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18



「ああ…なんでこんなことに…」
「元気を出してください綱吉さん!お皿洗いって結構楽しいですよ!」


ある日曜日。ツナと名前は山本宅、“竹寿司”にて、並んで皿洗いをしていた。


「あのチビ達ネタを見る目があるってオヤジが褒めてたぞ。」
「あはは!」
「は…は…(笑えねー。)」


何故今この状態になっているのかというと、小1時間程前に遡る。
ツナはリボーンに最近頑張っているご褒美だとここに連れてこられ、ツナもリボーン達も存分に寿司を食べたところでリボーンとビアンキとランボが逃走。
1人残されたツナは必然的に勘定を支払わなくてはならなくて、もちろんそんなお金は持っていなくて。
そこで、体で払うということになってここでしばらく働くことになったのだ。


「それより本当ゴメン…山本と名前さんまでまきこんで…」
「いいってことよ。どーせうちの手伝いなんだから。」
「いいってことですよ。こういうのやってみたかったんです!」


山本と名前が手伝ってくれるのがせめてもの救いだった。
1人で7万円分も働くとなると、何日通うことになるかわかったもんじゃない。


「おめーらばっかにいいかっこはさせねーぜ。オレも手伝います!」
「獄寺君!!」


そこに、暖簾をくぐって中に入って来たのは獄寺だった。


「リボーンさんに聞きましたよ。山本んちのアコギな商売にだまされたって。」
「ちっ、ちがうって!」
「人聞きのわりーこと言うんじゃねー!」
「騙したのはリボーンの方なのよ!」


獄寺がリボーンから聞いた情報はやや…というかかなり違っているようだ。むしろ真逆だ。


「とにかく10代目、洗うのはオレにまかせてください。」
「獄寺君…」
「……あれ、隼人洗い物なんてしたこと…」


獄寺は入ってくるなりツナと名前の立っていた流しの前を陣取り、やる気満々に袖を捲くった。
そして勢いよく泡と皿の中に腕を突っ込んだところ。


バリーーン


「ん?」
「なあ!!?」
「やっぱり…。」


1つの湯飲みが勢いよく飛び出て、豪快な音をたてて床に落ち、粉々になった。


「は…ははは、ちょっと手がすべりました。」


いや、今のは手がすべったすべらないの問題ではない。


「隼人力入れすぎなんだよ。もっと力を抜いて…」
「うぉわっ、ささ、触んな!」


ガチャーンッ


「何やってんのーーー!!」


不器用な獄寺のために名前が指導してやろうと獄寺の手を掴むと、いきなりのことで驚いたのか獄寺はその手をあからさまに振り払った。
そのついでに1枚の皿が飛んで、これもさっきの湯飲みと同様、跡形もなく粉々に散らばった。


「もう、せっかく教えてあげようと思ったのに…」
「いきなり触んじゃねーよ!」
「だって隼人洗い物なんてしたことないんでしょ?」
「ええ?!」
「…はい。実はアネキがいつもいたので厨房に入ったことってなくて、こーゆー仕事は全くうといんです。」
「(先に言おーよ!!)」


道理で不器用なわけだ。
獄寺の家はかなりの豪邸というか城で、家事全般は使用人達がやってくれるし、厨房には姉のビアンキが出入りしていたため近付けなかったのだ。
だから獄寺はちゃんとした“洗い物”をしたことも見たこともない。だったら何故自分からやるなんて言い出したのだろうか。


「げっ。この皿はオヤジのお気に入りだ………多分3万で弁償だな…。」
「借金10万円になった!!」


もちろん壊された湯飲みと皿の代金もツナの借金に追加されていく。
このまま獄寺に皿洗いをさせていたら借金が増すだけなので、ツナは獄寺にじっとしているように懇願した。
少しショックだったようだが、それから獄寺は大人しく座っていることにしたようだ。













