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黒の観察


「今日からマネージャーになりました、名字名前です。よろしくお願いします。」








名字さんがマネージャーになりました。
名字さんには中学の時もマネージャーをやってもらってお世話になりました。
同じ高校だということは入学してから知ったんですが、そうとわかればまたマネージャーをやってもらいたくて、少し強引でしたが勝負を持ちかけて勝つことができました。
こうして晴れて名字さんは誠凛高校バスケ部のマネージャーになってくれました。


名字さんをマネージャーに誘った時、火神くんに何故わざわざ名字さんにマネージャーを頼むのか、聞かれたことがあります。キセキの世代のように、名字さんにも何か特技があるのかと。
名字さんは桃井さんのように情報収集力に長けているとか、そういった能力はありません。
それでも僕は名字さんにマネージャーをやってもらって本当に良かったと思っているし、名字さんがいたからこそ頑張れたとも思える。
言葉にして表現するのは難しいんですけど、とにかく名字さんがいるともっとバスケが楽しくなるんです。
能力的なことを言うなら、名字さんは仕事ができる。なんていったってあの赤司くんが認めた程ですから。


「名前ちゃん、この前渡した備品リストなんだけど……」
「はい、チェックしてあります。リコさんに渡せばいいですか?」
「うん!あーもう本当助かるわ!」
「マネージャーの仕事は全部私に任せて、リコさんはカントクに専念してください。」
「もう……本当いい子!黒子くんグッジョブ!!」


言われたことはもちろん、言われてないことも状況から察して実行してくれるからカントクも大助かりみたいです。
今まではマネージャーがやるべきことも全てカントクがやっていたらしいので、名字須藤さんが入ったことで大分カントクの負担が減ったんじゃないでしょうか。


「あれ、カントクは?」
「生徒会の用事で30分くらい抜けるそうですよ。」
「マジか。今日のメニュー、パス練削ってミニゲームやろうと思うんだけどどう思う?」
「いいと思いますよ。1年生もまだ入ったばかりですしね。」
「よし、じゃーそうする。サンキューな。」
「いえいえ。」


助かってるのは主将の日向先輩も同じようで、運営面で迷うことがあると名字さんの意見を重宝しているようです。
桃井さんの情報によると名字さんは小学生の時にミニバスで全国大会を経験しているらしくて、バスケの知識が十分にあります。運動神経もいいですし、僕もたまにパス練を手伝ってもらうことがあります。


「伊月先輩、バッシュの紐解けてますよ。」
「お、ありがと……は!ヒモが解ける日もあるよね…!」
「10点。」
「よっしゃ!」
「100点満点で、ですよ。」
「厳しいなー名前ちゃん。」
「お笑いには妥協しないんで。」


それから、名字さんの長所といえばやはり人付き合いがうまいところですね。
まだ入部して1週間も経たないというのに、もう部員全員と打ち解けているようです。性別も年齢も関係なく分け隔てなく接することができるのってすごいことです。


「あ、水戸部先輩、タオル落としましたよ。」
「………」
「! いえいえそんな…!」
「………」
「えへへ、ドリンク作ってきますね!」


一言も喋らない水戸部先輩ともうまくコミュニケーションをとれているようです。
水戸部先輩に頭を撫でられると名字さんはすごく嬉しそうに笑いました。水戸部先輩は名字さんのお兄さんみたいなポジションですね。


「名前ちゃん見て見て!カニ!」
「はいはいテーピングで遊ばないでください。巻き直しますよ。」
「へへっサンキュー!」


小金井先輩は……年齢的にはお兄さんなんですけど、この様子を見る限り弟です。


「大我、今のダンクすごくかっこよかった!」
「そーか?」
「うん!はいタオル。」
「おう、いつもわりーな。」
「いいえー!」


そして火神くんにいたっては……何ですかこれ。カップルですか。いや違いますけど。そんなの認めませんけど。
名字さん本人から聞いたことですが、火神くんは名字さんのタイプど真ん中らしいです。
名字さんのタイプというと、確かクールだけど中はアツくて、眉毛がキリっとしてて髭が似合う人……一応、当てはまってるんですかね…?髭はよくわかりませんが名字さん的に火神くんの眉毛はオッケーなんですね。
イケメンランキングで中学時代不動の1位だった緑間くんを抜いたらしいですよ。緑間くんが聞いたら悔しがりそうです。
そして火神くんの方も名字さんのことを可愛いと頬を赤らめて言っていました。つまり、お互いに好みのタイプだっていうことですね。だからといってどうこうなるわけではないようですが……いつの間にかお互いに名前呼びする程仲良くなっていたのには驚きました。
名字さんから名前呼びされるのは僕の特権だったんですけど……更に呼び捨てだなんて、少し悔しいですね。他のみんなは苗字だったりあだ名だったりですから、これまた悔しがりそうです。


「なあ黒子……」
「……何ですか?」
「黒子はもしかして名字さんのこと好きだったり……?」
「……違います。」


名字さんのことを見つめていたら誤解を招いてしまったようです。
もちろん名字さんのことは好きです。やけに仲が良い火神くんに対して嫉妬してることも事実です。でも僕の場合、これは恋愛感情ではない。


「名字さんって帝光中のマネージャーだったんだよな?」
「やっぱ誰かと付き合ってたりしたの?」
「……告白はけっこうされてましたね。」
「やっぱ!?」
「キセキの世代とか!?」
「さあ…。みんなの真意は僕にはわかりませんが……名字さんは大切な人です。」


友達という言葉では物足りない。仲間という表現が一番近いかもしれないけど、やっぱり少し違う。
僕にとって名字さんは、大切な人です。





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