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「ちょっと雲雀…!?」
「……」
私が昨日買ったダージリンをいれてソファに腰を下ろしたところで、隣に座っていた雲雀がこっちにもたれかかってきて、
そのまま押し倒されているという状況なんですけどね、どうしたらいいのでしょうか?!
「雲雀でもかぜひくんだねー。」
押し倒された時は「またこのマセガキは」って思ったけど、触れた肌がすっごく熱かったから本当にびっくりした。
呼びかけても返事ないし、どうしようかと思ってたらちょうどよく草壁くんが入ってきてくれて、今病院にいるんだよね。
「…林檎剥いて。」
「はいはい。」
雲雀はさっき起きたばかりだからまだうまく脳が働いてないみたい。
花瓶の隣に置いてあるフルーツの入ったバスケットを早速見つけたな食いしん坊め!
草壁くんとここに来る途中で買ってきたんだ。ジャッポーネのお見舞いではりんご剥くのがセオリーらしいから。うさぎにしてあげようかな!
「でもよかった。大したことなくて。」
「……」
「調子悪いんだったら早く言ってよね。雲雀ってばポーカーフェイスだから全然わからない。」
「……」
…そろそろ返事がないことにも慣れてきたな。まあ今は病人だからしょうがないか。
「はい、りんご。」
「…ありがと…」
「!! ひ、雲雀本当に大丈夫!?つらいなら寝てた方が…」
「僕がお礼を言ったら変なわけ?」
だ、だってあのわがままの究極体である雲雀が!りんごをむいてもらったことに対してお礼を言ってるんだよ!?
いや、普通の人にしてみれば当たり前だけど、この人雲雀だから普通じゃないの残念!
雲雀は呆れたように私を見てから、お皿の上のうさぎりんごを手にとって口に運んだ。
病室にシャリっとみずみずしい果肉の音が響く。
「おいしい?」
「…美味しくなきゃ売ってないよ。」
あ、でもやっぱり基本はいつもの雲雀だ。確かにそうだけど、そこは素直に「おいしい」って言おうよ!
♪〜〜♪
「あ、ごめん。」
マナーモードにするの忘れてた。
ここで電話するのは失礼だから切ろうと思ったんだけど、かけてきたのはどうやらリボーンらしいから切るわけにはいかない。
「ここでいいよ。」
だから病室から出て、廊下で話そうと思ったんだけど……雲雀のお許しが出たので通話ボタンを押した。
本当に大丈夫かな、雲雀…。なんかすごく気持ち悪い違和感がある。
「チャオ。どうしたの?リボーン。」
『ちゃおっス。ツナが並盛中央病院に運ばれたぞ。』
「ええ!?綱吉さんが!?」
「……」
「いったい何で…」
『リンゴ剥きに行ってやれ。』
プツ
「……」
リボーン…話が簡潔すぎるよ…!もっと何で入院したのかとか、聞きたかったのに…!
でも並盛中央病院ってこの病院のことだから、すぐに行ける!
「行かせないよ。」
「……」
何でわかるの!?しかも行かせないとか言われても困るんだけど!
…なーんて、口に出してもむだなことは今までで充分学習したもんね!
「別にどこも行かないよ。もう1こ食べる?」
「……」
とりあえず今は我慢して持久戦だ。おなかいっぱいになれば眠くなるはずだよね!
「や、やっと寝た……」
雲雀が寝てくれたときには、リボーンの電話から20分経っていた。
多分寝たら私が行くことをよんでたんだろうな。寝ないように神経使ってたみたいだし。
でもまあ……そこらへんは私の話術で…ね!伊達にこの仕事ついてませんよ!
私は肩からずれた布団をかけなおしてあげてから、りんごを片手に雲雀の病室を出た。
綱吉さんの病室……聞いてないからフロントで聞かないと!
「あれ、ディーノ!」
「…お、名前!」
病室を出て廊下を少し進んだ突き当たりのところで、部下をひきつれたディーノと出くわした。
患者さんたちにこのスーツ姿のおじさま達の姿は刺激にならないのかしら。
「ツナなら今203だぜ。」
「ありがとう!」
さすがディーノ!よくわかってるよね!
