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62


イタリアの山奥に一際立派にそびえたつ屋敷……ここはヴァリアーのアジト。


「ん゛〜〜…」


他の隊員は朝食も食べ終わって活動しているというのに、最近入隊してきた若い男は未だに布団の中で寝返りを打っていた。


「あ゛ーー……」
「ウフ、やぁーっと起きたわね、おねぼーさんv」
「……」


11時30分。いい加減起きる気になったのか、男がゆっくり体を起こそうとすると隣から人の声。
口調から女性に思われるが列記とした男である。彼の名前はルッスーリア。ヴァリアーの一員だ。
頬を赤らめて男の鼻をつん、とつついた。


「ぎゃぁぁああぁああ!!!」















「もうほんっとお願いだから布団の中入ってくんのやめてもらえませんかね。」
「あら、わざわざ起こしに来てあげてるのにその言い方はあんまりじゃなぁい?」
「わざわざ布団に入る必要はないと思いますが。」
「だって絆さんの筋肉素敵なんだものv」


男は赤面するルッスーリアに絆と呼ばれた。
絆は隊服に袖を通しながら速足に廊下を歩きながら、ルッスーリアはそのあとを追いながらそんなことを話していた。


「しし、また寝込み襲われてやんの。」
「まったく懲りないよね、どっちも。」


その様子を面白そうに見るベルとマーモン。
こういった事件は頻繁に起きるらしい。そのためどんな絆の叫び声が聞こえても、大して驚く人はいない。


「おいコラボス!テメー部下にどーいう教育してんだよ!?」
「ム!貴様!ボスに対してなんていう口を…!」


隊服のボタンを閉め終わったと同時に、絆はヴァリアーのボスであるザンザスの部屋の扉を荒々しく開けた。
入隊して1年もたたない隊員がボスに対して相当馴れ馴れしい口調だ。
レヴィが怒っているのに、当のボスはの暴言なんて全然気にしてない様子で「知るか」と一言だけ答えた。


「だいたいお前は態度がデカすぎるぞ!この前だって…」
「あーハイハイ以後気をつけますよレヴィ先輩。」
「!!(先輩…!)」


適当にあしらっただけなのだが、レヴィは「先輩」という響きに感動していた。


「そうそう、もうすぐスクアーロが帰ってくるみたいよ。向こうのハーフボンゴレリングを手に入れたんですって。」
「……」
「そうか!これでボンゴレの正統後継者はボスだ。」
「…俺出迎えてやろーっと。」


ルッスーリアの報告にザンザスは少し眉を動かしただけで、レヴィは自分のことのように喜んで、絆は意味深に笑った。


「絆さんご飯はぁー?」
「スクアーロと一緒にキャビア食べる。」


そんな冗談(本気かもしれないが)を言いながら絆は軽い足取りで部屋を出ていった。
その後姿を見つめて惚れ惚れとするルッスーリアを本気で気持ち悪がるレヴィだが、自分も他人のことは言えないと思う。













「おかえりスクアーローーー。」


ドォン


「う゛ぉ゛おいいきなり撃ってくるやつがいるかぁ!?」
「ここにいる。」


絆がアジトの門のところまで行くと、丁度ボンゴレリングを手に持ったスクアーロと対峙した。
スクアーロの姿を見つけるなり何のためらいもなく腰の銃でスクアーロの足元を撃つ。
もちろんスクアーロはそれを避けるが、避けなければ普通に足に穴が開いていたところだ。
絆はこんなの軽い挨拶程度にしか思っていない。


「それがボンゴレリング?」
「そうだぜぇ!オレに感謝するんだなぁ…ってう゛ぉ゛ぉおい!!」


得意気なスクアーロを綺麗に無視して、絆はいつの間にかスクアーロの手にあったボックスを奪い取って中身をまじまじと見ていた。


「……はっ。」
「何だその嘲笑はぁ!?」


そしてスクアーロの方をチラリと見ながらの嘲笑。


「うん、よくやったよお前。じゃーオレはありがたく風のリングもらっとくから。早くボスに頭撫でてもらいなさい。」
「レヴィの変態ヤローと一緒にすんなぁ!!」


誉めてもらっているはずなのに全く嬉しくない。まあこんな言われようじゃ当たり前だ。ていうか全く誉めていない。
絆は自分のリングだけもらうとスクアーロを置いてとっととアジトに戻ってしまった。
スクアーロがザンザスによってテーブルの角に顔面をぶつけられたのはそれから間もなくのことだ。






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