続ける。
「お前が戦いを嫌うのはよく知ってる。だが今回はきっと戦いは避けられない。…できるか?」
「!」
それを聞いて名前は押し黙ってしまった。
家光の言うとおり、名前はマフィアであるにも関わらず戦いを避ける傾向にある。それも、フゥ太のランキングでぶっちぎりの1位をとる程だ。
しかし守護者に選ばれた以上、今回のヴァリアー戦で戦わないなんてことは許されないだろう。
名前は少し目を伏せた。
「…きっとリボーンはこのことを言いたかったんだと思うぞ。」
「……」
つまり、リボーンが名前に言った「精神的に落ち着け」というのは、戦う覚悟を決めろということなのだろうか。
「…ま、滅入ることはない。自分がどんな環境にいて、どんな人に助けられてきたか…よく考えろ。」
「…はい…。」
明らかに思い悩み始めた名前の頭に、家光はポンと手を置いてニカッと笑いかけた。
それを見たらなんだか安心できて、名前も力なくにっこり笑った。
「ただいまー…」
「おっかえりー名前さん!!」
「おかえりなさい…。」
その後、家に寄ってけという家光の誘いを丁重に断って名前は自分の家に帰った。
さっき家光に言われたことを頭の中でぐるぐると考えながら玄関を開けると、帰りを迎えてくれる元気な声。
犬と千種だ。名前は不意打ちをくらったみたいな顔をした。
「名前さん今日いいともにおっぱっぴー出てた!!」
「犬、それどーでもいい…。」
1人興奮しながら今日のいいともの話をしだす犬に、面倒くさそうな千種。
いつもと何ら変わりのない2人だが、名前は改めて2人の存在を新鮮に感じた。
「……ね、買い物行こうか!」
「行く!!」
「トイレットペーパー切れそうでした。」
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