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57



ここは……、すごく、暗いところ……。
何も見えない。何も聞こえない。


「名前さん」


後ろを振り返ると、カプセル状の水槽のようなものが見えた。


「名前さん」


何かが…入ってる。あれは、人……?


「名前さん」


なんだろう、すごく、胸が苦しい――…












「!!」


何の前触れもなく、いきなり名前は目を覚ました。


「(何…だったんだろう、今の…)」


上半身を起こして、ぼーっとしながら今まで見ていた夢を思い出す。
たいていの夢は起きたら忘れるものだが、さっきの夢は寝起きの今でも鮮明に思い出せた。
あの場所に見覚えは全く無かった。だが、懐かしい感じがしたのだ。


「(……とりあえず、起きよう。)」


「んー」と大きく伸びをしてから、名前はベッドから降りてカーテンを開けた。
毎朝起きてすぐに朝日を浴びるのが日課らしい。が、今日はいつもより光が届かなかった。


「ってぇー!何すんらメガネー!」
「それ、こっちの台詞。何してるんだよ…。」


それもそのはず。今はもう12時。すっかりお昼時なのだ。太陽はほぼ真上にあるから、朝みたいに光が差し込んでくるわけがなかった。












「犬ちゃんちーくん、けんかはダメだよー。」
「げ、名前さん…」
「……」


2人とも早起きだなーって思ったら私が遅起きなだけだったようで…。
12時まで寝てるなんて…自分でもびっくりだ。今日呼び出しとか特に無くてよかった。
パジャマを着替えて2人の声がするリビングに行ってみると………え?


「こ、これはその…お腹空いて…」
「めんどいけど目玉焼きくらいなら作ってやるって言ったのに…」
「らって柿ピーの目玉焼き味うっすいんらもん!」


うん、そうか、なるほどね。それで犬ちゃんは冷蔵庫の中身を漁っている、と。


「犬ちゃん…」
「!(名前さんこえー!)」
「言うことあるよね?」
「う……ご、ごめんな、さい…」
「うん。」


しゅん、と(本当は無いんだけど)耳を垂らして謝る犬ちゃん。やっぱり犬ちゃんは素直でいい子だなぁ。ちゃんと謝れるんだもん。
犬ちゃんが思ってるより私怒ってないんだけどね…。12時まで寝てる私も悪いんだし。


「な、何もない…」
「……」


代わりに何か簡単に作ってあげようと冷蔵庫の中身を見たら………ろくなもの残ってない…!
今日の朝はお味噌汁とサバを焼こうと思ってたのに……これじゃあどう頑張っても無理だ。どんだけ食べたの犬ちゃん…!


「犬ちゃん…」
「(びくっ!)」
「罰として今日は家の掃除すること!わかった?」
「は、はい…。」


よし、素直。正直言ってから犬ちゃんに掃除できるかなーなんて失礼なこと考えたけどきっと大丈夫!ちーくんもいるしきっと!


「掃除機はそこにあるからね。私は買い物に行くから。」
「一緒に…」
「大丈夫!車で行くから!」
「!(車…)」


ちーくんが一緒に行くって言ってくれたけど、ちーくんには犬ちゃんがちゃんと掃除できるか見張ってもらうという任務があるんですよ!
それに、どんな形であろうと脱獄した2人が外を歩いたら…危険だもん。


「いってきます!」
「…はい。」
「いってらっさーい!」


なんだか、子供に見送られるパパな気分!












「(お肉屋さんは……2つめの曲がり角のとこ!)」


買い物に出た名前は、昔よく行った商店街を歩いていた。1年半ぶりにも関わらず、この商店街は名前の庭みたいなものだった。
どこにどのお店があって何を扱っているだとか、全てインプットされているらしい。
両手には既に2つの袋を持っていた。あとは犬要望の肉を買うだけだ。


「う゛お゛ぉおい!だからキャビア出せっつってんだろーが!おろされてーのかぁ!?」
「し、しかしうちにはそんな高価なもの…」
「…?」


変わらない商店街に少し感動しつつ歩いていると、すぐ目の前の魚屋で荒々しい声が聞こえてきた。
周りの人も何だ何だと魚屋を見る。野次馬精神旺盛な名前も通りがてらにチラっと覗いてみることにした。


「チィ…(何で俺がこんなこと…!)」
「……スクアーロ…?」
「あ゛ぁ!?」


するとそこにいたのはボンゴレ特殊暗殺部隊、ヴァリアーの一員であるスクアーロ。
名前は少しとまどいながら名前を呼んだ。確信があまり持てなかったらしいが、彼は紛れもなくスクアーロである。
スクアーロの鋭い眼光がこちらを見たが、それはすぐに小さく丸くなった。


「な…ッ名前かぁ…!?」
「やっぱり!スクアーロだ!」


スクアーロも名前を知っているみたいだ。
名前はスクアーロだということを確信すると、彼のすぐ隣まで小走りで寄った。


「すごーい、スクアーロの髪が伸びてる!しかもきれー!」
「…テメーも伸びたじゃねーか。」


髪が綺麗だと言われても別に嬉しくないのだが。
名前があまりにも目を輝かせて言うものだから反論ができなくて、スクアーロは名前の髪をクシャクシャに撫でた。
顔をそらすあたり、少し照れたのかもしれない。


「あ、それからキャビアならもっと向こうの魚屋さんで売ってるよ。」
「………おう。」


ちなみに、スクアーロがキャビアを求めていた理由は、ポーカーで負けた罰ゲームとしてザンザスから言い渡されたからだった。













「何でまたキャビアなんて探してたの?」
「……食いたくなった。」


名前に言えるわけねーだろーがよぉ。ポーカーの罰ゲームだなんて…。
つーか第一俺は負けてねぇ。2位だぞ2位!ビリはレヴィだったんだ。普通はあの変態が罰ゲームくらうはずだぞぉ…ザンザスのやつめぇ…。
食いたくなったって…、少し無理のある嘘だと思ったが名前は俺に「スクアーロがキャビア食うとか共食いじゃんおもしれー」なんてバカ王子みたいなことは絶対言わない。
会ったのは4年ぶりだがそれは自信を持って言える。


「あはは、変なの。」
「……」


…4年会わないうちに、こいつはよく笑うようになった。
あのいっつもビクついて跳ね馬のうしろに隠れてたガキがこんなになるとはなぁ…。


「…おまえ、まだ跳ね馬のとこにいんのかぁ?」
「んーん、違うよ。…私マフィアになったの。」
「!?」


一瞬耳を疑った。だって、あの名前がマフィアだぜぇ?考えられねーだろぉ…。


「どこのかは言わないよ!オメルタは守るんだから!」
「…聞かねぇよ。」


嘘じゃねーみてぇだな…。俺だってオメルタの心得くらいあるから聞きはしねーが。
跳ね馬のとこにいないということはキャバッローネではないっつーことだ。
だからといってキャバッローネと敵対してるところはありえねぇ。名前が進んで跳ね馬と敵同士になるようなことは絶対しねーだろぉ。
…だとすると跳ね馬のコネで入れるような同盟ファミリー…………ボンゴレ…っていうこともありえなくはない…かぁ。


「スクアーロ、元気そうで安心した。」
「!」


チッ……何見とれてんだ俺ぇ…!相手はあのチビ名前だぞぉ!?


「…じゃー俺は帰るぜぇ。」
「うん!気をつけてね!」
「テメーも気ぃつけて帰れよぉ…」
「ありがと!」


なんか調子狂う。






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