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03


「いやです。」


桃井のボリュームたっぷりな台詞に、名前はたった4文字で返した。










「ぷぁっはははは!!」
「……青峰煩い。」


あの後結局桃井は先生に連行され、今無事にHRが終わったところだ。
すると今までずっとこらえていたのを吐き出すかのように笑い出す青峰。名前にとっては笑い事ではない。クラス全員の前で個人情報を暴露されたのだから。


「まーこれから頑張れよ。」
「え?だから私やんないって。」
「こんだけ条件に合う奴、あいつらが見逃すわけねーからな。」
「は……?」
「このクラスに名字名前さんっている?」
「は、はい!」


青峰が意味深な発言をした矢先に名前にお客さんである。
教室の入口に立っているのは赤髪の男子……バスケ部次期キャプテン、赤司征十郎だった。赤司とは初対面の名前だったが、なんとなくバスケ部であることを感じ取った。
しかし名前が隠れる前に、イケメンの登場にテンションが上がった女子にあっさりと売られてしまうのだった。


「あはは名字名前って誰だろーねー。」
「おー赤司ー、こいつだこいつ。」
「青峰この野郎。」
「俺もバスケ部だし。」


悪あがきをしてみても名前の味方はもうどこにもいないらしい。
あっさりと青峰が告発し、入口に立っていた赤司は気づけば目の前に立っていた。


「俺は赤司征十郎。バスケ部の次期キャプテンだ。」
「あの、私マネージャーやりません。」
「今年の夏から部員60人に対してマネージャーはたったの1人……深刻なマネージャー不足に悩んでいる。」


用件はわかっているから言われる前に断ったのだが、どうやら意味が無いらしい。赤司は名前の言葉なんて聞こえていないかのように話し始めた。


「入部届けは渡しておく。」
「いや、だから入らないってば。」
「とりあえず今日の部活には顔を出してくれ。」
「行きません。」


入部を頼むのを通り越して、彼の中ではもう名前が入部することは決定事項のようだ。名前の机に入部届けの紙を置いて、用件だけ伝えるとすぐに帰ってしまった。


「……何あの人の話を全く聞かない人!」
「赤司。逆らわない方がいーぞ。」
「………」













−休み時間−


「名字名前ちゃんっているっスか?」
「はい!!」


またしても名前にお客さんである。
今度訪ねてきたのは緑髪で眼鏡をかけた男子と金髪にピアスの男子。2人とも長身だ。
おそらくバスケ部関係者の彼らと話すことは何も無い……のだが、あっさりと入口付近の女子に売られてしまった挙句、隣の席の青峰に「逃げるな」と釘を刺されて名前は動けずにいた。


「よ。」
「青峰っち、この子が名字名前ちゃん?」
「お前らも見に来たのか。」
「うん、だって気になるじゃないっスか〜。」
「まさかあんな条件に合う女子がいるとはな。」
「黄瀬と緑間。2人ともバスケ部。」
「まあ、そうだろうとは思ってたけど。」


黄瀬と緑間と紹介された男子は物珍しげに名前を眺める。特に黄瀬は屈んでみたり後ろにまわってみたりと、かなりの食いつき様だ。
それもそのはず。帝光中学に通っていて“黄瀬涼太”を知らない女子なんていないと誰もが思うからだ。何故なら黄瀬涼太はイケメンでスポーツ万能で、更にモデルという肩書きまで持っている。学校の女子だけでなく他校の女子がわざわざ見に来る程のモテっぷりなのだ。


「にしても……本当に俺のこと知らない女子がいるなんてねー…」
「確かに、女子にしては珍しいな。」
「え、有名人?」
「一応俺、モデルやってるんスけどね。」
「……あー、知ってる知ってる。噂のモデルね。確かにイケメンだ。」


と言っても名前だって女子の端くれ。一応モデルの存在は知っていたようだ。ただ、他の女子とは反応が明らかに違う。
他の女子ならばモデルと聞いた途端声を高くして「すごいねー」「かっこいい」など言ってくるものだが、名前の場合、普段の雑談の時のテンションと何ら変わらない。「昨日のドラマ面白かった」とでも言うようにモデル・黄瀬涼太を「イケメンだ」と言ったのだ。


「ぶはっ!」
「あんま褒められてる気がしないっス……。」
「え?イケメンは褒め言葉だよ。」
「だったらもっとテンション上げろっつーの。ホントにそー思ってんのか?」
「思ってるよ。イケメンは正義!隣の人もイケメンだよね。何、バスケ部ってイケメンしかいないの?」


棒読みにも聞こえるからと言って名前の言葉が嘘かというと、そうではない。名前は本心から黄瀬はイケメンであると思っている。
黄瀬だけではない。青峰だって隣の緑間だって名前にとってはイケメンで、そのことを素直に認めている。


「………」
「あ、緑間っち照れてんスか?」
「死ね黄瀬。」
「ええ!?」


黄瀬と緑間はとりあえずやっと見つかったマネージャー候補がどんなものかと見に来ただけだったらしく、特に勧誘をすることもなく帰っていった。











−昼休み−


「あ、名前ちんだー。」
「あ、むっくんだー。」


生理痛が酷くなってきてちょっと休むために保健室へ向かっている途中で紫原と遭遇した。名前と紫原は1年の時同じクラスであり、仲が良い方である。
紫原は購買帰りらしく、両手いっぱいにパンやらお菓子やらを抱えている。


「名前ちんバスケ部のマネージャーやるの?」
「私がマネージャーなんて似合わないって。」
「そー?俺けっこーいい感じだと思うよ。」
「また適当なこと言って。」
「適当じゃないよー。」


マネージャーにあまり感心が無さそうな紫原にも名前のことは伝わっているようだ。しかももう既に入るということで理解されている。
しかしもともと紫原はバスケに熱心ではないことは知っていたため適当に流すだけに止まった。紫原も赤司や桃井のように強引な勧誘をするつもりはないらしい。


「……名前ちん、顔色悪い?」
「ちょっと。今から保健室行くとこ。」
「ふーん……じゃ、これあげるから早く元気になってね。」


名前の様子がいつもと違うことに気付いた紫原は両手いっぱいに抱えていたお菓子の一つを名前に渡した。
中学生離れした長身の紫原からこういうことをされるのに名前は弱かった。ギャップ萌えというやつだろうか。こんなにでかいのに何故か可愛く見えてしまうのだ。
名前は貰ったチョコレートを握り締めて、ほわほわした気持ちで保健室へ向かった。









−放課後−


「青峰、マネージャーは?」
「腹痛いっつって帰った。」
「……なるほど、一筋縄ではいかないな。」
「ふふ……それならこっちにも考えがあるわ。」





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