10:シャマルとビアンキ来る
リボーンのせいで「恋するオトメ病」なんてふざけた病気にかかってしまった。
変な病気であることには間違いないけど、かかってる身としてはたまったもんじゃない。
だって、武や獄寺くん…ランボとリボーンまで、近くにいるとドキドキして心臓が苦しいのだ。
リボーンが言った「キスして治る」っていうのも怪しいところだし、私はここ2日間出来るだけ部屋に籠っていた。
そしてついさっき、島に到着した。なんでもここにはリボーンの知り合いの医者がいるらしい。
その人ならこの病気を治せるって言ってたからもう少しの辛抱だ…!
リボーンは島に着くなり医者を捜しに行くと行ってしまった。
「10代目!どこに行くんですか!?」
「え…街でも歩こうかなって…」
2日間引きこもっていたから散歩でもしようと準備しているところを獄寺くんに見つかってしまった。
「おれもお供します!」
「い、いい!いいよ!」
「しかし10代目をお一人にするわけには…!」
「だ、大丈夫だよー…」
ほんと大丈夫だから、これ以上近づかないでくれるかな…!
ていうか、こんな状態で獄寺くんと一緒に歩くとか無理だから!
「まーまー落ち着けよ獄寺。名前は病気にかかってんだぜ?」
「ハッ…そうだった…!では5メートル離れて護衛します!」
「怪しいからやめて!」
一人で行くという選択肢はないのだろうか…!
「でも名前、一人じゃ危険なのは確かだぜ。おれ達の街のように平和なとこばかりじゃねーんだ。」
「そ、そっか…」
武にそう言われたら何も言い返せなくなってしまった。
確かに、ここは私の故郷のような田舎ではない。怖い人…海賊なんかもいるかもしれないんだ。
「…わかった!女装すりゃいいんじゃねーか?」
「…は?」
「え…」
武の提案に、私も獄寺くんも揃って素っ頓狂な声を上げてしまった。
「ランボ、ケーキ買ってこうか!」
「いいですね!」
結局武の意見は採用することになり、ランボがその役を買ってくれた。
正直…うん、可愛いと思う。元々可愛らしい顔立ちしてるもんね。
獄寺くんは最後まで渋ってたけど自分が女装するわけにもいかず、私達を見送ってくれた。
「わっ」
「おっとごめんよ!」
ケーキ屋さんに向かって歩いていたら路地から飛び出してきた男の人とぶつかってしまった。
バランスを崩してしまったけれど、すぐにその人が片手で支えてくれたから倒れることはなかった。
スーツをビシっと着こなして、なんだか大人の男の人って感じだ。
「おー、お嬢ちゃん可愛いね〜!おじさんとチューしよう。」
「え…」
「ダメダメダメーーー!!」
渋い人だと思ったのにイメージとは180度違った。
初対面の人にキス迫るってどういうこと!?
ランボが間に入ってくれたからキスされることはなかった。ありがとうランボ。
「うおわっ、何で男が女装してんだ気持ちわるッ!」
男の人はランボを見てすぐに男だと見破った。
あれ、さっきの八百屋のおじさんは気付かなかったのに…。
「っとと、悠長にしていられん!急いでるからこれにて失礼!じゃーまたな、お嬢ちゃん!」
「!」
「なっ…!?」
男の人は何やら急いでいるようだ。
去り際にほっぺに軽くキスして行ってしまった。ゆ、油断した…!
「だだだ大丈夫ですか名前さん!?」
「べ、別に大丈夫だけど…」
「そこのあなた。」
「?」
嵐のように去っていった男の人に呆然としていると、今度は美人に声をかけられた。
「スーツの男を見なかった!?」
スーツの男…って、もしかしてさっきの人かな…?
「スーツの男の人ならさっき向こうに……」
「ありがとう!今度こそ見失わない……!」
さっきの人が走っていった方向を指さした瞬間、嵐のように去っていく美人。
…いったい何なんだ、この街は。
「……帰ろうか。」
「…はい。」
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