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03



「まあ、ツッ君ったらお弁当忘れてるわ。」
「ママさん、私がお届けしますよ。」
「あらそう?じゃあお願いしちゃおうかしら。」
「任せてください!」










「えーと…ここらへん…のはずなんだけどな。あれー?」


ボンゴレ10代目として尊敬するツナへお弁当を届けるべく、名前は並盛中学を目指していた。
何故かその身に纏っているのは並盛中の制服だ。どこで手に入れたのかと思うが、これは自分で作ったという。髪の毛も黒のロングのはずが今は茶色のセミロング。
名前はこれでも一応ボンゴレ専属のスパイなわけで、あまり周囲に顔をさらしていい立場ではない。だから、ファミリーや信頼のおける人物以外の人のところに行く時は必ず変装をしていくのだ。
そして、その名前が今いる場所だが……並盛中学校とは全くかけ離れた商店街だ。
リボーンに案内を頼んだのだが、彼は「眠い」と言ってすぐに鼻ちょうちんを膨らませてしまった。なのでツナの母、奈々に並盛中までの地図を書いてもらって、それを頼りに並盛中を目指しているのだが……


「おかしいな。何で無いんだろう。」


それもそのはず。名前は奈々からもらった地図を逆さまにしてよみとっていたのだ。これではたどり着けるはずもない。


「ねえ君もサボリぃ?」
「?」
「オレ達もサボリなんだよねー。」
「丁度いーから一緒に遊ぼうよー。」


路上で地図と睨めっこをしている名前に、並盛中の制服を着たガラの悪い男3人が声をかけた。俗に言う、“ナンパ”というやつだ。


「並盛中学校って、どこにあるかわかる?」


20年の人生経験からナンパというものも何度か経験しているが、そこにはあえて触れずにニヤニヤする男3人を平然と見つめて尋ねる名前。しかし男達がその質問に答えてくれるはずがなかった。


「今更学校なんて行かなくていいじゃん?」
「そんなことよりオレ達と楽しい事やろー。」
「私お弁当届けなきゃいけないの。また今度にしてもらえる?」


もちろん「また今度」なんてあるわけがない。そんな事は名前も承知の上……というか、だからこそ言った言葉だし、男達もこの機会を逃すまいと一歩も引かない。


「弁当なんてなくたってどーにでもなるって。」
「イイお店知ってるよー。」


全く諦める様子のない男3人を見て、名前は軽く溜息をついた。


「…もういいよ。違う人に聞くから。」
「おいおいつれねーなァ。」
「どこ行くわけ?」
「逃げられるとでも思ってんの?」


踵を返した名前を、男達がすばやく取り囲んで行く先を塞いだ。
名前は足をとめて、再び溜息をついて男達の顔を見上げた。男達は厭らしい、下品な笑みを浮かべている。


「……ジャッポーネのナンパはレベルが低いのね。」
「なッ…」
「こっちが下手に出てりゃ…!」
「調子のんなよッ!!」


小さく呟いたはずだったが、その声は充分に男達に聞こえたみたいで。身なりと釣り合わない、彼らの大きな自尊心に刺激を与えてしまったようだ。
男達は今にも名前に殴りかかろうとしている。もちろん彼らの攻撃を避ける事なんて容易い。が、こんな人目につくところで普通の女の子が男3人を倒したとなると問題だ。


「何してるの?」
「「「!!」」」
「?」


どうしようかと名前が考えていると、ナンパ男達のものではない、落ち着いた声が聞こえてきた。
それと同時に回りが凍りつくのを名前は肌で感じた。けれど表情には出さず、静かに声の主を見上げる。


「君達、並盛の生徒だね。今は授業中のはずだけど。」
「ヒ、ヒバリ…!!」


ナンパ男に「ヒバリ」と呼ばれた青年は学ランを羽織って、両手にトンファーを持って鋭い目で男達を睨んでいた。


「ひっ…」


ドゴッ

バキッ

ズガッ


「わー…」


距離が縮まっていくと思ったら、青年は手に持ったトンファーを男達に振り上げていた。次々と路上に倒れていく男達。全員1発でノックダウンだ。
名前はその様子を(この前見た、ジャッポーネドラマみたいだ!)などと言って感動している。


ヒュン


「わっ、なな、何すんの?!」
「…君、やるね。」


しかし今の場合、そのドラマのように優しいものではなかった。
男3人を路上に倒した後、青年は名前にも躊躇い無しにトンファーを向けてきたのだ。
予想していなかった攻撃だが、名前はこれを避けた。
青年は、思ってもみない名前の動きに一瞬目を見開き、笑った。そして再びトンファーを構える。


「ちょっ…何なのもー!」
「……」


今度は先程のより何倍も鋭い動き。それさえも名前はかわしていく。しかも、ツナへのお弁当の平行を保ったまま。


ベキッ


「あー!10代目のお弁当…!なんて事し…ってぅわッ!!」


段々と加速していくトンファーの動きに、流石の名前も少し苦しくなってきて、顔面にくるトンファーを右手で受け止めたところ、その衝撃の所為で持っていた弁当が路上に転がってしまった。間違いなく中身はグシャグシャ。とても食べられる状態ではないだろう。
それに気をとられているところにまた、容赦なくトンファーが入れられる。不意打ちのトンファーをかわすと、青年は一旦動きを止めた。


「すごいね。君何者?」
「名乗ると思う?」
「名乗らせる。」
「……君こそ何者よ…」
「知らないの?…まあ、名乗らせてみなよ。」
「…いいよ別に。」


短い会話を終えると、再び攻防戦。
青年はトンファーで攻撃をして、名前はそれを1つ1つかわしていく。


「ねえ、逃げてばっかじゃなくて反撃しなよ。」
「…何で?」
「逃げてる獲物を噛み殺しても面白くない。」
「…変わってるね。」


全く反撃してこようとしない名前に、青年はどことなく不機嫌のようだ。


名前は困った。
トンファーを避けながら人目の少ない路地に走ったので、今この場に人の気配は無い。が、完璧にそうとは言い切れない。
しかし名前は昼休みまでにボンゴレ10代目ことツナに、弁当を届けなければいけない。
今となっては弁当は無いのでコンビニ等で買う時間も含めて、こんなことをしていたら間に合わないだろう。


「(…あっちも悪いよね!うん!)」


結局、弁当を潰した少年も悪いという事で名前は自分を納得させて、振り下ろされたトンファーを素手受け止めた。じんわりと手首が痛む。


「…やっとやる気になってくれたね。」
「やる気にならないと逃げられそうにないしね。」
「逃がすつもりはないけど。」
「かみ殺されるつもりもないわ。」


はたから見れば普通に会話をしているかのように見えるが、2人の手に込められた力は半端ない。
どちらともその状態のまま動かずにお互いの目を見つめ合う。


「…君、本当に面白いね。」
「褒められてるんだったらありがとう。」
「!」


ドスッ


最初に動いたのは名前の方だった。
いきなり力を緩めたかと思うと、すぐに押し返してそのまま少年の腹に蹴りを入れた。
少年は倒れはしなかったものの多少なりとも痛かったようで足がふらつく。その瞬間に名前はUターン。来た道を真っ直ぐ、全速力で走った。






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