「あと少しだな。」
「うん。こっちはあと3枚だよ。」
「もうひと頑張りですね!」


それからまた時間がいくらか経って、作業も終盤に近づいていた。
ツナと名前の前の流しも残るお皿はあと3枚。これを洗ってしまえばとりあえず今日の分はおしまいだ。


「ファイトッス!!10代目!!っていうかもう後は名前に任せて一緒に寿司でもどうっスか?」
「え…」


ふと聞こえてきたのは、獄寺の声と「くちゃくちゃ」という何かやらわかくてみずみずしいものを噛む音。
もしかしてと思いながら後ろを振り返ってみると………


「つまみまくりーー!!」
「何やってんのー!?」


そこには机の上に乗っている立派なマグロを机の上に乗ってつまみまくっている獄寺とリボーンとランボの姿が。
普通に考えてこれはまずいだろう。そんな常識は彼らに通用しない。


「何てことしてくれやがったんだ…。あのマグロは今晩の100人前の出前用だぞ…。これじゃあ出前はムリだな。借金は20万円うわのせさせてもらうぜ。」
「んな゛ああぁこれもオレもちなの〜〜〜!!?」
「ちょっと隼人!いつからそんな子になっちゃったの!」
「うるせー!何で保護者口調なんだよ!!」
「そうよ名前。弟の責任は私がとるわ。」
「ビアンキ!!」
「アネキ!!」


更なる悲劇に更なる救世主として現れたのはビアンキだった。その隣の棚には元凶のリボーンが何くわぬ顔で座っている。
獄寺はビアンキを見る途端嫌な音を奏でる腹をおさえて走り去った。……結局手伝うどころか借金を増やしただけだった。


「まだあきらめるのは早いわ。残ったマグロで何かできないか考えましょ?」
「うん、そうだね。」
「ポイズンクッキングはダメだって!!もーよけいなことしないでーーー!!!」
「大丈夫ですよ綱吉さん。ビアンキが一般人にポイズンクッキングなんてするわけないですよー。」
「(名前さん気づいてない?!)」


ビアンキが作る料理全てには毒が入っている。何故かはわからないが、必ず入ってしまうのだ。そんなビアンキに100人への出前を頼んだらどうなるかは安易に想像できた。
ツナは必死に拒否するが、名前はビアンキのポイズンクッキングはわざとやっているものだと思い込んでいるようだった。


「安心なさい。」
「は?」
「愛するリボーンの近くで生活するようになって私変わったみたいなの。」
「か…変わったって…」


いきなり変わったと言われても、信じられるわけがなかった。
するとビアンキはツナ達に背を向けて勝手に台所を借りて残ったマグロを使って何かをつくり始めた。
最後に小さな爆発音が聞こえた気もするが…あえてスルーしておこう。


「どうぞ。」


差し出されたそれはとても美味しそうな巻寿司だった。
いつものポイズンクッキングのように、怪しい煙や変な虫は見当たらない。


「どれ。」
「あ!!食べちゃ……!!」
「うおっ!うますぎるーー!!!」


まず最初にビアンキの寿司を口に入れたのは山本の父親だった。
ツナの心配はよそに、その味は寿司屋の親父が絶叫する程のものらしい。
それにつられて山本と名前も、恐る恐るツナも寿司を口にした。


「おお、まじうめー!!」
「美味しい!」
「心境の変化でポイズンクッキングじゃなくなったんだー!!」


その味は本当に美味しくて、普通の料理…いやそれ以上だった。
感動した山本の父親はビアンキがこれを100人前作ってくれれば借金はなしにすると言ってくれた。
ツナの存在が邪魔なビアンキがやってくれるわけがないと思ったが……リボーンが言えば別だ。ツナはビアンキに初めて心から感謝した。












「出来たぁ!!!」


そして3時間後、100人前の寿司が完成した。「これで借金は全部チャラになる!」とツナが歓喜していた時。


「! ふがっ!」
「どうしたんですか綱吉さん!?」
「腹がーーっ!!!」


ツナが急に腹を押さえて屈みこんだ。続いて山本と山本の父親にも異変が現れ、2人とも床に倒れてしまった。


「ビアンキ、おまえ知らぬ間に時間差で効く新技を開発しりまったみてーだな。名づけて“ポイズンクッキング3時間殺し”だ。」
「まあ、私ったら。」


……どうやらそうらしい。やはりビアンキの作る料理は変わらないのだった。


「え、あれ美味しかったよ?」
「何で名前さん平気なのーー!?」


が、何故か名前だけは平気な顔をしていた。その理由は誰にもわからない。
とりあえずツナは当分バイト三昧だ。









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