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32



「武ーvv」
「獄寺く〜んvv」
「……」


名前は山本と獄寺の方を見てきょとんとしていた。
2人はたくさんの女の子に囲まれて、可愛くラッピングされた何かをもらっている。
それが朝から今現在の昼休みまでひっきりなしに続くものだから、名前は聞いてみた。


「隼人と山本くん、今日が誕生日なの?」
「は?」
「…ハハハ。」
「……」














「ジャッポーネのサン・バレンティーノは違うんだ………よいしょ。」


ツナたちから日本のバレンタインの習慣について学んだ名前は、午後の授業が始まるというのに大急ぎでスーパーに直行して(もちろん勝手に駐車してある愛車で)両手いっぱいの材料を買ってきた。
なんせイタリアのバレンタインは現在一般的に、「愛を確かめ合う日」となっている。
恋人同士や夫婦同士など、すでに決まった相手同士でプレゼントを交換する日なのだ。
だから名前は自分には関係ないと何も考えていなかったのだが……日本では違うとなると話は別。
そして名前が買い物から戻って真っ先に向かったのは……並盛中の調理室だった。テーブルの上に両手のスーパーの袋をおろして、中身を並べていく。
…察しの通り、非常識極まりないがここで作る気らしい。


「お菓子作るの久しぶりだなー!」


名前は袖を巻くってチョコレートを溶かし始めた。














チーン


「できた!」


およそ数時間後。オーブンの音が調理室に響いた。
うとうとしていた名前はその音に意識を戻され、オーブンを開ける。
するとそこからはほんのりとチョコレートの匂いがして、出てきたのはチョコレートのシフォンケーキだった。


「よかったー、形くずれてない!」
「何してるの。」


あとはこれを1人分の大きさに切ってラッピングするだけだ、と、名前が包丁をいれようとしたとき。調理室のドアが開かれて、最近かなり聞き覚えてきた声。


「ひ、雲雀…!」
「…チョコレート…?」


雲雀が入ってきた。
雲雀は入ってくるなりすぐに名前の手元のケーキを見つけて、状況を理解した。


「へえ…。よく知ってたね、日本のバレンタイン。」
「お昼休みに綱吉さんたちに教えてもらったの!丁度いいから雲雀には今渡しちゃうね。」
「!」


名前は嬉しそうに言って、丸いシフォンケーキを適度な大きさに切った。


「えーっとフォーク…」
「手でいいよ。」


名前は机の引き出しを開けてフォークを探したが、雲雀はそれを制して今切られたケーキを手にとって、間髪入れずに口に入れる。


「…どう?」
「………おいしい。」
「え!?よ、よかったー!」


まさか雲雀の口から「おいしい」なんて言葉が聞けるとは思っていなかった名前は少し驚いたが、素直に喜んだ。
当の雲雀もあまり甘いものは好きではないため、おいしいなんて言うつもりはなかったのだが、甘さも控えめで口の中でふんわり溶けるその味に、自然と口が動いてしまった。


「…他に誰に渡すの。」
「んー…まず綱吉さんで、それから隼人に山本くん、リボーンとディーノももちろん…あとハルちゃんと京子ちゃんと花ちゃんと…」
「もういいよ。」
「…とにかくいっぱい!ジャッポーネのサン・バレンティーノは楽しいね!」


聞かれると名前は嬉しそうに答えながら、残りのケーキにも包丁を入れていく。
雲雀はそれを面白くなさそうに見つめて、もう1つケーキを手にとって、口に入れた。


「あっちょ、何食べてんの雲雀!ばか!ってやめてーーー!!」
「……」


名前の声は徹底無視して、雲雀は次々とケーキを口に運んでいく。


「調理室を勝手に使った代金だよ。」
「だ、だってここ広いし設備いいし…」


そう言われると、やはり後ろめたい気持ちがあったらしくて、名前は口ごもった。


「だからってそんな食べなくていいのにー!みんなの分がなくなっちゃうでしょ!?」
「小さくすればいいでしょ。ごちそうさま。」
「ううう…!」


雲雀は5こめにしてやっと手を止めた。
残りはだいたい3分の2くらいだ。これじゃあ他の人に渡せない。
確かに小さく等分すればいいのだが…そうすると1人分がかなり小さくなってしまう。
もう1つ作るにも材料は1個分しか買ってないから足りないのだ。


「じゃあね。…ああ、今日は来なくていいよ。取り締まりで忙しいからね。」


雲雀はそれだけ言い残して、調理室を出て行った。
残された名前は雲雀が出て行った扉と3分の2となったケーキを交互に見て、


「雲雀のばか…!!」


小さく叫んだ。
結局ケーキは残りの大きさで等分して、1人1人に謝りながら配ったそうだ。








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