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「もう、やだ……こわい……」


真っ赤な世界にポツンと1人、私だけ。
すぐ傍を通る追っ手にびくびくしながら、膝をかかえていた。


「おい…」
「!!」
「どーした嬢ちゃん。」


光が、見えた。


「綱吉、さん…」
「!!」


ツナが新アイテムの小言弾で超死ぬ気モードで、ビアンキと獄寺を助けたところだった。
さっきまで一言も喋らなかった名前が、立ち上がってツナの名前を呼んだ。
その目の焦点ははっきりしていて、いつもの名前だと思えたが、どこか不安定に感じる。


「名前「骸くん!!」
「…え?」


ツナが声をかけようとしたところ、名前はそれを遮って頭から血を流す骸に駆け寄っていった。
ツナは一瞬状況が飲み込めなくて、呆然とした。
今までに名前がツナの言葉を遮って、ツナよりも何かを優先することなんて初めてだったのだ。


「何で…こんな…っ…」


名前は骸の頬に手を添えて、泣き崩れた。


「名前。」
「!」
「答えろ。骸とどういう関係なんだ?」


骸と知り合いだなんて、ツナはもちろんリボーンも知らなかった。リボーンは名前に銃口を向けて言った。


「うっ…」


すると急に名前は頭を押さえて、苦しみだした。
リボーンは思わず1歩飛びのいて名前の様子を伺う。


「……」


少ししてから、名前の動きが止まった。


「クフフ…」
「骸…!名前にまで…」


そして、名前の口からはもはや聞きなれてしまった怪しい笑い方。骸が名前に憑依したのだった。


「名前さんは…僕たちの恩人ですよ。」
「……」
「……」


名前の代わりに、骸がリボーンの質問に答えた。…と言っても、それはあまり的を射た答えではなかったが。


「クフフ…。ボンゴレ、名前さんの左腕の秘密を知っていますか?」
「…?」
「…知らないようですね。」
「何をするつもりだ。」


名前の体の骸は立ち上がって、スカートの中に隠してあった黒い銃を左手で持った。
ツナには骸の言ってることがわかんなくて疑問符を浮かべたが、リボーンにはその意味がわかったようだ。骸を警戒して見ている。


「そうですねぇ……ボンゴレを殺しては意味がないので…これで先生でも撃ちましょうか。」
「!?」


骸は笑いながら銃口をリボーンに向けた。もちろん、左腕で。


「クフフ……先生ならこの意味がわかりますね?」
「……」
「?」
「名前さんの左腕からは逃げられませんよ…。」
「…名前に殺しをさせるつもりか。」
「……名前さんに今の記憶は残りません。」
「…?」


さっきから2人の言っていることが全然理解できないツナ。


「名前さんの左腕で銃を撃てば、必ず相手を殺せる……本人の意思とは関係なしにね。」
「!!」
「……」


骸の言葉にツナは驚きを隠せなかった。そんなこと全然知らなかった。
でも確かに、名前が使うのはいつも白い方の銃で、黒い方の銃を左手で使うのは1度も見たことがなかった。


「名前さんの左腕にかかれば…どんな強者も生きる術を失くす…」
「や、やめろ!!」


ドンッ


ホール内に銃声が響いた。


「ッ!?」


しかし、リボーンは無事だ。何の外傷も見当たらない。


ドサ


「名前!?」


倒れたのは名前の方だった。
見ると、名前の右手が左腕を押さえて、太ももからは血が流れていた。
おそらくわずかに残っていた名前の精神で、骸が撃つ瞬間に銃口を自分の太ももに押し付けたんだろう。
これならいくら禁弾の効力だといっても、急所に当たることはない。


「クフフ……流石、名前さんだ…」


骸がそう呟くと、名前の中から骸の気配が消えた。
それを確認してからツナとリボーンが名前に駆け寄る。


「名前!」
「命に別状はないはずだぞ。」
「綱吉さ…」
「大丈夫か!?」


名前が再び目を開けた。今度は確かに名前だ。名前は目を細めて、弱弱しい声でツナに言った。


「綱吉さん……、お願いをして、いいですか…?」
「…ああ。」
「……骸くんを…、助けてください…!」
「……」
「骸くんは……知らないだけなんです…っ…」
「……」


そう告げて、名前は静かに目を閉じてしまった。
ツナは名前の手を優しく、でもしっかりと握って静かに言った。


「出てこい骸。」
「クフフ…」


暗闇の中から、声が聞こえた。







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