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11


昼休み、緑間は急いでいた。向かう先は美術室。何故なら今日のラッキーアイテム、黄色いハンカチを美術室に置いてきてしまったことに気付いたから。
ラッキーアイテムを手にしていない時、何が起こるかわからない。今までの経験上あまりいい事は起こらないことを知っているため、緑間は一刻も早く美術室に行きたかった。


「……!」


しかしその途中、廊下の端にうずくまる女子生徒を見つけて思わず足を止めてしまった。
緑間は迷った。体調の悪そうな見ず知らずの女子生徒を優先するか、ラッキーアイテムを優先するか。


「おい、どうしたのだよ。」


迷った挙句、緑間は足をうずくまる女子生徒に向けて様子を窺った。


「すみません……大丈夫、なので…」
「……」


大丈夫と答えつつも女子生徒の顔色は悪いし立ち上がろうとしない。見るからに大丈夫ではない様子だ。
緑間は大丈夫でないのに大丈夫と答える女子生徒に初対面ながらも若干苛立った。


「全然大丈夫には見えないが。保健室に行くべきなのだよ。」
「はい、そうします……っ…」
「お、おい!」


女子生徒は壁に手をついて立ち上がるも、覚束ない足取りで2,3歩ふらふらとよろめいた。客観的に見て、とても支えなしでは歩けなさそうだ。


「そんな足取りじゃあ保健室までたどり着けるかも危ういな…。ついていってやるから、倒れそうになったら掴めばいい。」
「えっ、そんな……」
「このままほっといて転ばれても気分が悪いのだよ。」
「……ありがとうございます。」


棘のある言い方しかできないのは緑間の性格上仕方がなかった。彼をあまり知らない人が聞けば冷たくきこえるが、本人的にはそんなつもりはないのだ。
しかし初対面のはずの女子生徒はさして気にする様子もなく、柔らかく微笑んだ。


「あの……私、夏目っていいます。真ちゃんさん、ですよね?」
「!? 何故……」
「高尾くんからよく真ちゃんさんのお話を聞いていて……」
「待て。その呼び方はやめるのだよ。緑間真太郎だ。」
「緑間くん……でいいかな?」
「ああ……お前が夏目か。俺も高尾からよく話を聞いている。」
「! そうなんですか。」
「敬語もやめろ。同い年なのだよ。」
「……うん、ありがとう。」
「礼を言われる意味がわからないのだよ。」


そう、緑間と女子生徒の間には共通の友人がいて、その人物を通してお互い会ったことはなかったが名前と人物像は知っていたのだった。


「先生はいないのか…。熱測るか?」
「ううん、横になってれば治まると思う。」
「フン、ならさっさと横になるのだよ。」


保健室に着いたはいいが先生は不在のようだ。
女子生徒は緑間の言う通り素直にベッドに横になった。


「…ありがとう。」
「別に……」
「優しい人の周りには優しい人が集まるんだね。」
「……よくわからん奴だ。俺はもう行くのだよ。」
「うん、本当にありがとう。」


緑間の否定は特に気にすることなく、女子生徒は半ば遮るようにお礼を口にした。











どうしよう、夏目さんが4限の体育が終わってから帰ってこない。


「おい高尾、早く部活に行くぞ。」
「…なあ真ちゃん。こう、ロングヘアで色白の美人さん見なかった?」
「……夏目のことか?」
「え、真ちゃん夏目さんのこと知ってたっけ!?」


ダメ元で聞いてみたのに、思いのほか真ちゃんから正解が返ってきた。え、夏目さんと緑間って会ったことなかったよな?


「お前から散々聞かされた挙句、この前練習を見に来ていただろう。」
「あーそっか。」


確かに、夏目さんの話は真ちゃんにしていたし、練習を見に来ていたから夏目さんの容姿もわかってたのか。


「夏目なら保健室にいるのだよ。」
「何で知ってんの!?てか保健室!?何で!?」
「煩い。廊下で気分悪そうにしていたから送ったのだよ。」


知らない間に夏目さんと緑間が接触していたとは…。
なんか…なんだ、こんなことでもちょっとヤキモチ焼いちゃってる自分がいる。ってそれよりも、気分悪そうにしてたってのが気がかりだ。


「真ちゃん、俺ちょっと保健室寄ってくる。」
「な……」
「部活までには戻るから!」





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