krk | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -



間に挟まれる緑間

「ねーねー真ちゃーん…」
「…その呼び方はやめろと中学の時から言っているだろう。」


今日も名字が俺のクラスを訪ねてきた。丁度教科委員で職員室に向かった田中の席を陣取ってその椅子にうな垂れる。
名字とは中学の時からの付き合いだ。3年間同じクラスで修学旅行の班も一緒だったからか、女子にしては割と話す方だ。自分勝手で俺のことを変なあだ名で呼んだりと、何かと気に食わないことが多いが……まあ、嫌いじゃないのだよ。


「…何の用だ。名字は違うクラスだろう。」
「今日席替えだったんだけどさー…」
「……」
「高尾くんと席離れちゃったよぉお…!」


名字がわざわざ俺を訪ねて話すことは、9割方高尾のことだ。残り1割は今日の晩ご飯やドラマなどどうでもいいことだ。
高尾というのは、同じバスケ部の1年でノリの軽いヤツで……名字の影響か知らんがヤツも最近俺のことを変なあだ名で呼び出した。とにかく、俺とはあまり気が合わない軽薄なヤツなのだよ。……が、バスケに関しては認めていなくもない。
名字と高尾は同じクラスで席が隣らしい。だからか、最近の名字の話題は高尾ばかりだ。高尾の好きなものや趣味を聞いてきたり(もちろん俺が知るわけない)、授業中の高尾の様子を伝えてきたり(微塵も興味ない)。
俺が言うのもなんだが、こいつはちゃんと友達がいるのか心配になるのだよ。
そして今回は席替えの話。入学して2ヶ月程経つし、そろそろ席を替えるのは自然な成り行きだ。俺のクラスも明日席替えする。どうやらその席替えで高尾と離れてしまったらしい。


「どうしよう…」
「どうしようも何も、1クラス40人もいるんだから当然の結果だろう。」
「おは朝のラッキーアイテム持ってきたのにぃ…!!」
「フン、普段から人事を尽くしていないお前に天命がくるわけないのだよ。」
「真ちゃんのアホ!」


まったく、席替え一つでここまで落ち込む理由がわからないのだよ。


「ねえ、次の試合いつ?」
「練習試合なら今週の土曜日にあるが…」
「行く。」


中学の時はバスケの試合なんて一回も見に来なかったくせに、高校に入った途端名字は試合を見に来るようになった。たまに練習も覗きに来てる。どういう風の吹き回しだ。


「てか、真ちゃんって高尾くんと恋バナとかしないの?」
「鯉花?意味がわからんのだよ。」
「するわけないかー…。せめて高尾くんの好みのタイプ聞いてみてよ。」
「断る。興味ない。」
「私が興味あるから頼んでるのに!」


高尾の好みのタイプなんか聞いていったいどうするというのだ。バカだバカだとは思っていたが、高校に入って名字はますます意味がわからなくなった。


「ううう…このままじゃ高尾くんと接点無くなっちゃう…。私みたいなモブなんてすぐ忘れられるよぉお〜!」


他人の椅子にうな垂れて泣き言を言う名字はそろそろうざったい。よくわからんが、名字は高尾と席が離れて、高尾に忘れられるんじゃないかと心配しているらしい。まったく、くだらないのだよ。


「高尾は軽薄そうに見えるが、そういう男じゃないのだよ。安心しろ。」
「真ちゃん………うん!私頑張るね!!」


そう言うと名字はうな垂れていた顔をバッとあげて意気揚々と教室を出て行った。
何を頑張るのかは知らんが、煩いヤツがいなくなったので俺は読みかけの小説に再び視線を落とした。












「ねーねー真ちゃん聞いてくれよー」
「…その呼び方はやめろ。」


この小説も今日の昼休みには読み終えるだろうと思っていたというのに邪魔が入った。…高尾だ。名字といい高尾といい、何故こうも俺のところに来るのだよ…!落ち着いて本も読んでいられん。


「今日席替えあったんだけどさ、これがまー見事に名字ちゃんと離れちゃったんだわー。マジショック。」
「………」


名字と同様に田中の席を陣取って話すことと言えば、やはり名字と同じこと。お前と名字の席が離れたことはとっくに知ってるのだよ。


「教室の端と端だぜ?そりゃねーって神様。」
「………」


いや、端と端というのは聞いていなかったが、そんなの知ったこっちゃないのだよ。普段神様とか信じないヤツが何を言っているのだよ。


「しかも名字ちゃんの隣がサッカー部のイケメンくんで俺はもー気が気じゃないワケ。」


何で名字の隣の席がイケメンだとお前が気にかける必要があるのだよ。というか、同じことを話すのだったら俺が聞く必要は無いのではないか?今この時間を小説を読むことに使った方が何倍も有意義だと思うのだが。


「ってか真ちゃん聞いてる?」
「まったく、何なのだよお前らは…わざわざ俺のところに来て同じことを…。」
「え?“お前ら”って…?」
「名字のことだ!ヤツもさっき来てお前と同じことを……」
「マジで!?」


さっきまでうな垂れていた高尾のテンションが急に上がった。相変わらずコイツが気にかける点はよくわからないのだよ。


「え、つか……えっ、マジで!?」
「何で嘘をつく必要があるのだよ。」
「ちょ、そーいうことはもっと早く言ってよ真ちゃん!!」
「何で言う必要があるのだよ。」
「ほ、他に!他に名字ちゃん、何て言ってた!?」
「今度の練習試合、見に来ると言っていた。」
「〜〜〜っ…よっしゃ、真ちゃん俺頑張るわ!!」
「? 人事を尽くすのは当然のことなのだよ。」


高尾も高尾で何を頑張るのかはよくわからんが、人事を尽くすのは良い事だ。








■■
高尾夢っていうか、間に挟まれるエース様 )^O^( っていうのを書きたかっただけです。




next≫≫
≪≪prev