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10


「フンフーン♪」


土曜日の部活の帰り道。たい焼き屋に真ちゃんを誘うもきっぱり断られ、結局一人でたい焼きをかじりながら鼻歌混じりで自転車を引く。ふと視線を上げてみると、私服姿の夏目さん。


「おっ……おお!?」


バッシャーン!


どんな私服かチェックする間もなく夏目さんは川に落ちていった。


「夏目さん!?」


もちろん俺は食べかけのたい焼きを適当に鞄につっこんで夏目さんに駆け寄った。


「た、高尾くん。えっと…、部活帰り?」
「そーだけどそんなことより!大丈夫!?」
「う、うん、足滑らせちゃって……」


落ちたところは浅瀬で怪我もないようだから良かったけど……ずぶ濡れだ。いくら初夏だと言ってもこんなんじゃ風邪引いちゃうって。ただでさえ夏目さん体弱そうなのに…。


「あー……タオルタオル…」
「あ、いいよそんな……」
「風邪引いたらどーすんだよ!ほら、ちょっと汗臭いかもだけど勘弁な?」
「……ありがとう。」


部活用にタオルいっぱい持ってて良かった。もちろん夏目さん相手に使用済みのタオルなんて渡すわけない。一応使ってないやつだけど、ほら、一緒の鞄に入れてあるから臭いかもじゃん。
けどまあ今はそんなこと気にしてる場合じゃないんで。ずぶ濡れになったことで制服がぴったりと体にくっついてて、その、ラインが……


「あー……服びしょびしょだな。」
「だ、大丈夫!家すぐそこだし、ちょっと恥ずかしいけどなんとかなるよ。」
「いやいやいやなんねーから!」


夏目さんがなんとなかったとしても俺がなんとかならない。正直目のやり場に困る。別に下着が透けて見えるとかじゃないけど、思春期男子にとって今の状況やばいから。多数決とったら大半の人がやばいって答えるから。


「俺のジャージでよければ貸すけど……」













「ありがとう。洗って返すね。」
「え、あ、うん。」


ずぶ濡れのセーラー服姿で歩かせたくなかったから何か隠すものをと思って俺のジャージを着てもらったわけだが……状況はより一層やばくなった。
だっていわゆる「彼ジャージ」ってヤツだろ?妹の少女漫画に載ってたヤツだろこれ。
夏目さんが俺のジャージを着ている。夏目さんの華奢な体を俺のジャージが包んでる。だぼってしてる。これらの状況から総合的に判断した結果、うん、これはやばい。むしろ洗わなくてもいいと思ってしまっている邪念を振り払ってとりあえず頷いた。


「あー……家どこらへん?」
「えっと、あそこの……」
「名前さん! と、高尾くん…?」


ここで俺と夏目さんの名前を呼んだのは……黒子だ。
ん?俺はともかく何で夏目さんまで?っつーか、今下の名前で呼んだよな?


「ただいま、テツヤくん。」
「お帰りなさい。」


え?何それ「ただいま」「おかえり」って、え、何それ。


「どうしたんですか、こんなに濡れて……高尾くんに何されたんですか。」
「違うの、高尾くんは私を助けてくれて…」


そりゃ夏目さんのずぶ濡れの姿見たら驚くよな。でもちょっと待って俺も今別のことで驚いてるから。
いつも死んだような目をしてる黒子にキッと睨まれてるけどちょっとまってついていけてないから。


「……とにかく中に入りましょう。二人ともシャワーを浴びてきてください。」
「あ……迷惑かけてごめんなさい…。」
「迷惑だなんて思っていませんよ。でも、風邪をひかれると心配なので早く体を温めてください。」
「……うん。」


そう黒子に言われると、夏目さんは幸せそうに頷いた。
この時俺は夏目さんが以前話してくれたことを思い出した。「今お世話になってる人たちは、すごくい人たちなの。」……そうやって話した夏目さんはやっぱり幸せそうだった。
今の表情がその時と表情とかぶる。つまり、夏目さんが今お世話になってる家って……


「マジで!?」
「高尾くんもどうぞ。」












「はー……夏目さんがお世話になってる家って黒子の家だったのか。」
「高尾くんのことは名前さんからよく聞いてました。」
「あれ、そーなの?」
「席が隣で、バスケのルールを教えてあげてるんでしょう?嬉しそうに話してくれました。」


どっちが最初に入るかもめた後、結局夏目さんが先にシャワーを浴びている。
なんか変な感じだな。俺が黒子んちにいるって。だって同じ学校の友達でもねーのに。つか、むしろライバルだぜ?
そーいや、今考えるとバスケのルール教えてっていうのも黒子のためだったんかなー。


「高尾くんは……名前さんのことが好きなんですか?」
「……そーだけど、牽制でもすんのか?」
「しません。ただ、名前さんを悲しませたら許しません。」
「はいはい肝に銘じときますよっと。」


これは思わぬ伏兵だわ。





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