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50



数分後、私の周りは真っ赤に染まっていた。
私は自分でも驚くほどに落ち着いて、床にはいつくばって苦しそうにうごめく人たちを見て思った。
これでよかったんだ、って。    













「!!」


私は犬ちゃんの実験装置を取り外してから、血の海の1人立つ骸くんに気づいた。
骸くんの手には槍のような武器。周りにはピクリとも動かなくなった大人たち。
目が合った骸くんは私に笑いかけてくれた。でも私はどう反応していいのかわからずに、ただその光景を見つめていた。


「く…そ…」
「! ローサ…ッ」
「!!」


ドォン


そしたら足元の男が銃を持ってることにも気づかなくて、左腕…利き腕を撃たれてしまった。
犬ちゃんの声がなかったら、きっと心臓に当たってた。でも左腕くらいだったら大丈夫…


「つっ…!?」


そう思った矢先、左腕から激痛が走って、私は立ってもいられなくなった。
左腕が燃えるように熱くて、何かが自分の中を駆け巡ってる気分だった。


「死ね…!」


今度ははっきり男が銃を向けてくるのがわかって、それからその人に向かって槍を構える骸くんも、見えた。


ドォン


「……」


私は咄嗟に男の手を蹴って、銃は誰にも当たることなく暴発した。それと同時に右手で骸くんが男に向けた槍を掴んだ。
私の血がポタポタと床に落ちたけど、そんなことはどうでもよかったの。


「骸くんは…、こんなことしちゃ、だめ…。」
「!」


骸くんたちには武器も何も必要ない、普通の世界で生きてほしかった。


「ローサ!」
「大丈夫!?」
「う、ん…大丈夫。」


気づけばこの実験室に立ってるのは私と骸くん、それから犬ちゃんとちーくんの4人だけになっていた。


「みんなは、早く逃げて…。」
「でも…!」
「貴方はどうするんですか?」
「…私には、まだ……やることがあるから。」
「やること、というのは?」
「……ここの研究資料を取りに行くの。」
「……」


私は苦笑して本当のことを言った。ここでうそをついても、何にもならないもの。
骸くんは眉をひそめて私を見た。そりゃあそうだよね。こんなところの研究資料、世の中に出回っていいはずがない。


「確かに私は任務で研究資料を取りに行くけど……ボスが悪用するってわかったら、私の手で処分する。」
「……信じられません。」


どうしたら骸くんは信じてくれるだろうかと考えて、私はポケットから1枚の紙とボールペンを出した。
そこに、私が所属するファミリーの名前、本名、血液型、それから銀行の口座番号を箇条書きして、骸くんに渡した。


「もしこの研究資料が世に出回ることがあれば、それを好きなようにしていいよ。」
「!」


そうすると、骸くんは驚いていた。いつもはあまり表情を変えないのに。なんだか新鮮だった。


「お金に困ったらその口座使って。」
「……何故そこまでするんですか?」
「………幸せに、なってほしいからよ。」


ここを出たあとは、楽しく普通の人生を歩んでほしい。私のようにはならないでほしい。


バキッ


「「「「!」」」」
「これは…!」


すると鍵のかかった扉が荒々しく開かれて、騒ぎを聞きつけた残りの研究員が銃を片手に入ってきた。
だいぶ痛みが和らいできた私は咄嗟に左手で銃を抜いて、入ってきた5人のお腹をそれぞれ狙った。


「ぐぁあ!!」


はず、なのに。
5つの弾は全て、それぞれの心臓や頭……急所に当たっていた。男たちは数秒もがいたあと、動かなくなっていく。


「なん…で…」


銃の腕には自信があった。今まで一発も狙いをはずしたことはなかった。
確かに私は殺さないようにお腹を狙ったのに……もう、人を殺したくないって、思ってたのに……


「ローサ!早く!」
「……う、ん…」


警報音が鳴り響く中、私は犬ちゃんに引かれて実験室を出た。















「よくやった、名前。」


あれからなんとか研究資料を持ち出して、追っ手からも無事逃げ切ることができた。
中間地のホテルで1泊してから、アジトに帰って早速ボスに任務の報告をしに行った。


「それがエストラーネオの研究資料か。見せなさい。」
「……ボス、これを渡す前に1つ聞きたいことがあります。」
「…何だ?」
「ボスはこの資料をもって、何をするつもりですか?」
「………何故そんなことを聞く必要がある。」
「教えてくれなければ、これを渡すことはできません。」


約束したから。骸くんと。私はぎゅっと資料を持つ手に力を入れた。


「…前々からエストラーネオの研究には興味があってね…。」
「!」
「だから君には感謝してるよ。まさか研究室を破壊してくれるとは。」
「……」
「これがあればどんなファミリーも怖くない。」


最後の言葉を聞いて、私は覚悟した。
………ボスに銃を向けた。


「…自分が何をしているかわかってるのか。」
「はい。」
「そんなことをしたら、どうなるのかわかってるのか。」
「…はい。」


骸くん、私、ちゃんと約束守るからね。








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