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13


「赤点とったら夏休み2週間補習だからなー。」


担任が言った途端教室からブーイングが起こる。つっても、赤点は平均点の半分以下……そうそう取る点数じゃない。


「……っ…」


ふと隣を見たら夏目さんが青い顔をしていた。……そういえば勉強苦手だったな。


「あのさ……よかったら一緒に勉強しねぇ?」
「う、うんっ!教えてほしい!」











というわけで、学校帰りに勉強することになった。テスト週間だから部活はない。場所は……


「お邪魔します。」
「どーぞどーぞ!きたねーけど!」


俺の家になった。
図書館だと会話できないし、夏目さんの家は黒子の家…「友達を呼んで勉強したい」なんて夏目さんは言えないだろう。


「そこらへんテキトーに座って!」


流石に部屋に2人っきりはまずいだろってことで俺は夏目さんをリビングに案内した。リビングだったら綺麗だし、親は仕事で帰りは19時くらいだ。


「ただいまー!」
「!」


あ、やべ、妹忘れてた!


「あれっ、お客さん来てるの?」
「お、おー早かったな。」
「えっ、すごい美人さん!うそ、お兄ちゃんの彼女!?」
「ちげーから!友達!今から勉強すんの!」
「ふーん…」


夏目さんを見た途端にはしゃぐ妹。我が妹ながらテンションが高いと思う。
あーもう絶対バレたわ。めんどくさくなる前に追い払うか。


「あ!今日りっちゃん達とマリパするからリビング使っちゃダメだからね!」
「はあ?聞いてねーんだけど…」
「お母さんにちゃんと言ったもーん!ってことで、邪魔だから部屋行って!」
「お、おい…!」










逆に妹に追い払われてしまった俺は仕方なく夏目さんを自分の部屋に案内した。


「なんかごめん。」
「ううん、妹さんと仲いいんだね。」


ベッドの上や床に散らばっていた雑誌をクローゼットの中に投げ入れて、リセッシュして……多分大丈夫だ。
夏目さんが俺の部屋にいる。俺がいつも膝の上に置いてゲームしてるクッションに座っている。好きな子が自分の部屋にいるってめちゃくちゃやばいんだけど。


「んじゃ、始めっか!」
「よろしくお願いします。」


いつも使ってるローテーブルに2人で教科書を開くと意外と狭い。至近距離の夏目さんの顔を見れなくて視線を落とすけど、そこには夏目さんの白くてきれいな指があって結局ドキドキする。
いったいどうすればいいっていうんだ。これは思ったよりもやばいかもしれない。


「……ここ、代入間違えてるよ。」
「…あ!ありがとう。」


間違いなく俺に向けられた笑顔が眩しすぎる。くっそ可愛い…!


「高尾くんはすごいね。」
「ん?」
「運動できるし、頭もいいし、話しやすいし……なんだかこうやって高尾くんと一緒に勉強できるなんて、思ってもみなかった。」
「いやいやそんな……」
「幸せだな。」
「っ…!」


更に追い打ちをかけるようにとんでもない殺し文句を呟く夏目さん。夏目さんは俺を殺すつもりなのか…!幸せなのは俺の方だ。


「あー…飲み物なかった!気ィきかなくてごめん!持ってくる!」
「え…」


とりあえず顔に集中した熱を冷まそう。
なるべく夏目さんに顔を見られないように俺は部屋から退散した。だって、やばいだろアレは…!


「ちゅーした?」
「うおわっ!?」


リビングに戻り冷蔵庫を開けたところで、妹がニヤニヤしながら背後に立っていることに気付いた。


「…マリパしてねーじゃん!」
「だって嘘だもーん☆」
「なっ…!」


妹の片手にはアイス。リビングに友達りっちゃんの姿はないしゲーム機も広がってない。
騙された…!


「ふふ、感謝してよねー。私のおかげで密室空間に好きな子と二人きり!最高のシチュエーションでしょ!?」
「…まあな。」


確かに今この状況は妹のファインプレーによって生み出されたものだ。だけどな妹よ……兄ちゃんには少し刺激が強過ぎたみたいだよ…。


「で、ちゅーした?」
「してねーよ!てか付き合ってねーから!」
「お兄ちゃんってばお・く・て!」
「うっせーからかうな!そんでありがとな!」
「おう!決めてこいよー!」


いやいや決めねーよ?まだそんな段階にさえいってないことは俺が一番よくわかってるんだ。











「お待たせー……って…」


麦茶を持って部屋に戻ったら夏目さんがベッドに寄り掛かってうとうとしていた。…ていうか、寝てるな、これ。
夏目さんが起きないように、静かにコップをテーブルに置く。


「夏目さーん……勉強中ですよー?」
「……」


ものすごく控えめに声をかけるが起きる気配はない。ま、本気で起こそうなんて思ってねーし。
授業中も休み時間も、夏目さんはいつも眠たそうだ。もしかして黒子の家だと気を遣ってあまり寝られないのかもしれない。
…だとすると、少しは俺に気をゆるしてくれてるってことなのかな?


「ん……」
「お、起き…」
「…たかし……?」


夏目さんが寝ぼけ眼で俺を見つめて呟いたのは知らない男の名前だった。
俺の髪の毛に触れた夏目さんの手はひどく優しくて心地よい。


「……!高尾くん…!?ご、ごめん!私寝ちゃって…!」
「…ん、おはよ!」


一瞬の出来事だったけれど、「たかし」という人物がいるならばそいつが夏目さんにとってすごく大事な存在だっていうことは嫌でもわかった。
俺は夏目さんのことを何も知らない…。その事実を思い知らされた瞬間だった。





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