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05


「肝試し?」
「そーそー!今度第三校舎が廃校になるだろ?だからそれを記念して生徒会が企画したんだって。」
「高尾はもちろん参加だよな?」
「もちろん!」


友人の誘いに俺は二つ返事で返した。肝試しなんて、そんな面白そうなこと参加しないわけないじゃん?


「夏目さんもよかったらどう?」
「え……でも、私こういうのはちょっと……」
「あっ、もしかして怖いの苦手?」
「可愛い〜!大丈夫だよ、みんないるから!」
「夏目さんいるとみんなも喜ぶからさー、頼むよー!」
「う、うん……わかった。」


そいつは隣にいた夏目さんも同様に誘って、夏目さんも行くことになったけど……夏目さんの表情はあまり明るくはなかった。










「よっ。」
「よろしくね、高尾くん。」
「こちらこそ!」


公平なくじ引きの結果、俺は夏目さんとペアになった。
え?そりゃーもちろん高校生が考えるイベントだぜ?男女ペアに決まってんだろ。
夏目さんとペアだとわかった途端周りの男子達に羨ましいだの散々小言を言われた。んだよ、ペアになったらなったで「どうしたらいい!?」とか言ってオドオドすんだろ。


「夏目さん、本当は来たくなかった?」
「え……」
「誘われた時困ってたからさ。本気で嫌なら今からでもやめとく?」


スタートして二人きりになったところで早速聞いてみた。
実際に肝試しに来てからも、夏目さんはずっと浮かない顔をしていた。笑顔が引きつってるっつーか、顔色が悪いっつーか。
誘われたからって必ず参加しなきゃいけないわけでもないし、無理に参加する必要もないし。


「ありがとう。」


聞いてみたら一瞬驚いて、それからはにかんでお礼を言われた。


「こういうの、ちょっと苦手なんだけど……でも嬉しいの。誘ってもらえて。こうやってみんなでワイワイする時、どうしたらいいかわからなくて。」


続いて出てきた言葉は紛れもなく夏目さんの本心だと思う。
クールだとか大人っぽいとか言われてるけど、話してみればなんてことはない、普通の可愛い女の子だ。こういう面をもっと他のクラスメイトに見せていけばいいのにな。


「でも今日は高尾くんもいるし、来て良かったと思ってるよ。」


それから最近思うのは、夏目さんって気恥ずかしいことサラっと言っちゃうんだよなァ。
俺が考察するに、今まであまり友達との交流が無かったから少し感覚がズレてるんだと思う。こんなこと言われたらフツーの男の子は勘違いしちゃうって。
そう、だから勘違いするな俺。夏目さんはただ純粋に、友達として言ってるだけだ俺。落ち着け俺。


「そんじゃ、さっさと行くか!」
「う、うん。」


つっても怖いってのは本当みたいだ。暗闇の先をキョロキョロと用心深く見渡している。可愛いなー。
肝試しのルートは1階からスタートして5階の音楽室にある文庫本を持って帰ってくるって感じ。普通に行けば10分くらいでいけっかな。


「怖いのは苦手な感じ?」
「えっと……うん、そうかな…。」
「じゃー俺が怖さも吹き飛ぶ面白い話してあげる!」


この10分間、夏目さんにとって楽しい記憶として残してあげたい。













「高尾くんのおかげですごく楽しかった。本当にありがとう。」


結果、夏目さんには楽しんでもらえたようだけど……何この笑顔超可愛いんですけど。
今まで向けられてきた笑顔とは確実に違う、自然な笑顔。
そう、俺はこの笑顔が見たかったんだ。
…それにしても、想像以上の破壊力に俺の心臓はバクバクだ。




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