krk | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -



03


「あ、夏目さんだ。」
「えっマジ?」


昼休み、購買帰りの廊下を歩いているとき。
前の男子二人の言葉に俺は立ち止った。窓の外を見ると夏目さんがいた。


「やっぱ美人だよなー。」
「な!でもちょっと変わってるらしいぜ。」
「どこが?」
「独り言言ったり、妙に挙動不審だったり……何か見えてんじゃねーかってウワサ。」
「マジ?幽霊とか?」
「さあ。ま、美人は遠目に見てるのが一番ってことだな。」


男子生徒が言う通り、今の夏目さんは正直挙動不審に見える。中庭で一人、キョロキョロと辺りを見回している。
立ち止まって見ていると、夏目さんはしゃがみこんで何かを探しているらしいことがわかった。


「………」














「何か探してんの?」
「!?」


気になって中庭まで下りてきてみると、やっぱり夏目さんはしゃがみこんで何かを探していた。
声をかけるとビクリと肩を揺らして振り返る。見られたくないところを見られてしまった……そんな表情だった。


「高尾くん……」
「上から見えてさ。探し物?」
「う、うん……。」
「じゃあ俺も手伝うよ。」
「え!? い、いいの、大したものじゃないから……」
「嘘。」
「!」
「そんなに手がボロボロになるまで探すものが、大切じゃないわけねーじゃん。」
「……」


あまり関わってほしくなさそうな雰囲気は感じ取れたけど知らんぷり。だって、こんなに一生懸命な姿見たら黙って見てられねーじゃん。


「手伝わせてよ。俺、怪我のことけっこー気にしてんだぜ?お詫びさせてよ。」
「だからアレは…!」
「あーはいはい、俺のせいじゃない、っしょ?それでもぶつかったのは事実だし、このままじゃ俺がやだ。だから手伝う。OK?」
「……ありがとう。」


半ば無理矢理手伝うことを了承してもらった。
あの自転車の一件があってから夏目さんを見るようになって、なんつーかほっとけないんだよなあ。


「で、探し物は何?」
「このくらいの……ガラス玉なんだけど……」
「ガラス玉?何でまた?」
「私の……知り合いが、それをすごく大切にしてて……」
「その知り合いって友達?」
「……友達、ではないかな…。」
「……」


曖昧な答え方がなんか引っかかる。友達でもない相手の探しものをこんな必死に探すもんか?けどやっぱりこれも深く追求したらマズいんだろう。しつこく聞くことはしねェさ。


「足の調子は?包帯とれたね。」
「大丈夫。私これでもけっこう丈夫なんだよ。」
「そーいや足速いもんね。何か部活やってんの?」
「ううん、何も。」
「……」


自分で言うのもなんだけど、コミュニケーション能力には自信がある。初対面の人とも10分くらいなら話題はつきない。
それでも夏目さんとはあまり会話が続かない。うーん、自分のことはあんまり話したくないのかな。


「俺はさ、バスケやってんだよね。」
「! バスケ?」


そーいう時は自分の話。まー俺の話なんてバスケくらいしかねーけど。女の子にしてみりゃ退屈かもな。
…と思ったけど、思ったより食いついてきた。だって、さっきまで下を向いていた目線がしっかり俺に向いた。
夏目さんにこうも真っ直ぐ見られるのって初めてかもしれない。思わず手が止まってしまった。


「そ。中学からずっと。」
「ここ……確かバスケ部強いんだよね?」
「そーそー。一応俺、レギュラーなんですよ。」
「一年生で?すごいね。」
「いやまーそれがさー、同じ一年にとんでもねー奴がいてさー。」


夏目さんがちゃんと聞いてくれてるのが嬉しくて、俺はバカみたいに喋った。
時々相槌をうったり聞き返してくれる。こうして話していると本当に普通の女の子だ。












「おっ、あった!これじゃね?」
「! 多分、そうだと思う。」


探すこと約20分。やっとそれらしき物が見つかった。


「ほい、任務完了!」
「……ありがとう、高尾くん。」
「!」


手渡すと、夏目さんはそれを大切そうに受け取った。
その知り合いは友達じゃなくても、少なくとも夏目さんにとって大切な存在なんじゃないかな。夏目さんの表情を見てそう思った。





next≫≫
≪≪prev