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黄の宣戦布告


100対98―――…誠凛と海常の練習試合はブザービーターと同時に、誠凛が勝利をおさめた。


「うおっ…しゃあぁあーーー!!」
「………」


その瞬間にガッツポーズで心の底から叫ぶ大我と嬉しそうに微笑むテツくんを見て、ああ、やっぱりマネージャーをやって良かったなと思った。












「「「ごちそうさまでしたー!!」」」


試合を終えた私たちは祝勝会代わりにステーキを食べた。
しかしただのステーキではない。4キロのスーパー盛盛ステーキである。とんでもない量であるかわりに、これを30分以内に食べ切れたら無料になるという、お金のない私たち向けのキャンペーンだった。
常識離れしたお肉も大我にかかればあっという間に胃の中に納まっていき、ここでも私達は勝利をおさめた。


「しかし名前ちゃんも見かけによらず食べるんだね。」
「いつも食べてるわけじゃないんですけど、食べ放題にはよく行きます。」


私の分のお肉は注文されてなかったんだけど、テツくんが10分の1食べたところでギブしたので私がその残りをもらった。
だってお腹空いてたんだもん。目の前にお肉があれば、そりゃあ食欲をそそられるじゃないですか。と言っても残り20分で食べられるわけもなく、残り5分の1くらいは先輩たちと同様大我に食べてもらった。それでも女子にしては多い方だと言われた。


「じゃ帰ろっか!全員いる?」
「…あれ?黒子は?」
「いつものことだろー。どうせまた最後尾とかに……」
「テツくんならギブしてすぐ出ていきましたよ。」
「え?」










というわけで、みんなで手分けしてテツくんを捜すことになりました。一応都外まで来てるし、全員揃わないと帰れないということで。
こんなことになるんだったらテツくんが出て行く時引き止めておくんだった。
いくら中学の時からの付き合いだからって、街中でテツくんを見つけるのなんて難易度高すぎでしょ…。


「つえー!」
「何だこいつら…!」


適当に歩き回ること約10分。何やら脇の公園が騒がしい。フェンスの向こう側をよく見るとなんだかカラフルな頭の人達。水色に赤に黄色に………うん、これって明らかにテツくんと大我と黄瀬っちだよね。
3人は同じチームでバスケをやっていて……相手は見知らぬ男子5人。そしてそれを脇目に見る男子が更に3人。相手がやけにチャラいのを見て、なんとなく発端が想像できてしまった。
まったくさっきまで散々バスケをやっていたっていうのに……みんな揃ってバスケバカなんだから。


「黒子っちナイスパス!」


テツくんからパスをもらって笑顔になる黄瀬っち。
黄瀬っちは今日、試合に負けた瞬間涙を見せた。最後の挨拶にも顔を出さなかったし……相当悔しかったんだろうね。
中学2年、バスケを始めたばかりの黄瀬っちは本当に楽しそうだった。毎日青峰と1on1をしたり、朝も部活後も暇があればバスケをしていて。
だけど3年になって、帝光中学……キセキの世代にかなう相手がいなくなってくると、黄瀬っちのバスケに対する態度は変わっていった。それは他の4人も同じで、私はそんな彼らのバスケを見るのが嫌になった。
だから今日、ただ勝ちたくて、純粋にバスケに夢中になる黄瀬っちを見ることができて良かった。シバいてくれる先輩もいるみたいだし、黄瀬っちはこれから先大丈夫だろう。


「……さて。」


もうすぐ終わる頃だろうし、3人にジュースでも買ってきてあげますかね。
あ、あとテツくん見つけたってリコさんに報告しないと。













「お疲れ様。」
「!!」
「テツくんと大我も。」
「ありがとうございます。」
「サンキュー。」


試合がひと段落ついたところを見計らってジュースを手に声をかけた。
まったく、全力の試合終えた後によくもこう動けるよね。信じられない。


「っ、名前っち…!」
「?」
「今日の試合、勝てなかったけど……」
「かっこよかったよ。」
「!?」
「うん、かっこよかった。」


確かに試合には負けた。全力でぶつかって敵わなくて、涙を流して。自分ではかっこ悪いと思ってるかもしれない。だけど中学の頃の手を抜いて適当にこなしてきた試合と比べたら、私は今日の黄瀬っちの方が断然かっこよかったと思う。


「あーーもう……どんだけ俺を惚れさせれば気が済むんスか…!」
「え?」


あ……黄瀬っちに対して「かっこいい」はちょっと軽率だったかな。たまには褒めてあげようと思っただけなんだけど…。


「火神っち!試合には負けたけど、次は絶対勝つんで!」
「おう。」
「そんで、名前っちのことも絶対負けないんで!」
「は?」
「名前っち今度デートして欲しいっス!」
「は?」
「またメールするから!じゃ!」


最後に大我によくわからない宣戦布告をして、黄瀬っちは嵐のように去っていった。






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