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09


「おい笠松見たか!?校門前にいた美少女!」
「見てねーよ早く部活行くぞ!」


体育館に向かう途中、森山先輩が何やら騒いでいる。何かと思えば、まあ森山先輩が騒ぐ時は大抵女の子のことで。


「俺の友達は早速ナンパに行ったらしい。千載一遇のチャンスなんだ…!」
「行かせねーよ!」
「あ……。」


関わると巻き込まれるからしれっと通りすぎようとしたんだけど、横目にチラっと映った姿に思わず方向転換してしまった。


「っておい黄瀬!」
「すんませんっス、あの子知り合いなんス!」
「何!?紹介してくれ!」


校門の前に立っていた女の子はこの前会った夏目名字さんだったから。












「夏目さん!」
「あ…どうも。」


駆け寄って声をかけると控えめに返事をしてくれた。周囲の生徒たちの視線を集めてるのがわかる。こりゃあ噂になっちゃいそうっスねぇ…。俺は別にいいけど。


「どうしたんスか?」
「……その腕、どうしたんですか?」
「ん?軽く捻っただけっスよ。」
「………」


練習中に軽く捻って包帯を巻いた右腕を指摘されて、大丈夫と笑ってみせるも夏目さんは曇った表情。別に大したことはないんだけど……え、心配してくれてんの?だとしたらすごい嬉しいんスけど。


「あの、あなたに渡したいものがあるんです。」
「俺に?」
「私の…友人があなたのファンで、でも…もうすぐここを離れなくちゃいけなくて…。せめて手紙だけでも、と預かってきました。」


ここで本題。
どうやら夏目さんが今日俺に会いに来てくれたのは、友達から預かったファンレターを渡すためだったらしい。ちょっと残念だけど、まあ結果オーライっス。


「ファンレターなんてたくさんもらってると思いますが、一生懸命書いたんです。だから……最後までしっかり読んでほしいんです。」


真っ直ぐと目を見て言われてドキっとした。それと同時に、夏目さんにここまで真剣に思われているその友達が少し羨ましくなった。


「ありがと。ちゃんと読ませてもらうっスよ。その友達にもありがとうって伝えてほしいっス。」
「……はい。」
「!」


夏目さんのためにもこのファンレターはしっかり読もう。そう思ってしっかり受け取ると、それを確認した夏目さんが安心したようにふわっと笑った。
あ、やばい……落ちたっスわ。




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