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「お見舞いに参りました綱吉さん!」
「名前さん!?」
「! すっすすすいませんお着替え中に…あああ切腹しますごめんなさい!!」
「ちょ、待ってーーー!!」


久しぶりに、ツナの部屋で賑やかな声が聞こえた。














「綱吉さんすっかり元気になってたんですね!」


なんだかんだで切腹はしなかった(ツナが必死で止めた)名前は、ツナが着替え終わってから部屋に上がらせてもらった。


「オレはただの筋肉痛ですから…。ていうかオレ今から山本たちのお見舞いに行こうと思ってたんです。」
「あ、私もこの後行こうと思ってました!」
「じゃあ一緒に行きましょうよ。」
「ありがとうございます!」


さっき着替えていたのは出かけるためだったのだ。


「あ、綱吉さんのお見舞い品、一応もらってください。」
「あ、ありがとうございます。」


名前は袋の中からラッピング袋を取り出して、ツナに渡した。みんなのお見舞い品としてクッキーを作ってきたらしい。













「だっだだだ、大丈夫ーーー!?えーとばんそうこう…救急車…!!」
「名前さん落ち着いてーーー!」
「いきなりうぜーー!!」
「ハハ、名前さんおもしれー。」
「久しぶりね、名前。」


お見舞いに来たはいいが、3人の思った以上の重症っぷりに名前はパニックに陥った。
絆創膏でなんとかなる怪我でもないし、ここが病院だ。


「だ、だってこんな重症だなんて聞いてないんですよ!?あああ痛々しい…!」
「見た目だけよ。もうすぐ退院できるのよ。」
「ビアンキ目、どうしたの!?ゴーグルつけてないといけない何かが…!!」
「それつけてねーと獄寺のハラの調子が悪くなるんだって。おもしれーよなー。」
「全然面白くないわ山本武。だいたいこんなものなくても隼人は大丈夫よ!」
「ぎゃーーー取るんじゃねぇーー!!」
「獄寺くんーー!?」
「看護婦さん隼人が発作をーー!!」
「発作違うーー!!」


途端に騒がしくなる病室。
一応ここは病院なのだが………あまりに煩すぎて、明らかに他の病室より浮いていた。


「でも、みんな生きてるね。よかったあ…!」


そうやって笑った名前の目尻は少し赤くなっていた。


「バカヤロー。こんなとこで死んでたら10代目の右腕なんてつとまらねーぜ。」


照れ隠しで獄寺が言った。


「…えへへ。そうだよね!私も早く綱吉さんの腎臓にふさわしくならないと!」
「(いつまで腎臓言ってる気なんだ名前さん…)」
「(意味わかんねーコイツ…)」


それを名前がおかしな方にもっていった。


「それより名前さんも無事みたいっスね。」
「あ、うん。私は太もも…撃った、だけだし。もうしっかり歩けるよ!」
「……」


名前は笑って言ったが、途中で少し表情が曇るのをツナは見逃さなかった。
その雰囲気は獄寺たちにも伝わったようで、少しなんともいえない空気が走った。


「……あ、そうだ!これみんなにお見舞い。クッキーつくったの!」
「おっ、サンキュー!」
「お、おう…」
「ありがと。嬉しいわ。」


その空気を変えようと、名前が袋から綺麗にラッピングされた袋を3人それぞれに渡した。


「あ、綱吉さん、雲雀の病室わかりますか?」
「ま、まさか雲雀さんにも!?」
「? はい。」
「別にいーだろあのヤローは!」
「だめだよ。雲雀もひどいけがなんでしょ?」
「…204号室だと思います。」
「ありがとうございます!」


袋の中にはあともう1つ、クッキーが入っていた。雲雀にあげるのだと言う。
普通ならツナはやめといた方がいいと言うのだが、雲雀が名前に優しいことは知っていたから止めはしなかった。


「じゃあ行ってきますね!」
「はい。」


バタン、と、静かにドアが閉まった。
ツナはその後をしばらく見つめてから、3人に向けて口を開いた。


「リボーンに言われたんだけど……話す、ね。昨日何があったのか……それと、名前さんと骸たちの関係…。」
「「「!!」」」














ガチャ


名前はたいして迷わずに204号室…雲雀の病室を見つけて、静かに中に入った。雲雀はどうやら眠っているようだった。
足音をたてないように、ゆっくりとベッドのそばに行って、用意されてあったイスに腰をおろした。


「……」


頭や胸や手…そこらじゅうに施された包帯を見て、名前は胸を締め付けられた。
名前は自分でも気づかないくらい自然に雲雀の髪に触れていた。そして優しく撫でる。
心地いいのだろうか、いつもは木の葉が落ちる音でも起きるというあの雲雀が、全く起きる様子がない。


「…ごめん、ね。」


そう小さく呟くと、名前は雲雀の髪を撫でる手を持っている袋の中に入れ、中からクッキーを出してテーブルの上に置いた。
少しだけ雲雀の寝顔を見つめてから、名前はイスから立ち上がり獄寺たちの病室へと戻っていった。















「ただいま戻りましたー!」
「! は、早かったですね。」
「雲雀寝てたもので。」
「(雲雀さんって葉っぱの落ちる音でも目を覚ますんじゃ…!?)」


わずか数分で帰ってきた名前にツナは吃驚して、内心ドキドキだった。なにせ今まで名前のことをみんなに話していたのだから。
いくらリボーンに言われたからと言っても、やはり気が引けた。


「ちゃおっス。」
「!」
「リボーン!」
「おまえ…朝から見ないと思ったらどこに行ってたんだよ!?」


すると、いつの間に入ったのだろうか。花の飾りをつけたリボーンが花瓶の中にすっぽり入っていた。ツナによると朝から行方がわからなかったらしい。


「ちょっとな。それより名前。ヤツから手紙だ。」
「!」
「?」


リボーンはそう言って、名前に1枚のハガキを渡した。
リボーンの言う「ヤツ」が誰なのかツナたちはもちろん名前も最初わからなかったが、ハガキの裏を見てわかった。


「………リボーン…」
「…行ってこい。」


一通り読み終えた名前の目は少し潤んでいた。
展開についていけない3人は交互に名前とリボーンを見る。


「…っ、綱吉さん!」
「は、はい…?」
「2週間ほど、イタリアに行ってきます!」







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