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14:完治


「あ!そういえば医者…!」


ビアンキの暴走がひと段落し、気絶した獄寺を船へ運ぶ途中で名前は重要なことを思い出した。
この街でのそもそもの目的……医者だ。


「そういえば獄寺が見つけてたな。」
「あの人大丈夫かな!?倒れてたけど…」
「アイツはあのくらいで死ぬタマじゃねーぞ。」
「ほ、ほんと?」


ビアンキのポイズン・クッキングについて聞いてから心配していたが、リボーンが言うのならおそらく大丈夫なんだろう。
名前はほっと息をついた。


「でもアイツ、この街で貴族の女に手ェ出してお尋ね者なんだ。早くしねーと島から出ちまうかもな。」
「だから追われてたの!?」


なるほど。これで医者なのに手配されていた理由がわかった。
お尋ね者になってしまったのは自業自得として、病気は治してもらわないと困る。
名前は獄寺を船に置いたらすぐに捜しに出かけようと決めた。


「ただいまー…」
「ははっ、おっさんおもしれーな!」
「なーに、こんなのまだ序の口だぜ。」
「何してるのー!?」


船に到着すると、甲板で談笑する山本と医者がいた。


「お、さっきのカワイコちゃんじゃねーか!」
「あれ、知り合いか?」
「な、何でここにいるんですか!?」
「今次の島まで乗せてくれって頼んでたところだ。」
「この人悪い人に追われてるらしいんだ。次の島まで乗せてってやろーぜ。」
「武騙されてるよ!」


確かに追われてはいるが悪いのは自分である。


「おいシャマル、名前の病気を治してやってくれ。」
「名前ちゃんっていうのか。キュートな名前だ。」


いろいろ突っ込みたいことはあるが、まあ探す手間が省けたのはありがたい。これでようやく病気を治してもらえる。


「んーどれどれ…」
「なっ…ひいいいい!!」
「げふっ」


医者は患者である名前に近づくと、まず胸を触った。真正面から、堂々と。
名前は一瞬フリーズするも、初めて他人に胸を触られる感覚に鳥肌がたち、反射的に目の前の男に平手打ちをくらわせていた。


「ちっこい割にはなかなかだな。将来有望だ。」
「へ、変態だこの人…!」


平手打ちをくらっても医者に反省の色は見えない。この調子じゃあお尋ね者になるのも納得だ。


「変なことしないで、早く病気を治してください!」
「治療ならもう終わったぜ。」
「へ?」


いったい今の行為のどこに治療の要素があったのだろうか。
注射を打たれたわけでも薬を貰ったわけでもない。ただ胸を触られただけだ。


「10代目の悲鳴が…!大丈夫ですか!?」


名前の悲鳴を聞きつけて、脇で横になっていた獄寺が飛び起きた。どうやらお腹の不調は治ったようだ。


「テメーシャマル!10代目に変なことしてねーだろーな!?」
「あーうるせーのが来やがった。なんだ、この子隼人の彼女か?」
「ちっ、ちちちちげーよ!」
「あれ……2人は知り合い…?」


獄寺は医者の名前を呼び、医者もまた獄寺を名前で呼んでいることに違和感を感じた。
この2人も顔なじみのように思える。


「コイツ、昔おれの家の主治医だったんスよ。」
「そうだったの!?」


また新たな情報に驚かされる名前。


「それより名前、病気の調子はどうなんだ?」
「そういえば……」


先程、医者のシャマルは確かに「治療は終わった」と言った。
それを確かめるため名前は獄寺と山本の顔をじっと見つめた。


「じゅ、10代目……?」
「………」
「…本当だ!2人を見ても全然ドキドキしない!」
((ガーーーン!!))


病気にかかっていた時は2人の顔を見るだけで胸がドキドキしたのだが、今は全くそれがない。病気は完全に治ったようだ。
嬉しそうにする名前に対して獄寺と山本は微妙な心境だった。


「でも、どうやって…?」
「こいつは腕利きの医者だが裏の世界では"トライデント・シャマル"として名が通った殺し屋だ。」
「また殺し屋!?」
「おいおい、もう殺しはやってねーよ。」


結局のところシャマルも殺し屋経験があるらしい。どうしてこうもリボーンの知り合いは曲者揃いなのか…。


「お嬢ちゃんの病気を治したのはこいつだ。」
「……蚊?」


シャマルが指さしたところをよく見てみると、一匹の蚊が飛んでいた。


「シャマルは生まれつき菌やウイルスが付きやすい体質らしくてな。それぞれ対を成す666種類の病原菌を体内に持ってんだ。」
「何それ!?」
「"恋するオトメ病"と対になるのは"干物女子病"だ。こいつを媒体としてその病原菌を処方したってわけさ。」
「は、はあ…。ありがとうございます。」


なんだかよくわからないが、とりあえず治してくれたのは間違いない。名前は素直にお礼を言った。


「そんじゃ、そろそろ出発するか。」
「ちょっと待って、何か忘れてるような…」
「そういえばランボがいねーな。名前と一緒じゃなかったのか?」
「あああ!!」


何か忘れてると思ったら、ランボの存在だ。名前はランボと街へ一緒に行ったが、途中ではぐれてそのままだった。


「た、大変!私捜してくる!」
「この際置いてっちまいましょうよ。」
「ダメだよ!」
「…捜す必要はねェみてーだぞ。」
「名前さん!!」
「わっ!」
「チッ」


捜しに行くと立ち上がった名前にランボが抱きついた。
ぎゅっと名前の腰に腕を回してお腹に顔を埋めてくる。少し震えているし、泣いているようだった。


「テメー…10代目から離れやがれ!」
「ううう…」
「ランボどうしたの?」
「こ、怖い人に会いました…!」
「怖い人…?」
「ロ〜メ〜オ〜…!!」
「え……」
「うげっ、アネキ…!」


ランボが走ってきた先を見てみると怒りに我を忘れたビアンキの姿があった。そういえば彼女も「支度をしてくる」と言ったきりだった。
しかしこの2人まで、いったいどんな関係なのだろうか。


「ランボ、ビアンキと知り合いなの?」
「しっ、ししし知りませんあんな怖い人!」
「え?でも…」
「ロメオ……殺す……」
「えええ!?」
「…ロメオ……確か、アネキの恋人です。」
「え?じゃあ、ランボをその人と間違えてるってこと?でも殺すって…」
「そいつとは随分前に別れたらしいぞ。最悪の形でな。」
「ええ!?」


どうやらビアンキはランボを元恋人と間違えているようだ。
元恋人に対して殺気が満ちているのは別れ方があまりよくなかったからだろう。


「ビアンキ落ち着いて!この子はランボ!」
「名前、そいつを渡しなさい。」


名前が必死に説明するが、怒ったビアンキに何を言っても無駄なことは自分も追いかけられたため身をもって知っている。


「よ、よく見て!女の子だよ!」
「は…」
「……」


苦し紛れに名前はランボにカツラを被せてみせた。
ビアンキはカツラを被ったランボをじーっと見つめる。


「…ごめんなさい、人違いだったみたいね。」
(ご、誤魔化せたー…!)


苦しい言い訳だと思ったが、ビアンキには通じたみたいだ。


「これで全員揃ったな。」


新たにビアンキとシャマルを乗せて、名前達の船は次の島を目指して出航した。







■■
ロメオの誤解はこの後ちゃんと解けます。
シャマルは仲間になったわけではなくてちゃっかり乗ってるだけ。







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