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02


「…うん、いってらっしゃい。」


高校を卒業して、理由は言わずにイタリアに行くと告げたときの名前の声が忘れられない。
別の言葉を飲み込んで、その代わりに搾り出したような声だった。
表情を覚えていないのは、きっとあの時、俺は名前の顔を見られなかったからだと思う。


「綱吉…、」


その後に名前が何を続けようとしていたのか、もう知ることはない。
そう思っていたのに……


「え……っ!?」
「つ、綱吉…!?」


10年経ってから会えるなんて思ってもみなかった。










「10代目!」
「…あ……ごめん、何?」
「疲れてるのなら少し休んだらどうですか?」
「ううん、大丈夫。ありがとう。」


…名前は今週いっぱいまでイタリアにいるらしい。
名前を追っていた男二人…俺を見て青ざめて逃げたってことはマフィア関係者だ。
見た感じ大したことはなかったけど…大丈夫だろうか。何もなきゃいいんだけど…。
様子を見に行こうかな…いや、俺が変に出て行ったらその分名前を危険な目に合わせてしまうことになる。
関わらないこと…それが最善の方法。それが10年前、俺が出した答えだった。


「10代目、お茶をどうぞ。」
「…ありがとう獄寺くん。」


一目見れただけでもよかった。名前は…変わってなかったな。
そりゃ、綺麗になったけど…根本的に。話し方とか、笑い方とか。久々に触れた彼女の雰囲気にすごく安心したんだ。
…それに比べて、俺は変わった。社交辞令も覚えたし、作り笑いもするようになった。
今の俺を見て、名前はどう思ったんだろう…。
名前には俺の嘘はすぐに見破られてしまう…昔からそうだった。
それでも名前は嘘だとわかったうえで、わざと気づかないフリをしてくれるんだ。
俺を困らせたくないからっていうのもあるだろうけど、本当の理由はきっと違う。
さっきだって、獄寺くんから緊急の連絡が入った時の名前の表情は昔と変わらなくて、また胸が痛んだ。


「ぅあっつ!!」
「大丈夫ですか10代目!?」


特に何も考えず湯のみに口をつけたらすごく…すごく熱かった。
反射的に零してしまったお茶は今眺めていた書類の上に。
これ何だっけ……ああ、ロンシャンの誕生日会の招待状か。……まあいいや。





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