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好きな子をいじめちゃう紫原

「うーん…」
「何してんのー?」
「ぎゃんっ!」


放課後。靴箱の前でうんうんと唸っているのを見つけて、後ろから声をかけると常人以上に驚く名前ちん。これじゃ俺が悪いみたいじゃんか。俺はただ声をかけただけなのに。


「なんだ紫原くんか…。」
「何ソレ。何か失礼なんだけどー。」
「えっ、ごめん、別に紫原くんだからどうとかではなくて…」
「そんなことよりどうしたのー?傍から見るとすんごい不審者だったよー?」


この子の名前は名前ちん。クラスも違う名前ちんを何で俺が知っているのかと言うと、中学が同じだから。中学の時から名前ちんはおバカさんでよく俺も迷惑をかけられたもんだよーまったく。


「私の傘が無くて…」
「……ふーん。」


まあ、そんなことはわかってたけどー。


「確かに持って来たはずなんだけどなァ…。」
「…そんなの誰かにパクられたに決まってるじゃん。相変わらずアホだねー。」
「や、やっぱそうかな…?」


ああもう、本当にアホだなー名前ちんは。午前晴れてて午後急に雨が降れば傘を借りパクする奴ぐらいいるっての。昔から人を疑うことを知らないおバカさん…少しは学習してほしいもんだよ。


「駅まで走って10分…い、いや、頑張って8分…」
「………」
「よ、よし!私頑張…ぎゃふん!!」


このまま外に走り出そうとした名前ちんの足を引っ掛けた。まさかこの土砂降りの中傘無しで帰ろうという選択肢があることに驚きだよねー。俺なら他の傘を借りパクするし。


「なっ、何するの紫原くん…!」
「この雨の中濡れてくつもりー?そこまでアホだとは思わなかったわー。」
「だって傘ないし、早く帰って晩御飯作らないと…」


傘が無くて困ってるなら、目の前にいる俺にでも頼ればいいのに。家の方向同じだから、ついでに一緒に行こうとか、そういう考えは出てこねーの?


「……しょうがないから俺の傘の中に入れてあげる。」
「……え!?」
「何その反応。何か文句でも…」
「ありがとう紫原くんっ!」
「………」


にっこりと笑う名前ちん。はあ…。この笑顔に何度調子を狂わされてきたことか…。どれだけ意地悪をしても名前ちんには効かないんだもんなー。
俺が全部悪いのに、それでも笑って「ありがとう」まで言ってくるどうしようもないおバカさんだよ。


「本当にありがとう!今度ポッキーあげるね!」
「…ハーゲンダッツがいい。」
「えええ!?た、高いよ!」
「ま、ポッキーでいーよ。どーせ俺のも拾った傘だし。」


よっしゃーおやつゲットー。
本当はハーゲンダッツがいいけど貧乏な名前ちんのことを考えてポッキーで我慢してあげる俺って超優しい。
…ということで、さっき借りパクした傘を広げた。うわ、なんて趣味の悪い花柄だー。


「……あのさ、紫原くん…」
「何ー?」
「………それ、私の傘!!」
「へー。それは知らなかったー。」
「ウソ!私の名前シール貼ってあるじゃん!!」
「え?あー、これ。字が汚くて読めなかったー。」
「もー!」


ああどうりで悪趣味な傘だと思った。でも、借りパクした今はもう俺の傘だし。名前ちんは大人しく俺の傘に入るという選択肢しかないんだよ。


「返してよー!」
「ヤだし。俺に濡れて帰れって言うのー?」
「あ、そっか…じゃあ後で返してよね!」
「はいはいー。」


本当、おバカさんだよねェ。







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