203…っていうと2階だから、1階下に下がらないとだ。
そこでディーノとはお別れ。早く綱吉さんのところに行かないと!
「〜〜!」
「うわあああ」
この声は……イーピンちゃんにランボくんだ。
ドガァン
…そして10年バズーカの音…ってことは……
「ランボくん…?」
「若き名前さん!お久しぶりです。」
「久しぶり。」
煙の中からはやっぱり10年後のランボくんの姿。イーピンちゃんは無事だ。
「あ、名前さんです!」
「名前ちゃんもツナくんのお見舞い?」
「うん。203だよね?」
「はい…」
わー、今日はいろんな人に会うなあ!今度はハルちゃんと京子ちゃんだ。なんだか可愛らしい服を着ている。なんかのテレビで見たような格好だけど…思い出せないや。
「? ボンゴレ10代目がどうかしたんですか?」
「入院してるの。」
「それは大変だ。オレも一緒に行きます。」
「うん。じゃあ行こうか。」
ということで、ランボくんも同行することに。
ハルちゃんと京子ちゃんとはここでお別れ。っていうか、ハルちゃんの元気がないみたいだけど大丈夫かな…。…京子ちゃんがついてるから大丈夫だよね!
「綱吉さん!失礼します!」
「名前さん!…と、大人ランボ!」
「ちわー。」
綱吉さんの病室につくと、扉が開いてたから勝手ながら入らせてもらいました!
中には綱吉さんの他に山本くんと看護婦さんがいた。
様子を見る限り、足以外は問題なさそう。よかったー、たいしたことなくて。
「ごめんなさい綱吉さん!また守れませんでした…。」
「い、いや、これはただコケただけだし…」
それにしても本当にだめだな私…。最近何にもボンゴレファミリーとしての役目を果たしてないと思う。
あああいい加減せっぷくものだよー!それでもまだ傍においてくれる綱吉さんには感謝感激の涙ですよ…!
「今日はりんご1こしか剥けませんが………!!」
「…どうしたんですか?」
「果物ナイフ……忘れてしまいました…。」
「い、いいですよ!今日はお寿司を先に食べたいし…明日お願いします!」
「は、はい…!」
「はは、やっぱおもしれーな名前さん。」
もう、どんだけばかなんだ私ーー!!とことんだめだめだ…ううう。
「オレは10年後からいきなりきたので何も用意できなかったのですが…」
「いや、いいよ気をつかわなくて。」
「あ!そうだ、これをさしあげます。うちのファミリーで毎月優勝者にのみ配布される……トイレそうじがんばったで賞です。」
「(いらねーー!!!)」
「すごいねランボくん!トイレそうじがんばったんだ!」
「(ほめてるーー!!!)」
あのランボくんが賞をもらうくらいトイレそうじをがんばっていたなんて…なんか嬉しいなあ。いい子になってるのね!
「10代目ーー!!!!」
この声は隼人だ。そうそう、なんか足りないと思ってたら隼人がいなかったんだわ!隼人なら真っ先に綱吉さんのところに駆けつけると思ってたのに……
「大丈夫スか10代目〜〜!!!」
「君が大丈夫かーーー!!!?」
「隼人ーーー!!?」
ちょちょちょ、本当に隼人が大丈夫!?すごいボロボロだよ!血だらけだよ!っていうか血、吐いてるよ!?
「無事で…よかった…。ちょっとあわてたんで車に何度かひかれまして…。」
「なにそれーー!!?」
「あ…これ…みまい…っス。」
みまいと言って隼人が綱吉さんに渡したのは、バラの花束だった。最初は白だったらしいけど、隼人の血で見事に真っ赤になっている。こんなお見舞い品怖いよ!
「お医者さんに診てもらったほうがいいよ獄寺君…!!」
「平気っスよこれくらい。」
「平気じゃないよ隼人!体ガタガタしてるじゃない!早くドクターに…」
「うおお触んなー!!」
「ちょ…っ、隼人!し、失礼します綱吉さん!!」
どう見ても大丈夫じゃないのに!
私が隼人の腕をとったら、隼人はそれを振り払って病室から走って出て行ってしまった。
走れる体じゃないのに!私は急いで隼人のあとを追った。
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