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19


「何あのかっこ…」
「シマウマ?」
「パンダじゃない?」
「私は牛だと…」


自習でツナがわからないなりにも教科書を開いていると、クラスメイトの話し声が耳に入ってきた。
シマウマ?パンダ?牛?
ツナは最後の牛に少しだけ思い当たる節があり、皆の注目している方に目をやると……


「ツナ、チャックがこわれてしっこできない…」


そこには股間を押さえて泣き喚くランボの姿が。


「綱吉さんおはようございます!すみません実は今朝車の鍵が見当たらなくて…恥ずかしながら自分で握っていました!」
「(名前さん…中学生は普通車運転しませんよ…!!)」


さらに前の扉からは珍しく遅刻してきた名前がとんでもない事を言って入ってきた。これはダブルで恥ずかしい。














「よし!服が乾くまで何してようか?」


ランボの汚した廊下は名前とツナで綺麗にして、後のランボの面倒は名前がみることになった。
名前はまず自分の車から(勝手に職員駐車場に留めている)裁縫セットを持ち出してから洗面所でランボの服を洗い、屋上へ向かった。
それから濡れたランボの服を安全ピンでフェンスにとめて、名前は自分の制服の袖部分を大胆に切ってランボに簡単な服を作ってやった。
あとはランボの服が乾くのを待つのみ。今日の天気なら学校が終わるまでには乾くだろう。
名前はランボを膝に乗せて日陰に座った。


「…あ!じゃあ、ジャッポーネの伝統童話、“ももたろう”のお話してあげる!この前読んだんだ。」
「やったーランボさん聞くー!!」


名前の歳で桃太郎を読む機会があるのかどうかはいささか疑問だが、この際いいとしよう。


「昔々、あるところにおじいさんとおばあさんがいました。おじいさんは山へ竹を取りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。」


初っ端から間違えている。おじいさんは山へ芝刈りに行くはずだ。


「おじいさんが竹をとっていると、その竹の中に1本だけ光る竹がありました。おじいさんは不思議に思って竹を切ってみると、なんとその中には小さな男の子がいました!」


竹取物語で竹から出てくるのは可愛らしい女の子である。


「その頃おばあさんは川で洗濯をしていると、川上から大きな桃がどんぶりどんぶりと流れてきました。」


擬音が何か可笑しい。


「おばあさんはその桃を家に持ち帰って……ってあれ?1人で持っていけるのかな…」


ツッコミ所はもっと他にあるのだが。


「とにかく持って帰って、おじいさんと一緒に桃を真っ二つに切ってみると……」


おじいさんは竹から出てきた男の子をどうしたのだろうか。


「中からは……何だっけかな……女の子?いやでも桃を真っ二つに切ったらその女の子も真っ二つに……」


童話でそんなリアルな事は考えなくていいと思う。


「うーん…ごめん、やっぱわかんないや…っと、寝ちゃった。」


名前が一生懸命グダグダながらも話している中、ランボは既に夢の中だったようだ。
最初は胸の位置にあった頭がずれて膝の上にきている。


「……やっぱおかしいなあ。桃を切ったら普通に中の女の子も切れちゃうし、第一果肉はないのかな…」
「童話でいちいちそんなの気にしてたらキリないよ。」


ランボが寝ても尚悩む名前に上からもはや聞き慣れた声が聞こえてきた。
上を見上げようかと思ったらその人物は名前の隣に着地した。……雲雀恭弥である。


「な…ッいつから…?!」
「最初からだよ。」


どうやら彼は名前が来る前からずっとここで昼寝をしていたらしい。小さくあくびをして答えた。


「ちょちょちょ、最初からって……」
「……その子供なに?」
「この子は…近所の子?(で合ってるのかな。)」
「…ふーん。」


自分で聞いたわりには雲雀はどうでもよさそうに呟いて、名前の隣に腰を降ろした。
名前は反射的に構えるが、ランボが膝の上にいるので身動きはとれない。


「…そんなに警戒しなくていいよ。」
「………」


雲雀はそう言うが、名前にその言葉が信じられるわけがなかった。
なんせ以前2回も不意をつかれてキスされたのだ。油断はできない。


「1つだけ質問に答えてくれる。」
「……内容によっては。」
「貴方は…いったい何者?」
「…それはまた幅の広い質問ね。」


雲雀の質問に名前は空を仰ぎ見た。雲が少なくて、綺麗な青空だ。


「…じゃあ質問を変えるよ。この前の日曜日…僕に近づくなって言ったのは何故?」
「………」


何気無い質問に聞こえるが、名前にとっては見事に核心をつかれた質問だった。
名前は空に向けた視線を、膝の上で気持ち良さそうに眠るランボに移した。


「近づいてたら、君が危なかったからよ。」
「何で?」
「質問は1つだけなんでしょ?」
「……」


名前の最もな言い分に雲雀は押し黙った。
確かに名前は雲雀の質問に答えて、その答えにも偽りはないのだが、これでは詳しいことは何もわからない。


「…あのシャマルっていう保険医は知ってるんだね。」
「シャマルを脅そうっても……あ!このこと絶対綱吉さんには言わないでね!?」
「……ふーん、知られちゃまずいことなんだ。」
「…あッ!!」


またもや自ら墓穴を掘った名前。雲雀は不敵に口の端を上げた。


「あ、あのー雲雀くん…」
「ねえ、教えてよ。」


顔を近付けられて、名前は後ずさりしようと手をつくが後ろにはすぐ壁がある。更に膝の上にはランボ。
……逃げ場がない。しかしだからといって雲雀の質問に答えられるわけもない。


「…無理!それだけは絶対無理!別のことにしてお願い!」
「………じゃあ…」


名前が必死にそう言うと、雲雀は案外簡単にそれを聞き入れた。
更に雲雀の顔が近づいてきて、いつでも殴れるように右手をホルスターにかけた時。雲雀の口から意外な言葉が出てきた。


「14日。」
「…?」
「今月の14日、空けといて。」
「…はい?」
「いいね。」


それだけ言うと雲雀は立ち上がって、屋上をあとにした。


「10月14日………って、綱吉さんの誕生日!!」


……であると同時に、名前の誕生日でもあった。








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