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54


「わあ……懐かしい!」


晴れ渡る空。轟々と響くジェット音。
名前は大きな旅行バッグを持って、イタリアにいた。


「名前!」
「あ、ディーノ!」


空港の入り口に出ると、黒い車のわきに見知った顔を見つけた。ディーノだ。
なんでここにいるのかなんて愚問。名前のお迎えに決まっている。助手席にはロマーリオ。


「荷物入れるぜ。」
「ありがとう!」


名前は大きなバッグをディーノに渡して、車の中にお邪魔した。


「家光さんは明日こっちに来るみたいだぜ。」
「そっか。久しぶりだなあ、家光さんに会うの。」


約1年ぶりのイタリアの風景を見ながら、名前は楽しそうに言った。


「…さて、どこに行く?」
「……じゃあ、買い物に付き合ってもらおうかな!」
「かしこまりました。」


少しおどけた風に言ってみる。これがディーノと名前の日常だ。













「わー、懐かしい!」
「ちょ、待てって名前!」
「遅いよディーノ。」
「名前がいろいろ買いすぎなんだよ。」
「えへ。」


一通り買い物をし終わった名前は、こっちにいたときに使っていた家に帰って来た。
一応アジトにも名前の部屋があるんだけどな。なんでも久しぶりに家に帰りたくなったんだと。
はしゃいでどんどん中に入ってしまう名前より数歩遅れてオレも中に入った。まったく、こっちは袋4つも持ってんだぞ。
オレの部下が1ヶ月に1回は掃除に来ていたから、そこまで汚くはなっていない。


「これどこに置けばいいんだ?」
「あ、テーブルの上置いてくれればいいよ!ありがとう。」


オレは両手にあった4つの袋を、名前の言うとおりテーブルの上におろした。
名前はというと…まずカーテンを開けて、それからお茶の用意をしだした。


「レモンティーでいい?」
「ああ。」


その間、オレは何をしていいのかわからなかったからとりあえずソファに座ってさっき道でもらった新聞を読むことにした。
お茶の準備をしてる名前に、新聞を読むオレ………これって、なんか夫婦みたいだな…。
って何考えてるんだオレ!?やっべ顔あちー!オレは名前に見られないように新聞で顔を隠した。それでも名前の様子が気になって、チラリと盗み見たりもするんだが。


「……」


名前は本当に強くなったと思う。ほんの数年前までは、オレが見てないとすぐに泣いちまうんじゃないかってくらいだったのに。
なんだか嬉しくもあり寂しくもあるわけだ。そう思うオレは傍から見ても名前の「お兄ちゃん」なんだろう。オレとしては「お兄ちゃん」は勘弁なんだけどな。


「はいどうぞ。」
「サ、サンキュー。」


そんなことを考えてたらテーブルの上にカップを置かれた。げ、結局見出し1つも読めてねぇ。まあいいけど。
オレは新聞をソファの上に置いてカップを手にとった。


「…足、もう大丈夫なのか?」
「うん、もう全然痛くないよ。」


紅茶を一口飲んでから聞いた。実は会ってからずっと聞きたかった。
骸たちとの戦いの最中に名前が左腕を使いそうになって、でも自分の太ももを撃ったことで誰一人殺さずに済んだってリボーンから聞いた。
オレの質問に対して名前は「大丈夫」と言って足をプラプラさせてみせた。
そのときに少しスカートがめくれて太ももにヤケドの跡が見えた。
いくら傷はふさがって歩けるようになったとしても、ヤケドの跡はなかなか消えないだろう。
オレはとたんに胸が苦しくなった。あのときオレが行っていれば、名前は苦しい思いをしなくて済んだかもしれないのに。


「ごめんな……駆けつけられなくて。」
「え…?そ、そんなディーノが謝ることは何も…」


ほらな。なんとなく返ってくる言葉はわかっていた。


「名前。」
「…ディーノ?」


オレは名前の名前を強く呼んで、名前のか細い体を抱きしめた。
こんなに小さくて細い体に、何で全部溜め込もうとするんだよ…。


「なあ、もっと…頼ってくれよ。おまえの力になりたいんだ。」
「!」


オレは無意識に名前の髪を撫でた。
名前は最初驚いたみたいだったけど、クスリと、笑うのが聞こえた。気づいたら名前はオレの服の端を握っていた。
や、やば…自分で抱きしめといてなんだが、こうなるとすごく恥ずかしくなってくる。


「ディーノはわかってないよ。」
「な…」
「私がお迎えに来てもらったり、荷物を持ってもらったり、何か奢ってもらったり……わがまま言うのはディーノだけなんだよ?」
「!」


いや、オレの言う「頼れ」っていうのはそういうことじゃなくてだな……なんてにっこり笑ってる名前に言えるはずもなくて。
でも「オレだけ」っていう部分に優越感を感じているオレもいる。我ながら単純だと呆れるが、嬉しいもんは嬉しい。
それってつまり、日本の雲雀恭弥っていうやつにはそういうことしない…ってわけだろ?


「頼りにしてるよ、お兄ちゃん!」
「……ハハ…そうか…、お兄ちゃん…ね。」
「?」


結局はそこ…なんだな。






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