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02


帝光中学男子バスケ部は現在マネージャー不足という問題に悩まされ、新しいマネージャーを捜索中だ。


「い、いた……!!」


忍耐強くて、1年か2年で、バスケの知識があって、黄瀬目当てではなくて、可愛くて、料理が上手くて、巨乳な子。
桃井は一週間をかけて情報を集め、ついにこれらの条件に当てはまる女子を見つけ出した。











その日、名前は学校に行くのを躊躇った。
何故なら生理2日目でお腹がチクチク痛かったことと、珍しく見たおは朝占いで最下位だったこと、そしてなんとなく行きたくない。
そういった原因が重なってノロノロと朝食を取っていたのだが中学校は義務教育。母に追い出されてしまった。昔から悪い勘程よく当たるというジンクスを持つ名前は、学校に近づくにつれ得体の知れない威圧感をひしひしと感じた。
午前中が終わったら早退しようと心に決め、彩弥は重い足取りで正門をくぐった。


「なー名字、バスケ部のマネージャーやんねェ?」
「……は?」


教室に着くなり隣の席の青峰大輝が「おはよう」も何もなく声をかけてきた。
名前からしてみればいきなり意味がわからない。青峰とは1年の時も同じクラスで、割と話す方だ。青峰がバスケ部でエースであることも知っていたが、今まで一度もそんなことを言ってきたことはなかった。


「お前どーせ暇だろ?」
「いや私部活入ってるし。」


暇人だと勝手に決め付けられて失敬だと思いながらちゃんと訂正しておいた。
名前はしっかり部活に入っている。ただ、それが毎週金曜日しか活動しない家庭部なだけだ。バスケ部と比べたら確実に暇だろうが、金曜日以外は家に帰ってゴロゴロするという名前にとって大事な任務があるのだ。


「へー家庭部……じゃー料理できんの?」
「うん。」
「はちみつレモン作れっつったらちゃんとレモン切る?」
「え、バカにしてんの?」


確かに人をバカにしたような質問だが、実際にレモンを丸ごとはちみつ漬けにしてくる人物がいるからこその確認だ。
意外と身近にマネージャー候補がいたもんだと感心しながら、青峰は他の条件をあてはめていった。


「お前黄瀬って知ってる?」
「キセ?誰?」
「………」


黄瀬と聞けば大抵の女子が黄色い声をあげる。何故なら彼がイケメンでモデルだからだ。
その黄瀬がバスケ部に入ったものだから一時期マネージャー希望がすごいことになったが結局はこの現状。ミーハーな志望動機では長続きしないことは立証済みだった。
それに対して名前は帝中のアイドルをどうでも良さそうな表情で聞き返してきた。正直女子としていかがなものかと思ったが、これでまた一つ条件を満たした。


「バスケのルールとかわかる?」
「……まー授業でやるからねー。てかやんないからね、マネージャーとか。」


これで残る条件はあと3つ。
忍耐強さはよくわからないが、青峰が一年と少し見てきた限りでは泣いたりだとか弱音を吐いたりだとかは見たことがなかった。
それから体育の成績もそこそこ優秀。体力はあるだろう。
そして中身こそサバサバしているものの、見た目は清楚なお嬢様系に入る。つまり可愛い。男子の理想を具現化したような容姿は申し分ない。友人曰く見た目詐欺だそうだ。青峰も激しく同感した。
最後に巨乳……この条件は他の誰でもない、巨乳好きの青峰が出したものだ。青峰は名前の胸元に目をやって、ため息をついた。


「……やっぱいーわ。」
「ちょっと待て今の視線何?何でため息ついた?」


バスケ部のマネージャーとしてはふざけた条件だが、青峰にとってはここが一番重要らしい。もう勧誘する気は無いらしく、英語の宿題写させろと横暴なことを言い出した。


バン!


「見つけたわよ名字名前さん!!」


教室のドアを荒々しく開けて入ってきたのは2年の桃井さつき。バスケ部のマネージャーであり、巨乳で美人ということで有名だ。
桃井と名前に接点は無い。今まさに初めましてという状況なのだが、桃井は狩りをするような目つきである。とても「初めまして」なんて言えるような雰囲気じゃない。


「2年C組、名字名前さん。保健委員、家庭部所属。可愛らしい見た目とは裏腹に男子よりもサバサバした性格から見た目詐欺と呼ばれる。好みのタイプは歌手の福山正治で髭が似合う人が好き。その理由で今年サッカー部のエースをフる。きーちゃんはいつも素通り。去年の体力測定では持久走と短距離走で上位。にも関わらず家庭部に所属し、両親が共働きということもあって料理上手。そして!小学校ではバスケのスポーツ少年団に入り、全国大会を経験している………名字さん!バスケ部のマネージャーになって!!」
「………」


ぎっしりまとめられた個人情報に名前はドン引きである。
何故誰にも言っていないはずのサッカー部のエースをフったことや、バスケをやっていたことなどがバレているのか。
そしてそんなトップシークレットを、何故クラス全員の前で暴露されなければいけないのか。


「おいさつき、こいつ巨乳じゃねーぞ。」
「黙れ青峰。」
「ふふ……名字さんは着やせするタイプだから見た目じゃあまりわかんないけど、Dよ!!」
「黙ってください桃井さん。」





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