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「#エロ」のBL小説を読む
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01

「お嬢さん可愛いね。お洒落なお店を知ってるんだけど一緒にどうだい?」


いわゆる、ナンパというやつである。


「君、ジャポネーゼだろ?顔でわかるよ。」


ちなみにここはイタリアである。
そう、世界史の資料集に数々の歴史的建造物を載せる、パスタとピッツァが美味しい、陽気なラテン系の人たちが住む、イタリア。
今日は美術館に行って、ちょっとお高いレストランで食事して、その帰り道。
見事友達2人とはぐれた私はまあいいかと楽観的にイタリアの町並を一人で楽しんでいた。

そんなときに、ナンパだ。
ラテン系の人って明るいから外を歩いてれば声をかけられるのはしょっちゅうだし、日本人観光客が多いせいかカタコトの日本語で「カワイイ」とまで言ってくれる。
可愛くないのに「カワイイ」なんて言われたらまあ言われ慣れてない分、いい気分になっちゃうよね。
…って、今はそんなことどうでもよくて、ナンパである。
日本でも何回か変なのにナンパされたことはあったけど、一回断って無視を決め込めばだいたい諦めてくれた。
しかし流石はイタリア人。なかなか諦めてくれない。
ていうか、逃げようとした女の子の腕を掴んで更に別の男が行く道をふさぐって、どういうことでしょうか?
あれ?これってもしかしてナンパじゃない?


「うちのボスはジャッポーネの女が大好きなんだよね。」


大学では好きな言語を選べたからイタリア語を選択した。
2年間学んで、それなりに相手の言ってることはわかる。多分、そんなことを言ってるんだと思う。
黒スーツの男が2人に、「ボス」という単語。なんだか久しぶりなアイテムが揃った気がする。


「さあ、行こぶっ!?」
「お断り!!」


このお兄さん2人がマのつく職業だったとしても臆することはない。
中学生の頃から培った私の度胸を見くびらないで!こういうことには慣れてるんだから。
私は腕を掴む男の人に思いっきりビンタして、怯んだ隙に手を振り払って走り出した。
後ろから舌打ちが聞こえて追ってくるのがわかった。
今の私の体力じゃあ追いつかれるのも時間の問題だ。その前に人気のある通りに出て、助けを求めよう。


「あのっ!助けてくださ……!!」
「え……っ!?」
「つ、綱吉…!?」











「え、と…久しぶり、だね。」
「…うん。」


幼馴染にしては、ぎこちない会話。そりゃそうだ、10年ぶりに会うんだもん。


「………」
「………」


所変わってこちらはなんだかおしゃれなカフェ。
ナンパ(?)から逃げて走っていて見つけたのはなんと10年前イタリアに飛び立った私の幼馴染だった。
私を追っていた男の人2人は綱吉の姿を見るなり小さな悲鳴をあげてUターンなさった。あはは、何でだろうね!
とりあえずここじゃなんだからってことになって、今に至る。


「何でイタリアに?」
「旅行だよ。友達とはぐれたらさっきの人たちに絡まれて。ありがとう、綱吉。」
「こっちは治安が悪いから一人で出歩いちゃダメだよ。」
「はーい。」


諭すように言う綱吉が妙に大人っぽい。む、私の方が年上なのに。
でも本当に…かっこよくなったと思う。白いスーツなんて着こなしちゃって…。絶対言わないけど!


「綱吉は……」


そう言いかけたところで、綱吉の携帯電話が鳴った。「ごめん」と苦笑して席を立つ綱吉に「いいよ」と返す。
綱吉は店の外で電話に出て、私がコーヒーを飲み干す頃に帰ってきた。表情からなんとなく言いたいことがわかる。


「ごめん、急用ができたからそろそろ…」
「うん。」


丁度コーヒーも飲み終わったし、私はバッグを肩にかけて立ち上がった。
綱吉が申し訳なさそうにもう一回「ごめん」と謝った。


「この後はどうするの?」
「友達と合流する。はぐれたときの集合場所決めてあるの。」
「じゃあそこまで送るよ。」
「…ありがとう。」


集合場所に着くまで、他愛もない話をした。
奈々さんは元気だよーとか、新しいショッピングモールができたんだよーとか。
でも本当はもっと別のことを話したかった。いろいろ聞きたいこと、あるのになあ。
「今何をしてるの?」とか、「どうして教えてくれないの?」とか、ね。





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