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バスケ部との勝負


翌日、名前のことは黒子によって誠凛高校バスケ部のメンバーに伝えられていた。


「確かに今はカントクの負担が大きいからな……マネージャーがいるに越したことはない。」
「もちろん大歓迎よ。黒子くん、勧誘は任せていい?」
「はい。」


しかし火神にはわからなかった。プレーヤーならまだしも、いくら帝光中学のバスケ部にいたといっても名前はマネージャーだ。正直黒子が何故ここまで彼女に固執するのか、火神には理由がわからなかった。キセキの世代のように、何か特別な特技を持っていたりするのだろうか。
そのことについて黒子に聞いてみると、彼ははにかんでこう答えたのだった。


「確かに仕事はできる人です。でも一番の理由は……名字さんがいるとバスケがもっと楽しくなるんです。」











勝負のルールは中学の時と同様、昼休みの30分間、1年バスケ部員5人から逃げ切れば名前の勝ち。誰か一人にでも捕まったら負けで、バスケ部に入部することになる。
バスケ部一年生の顔と名前は覚えた。もう中学の時のように一人忘れていたなんていう失態はありえない。いくら黒子の存在感が薄いと言っても、流石に3年の付き合いだから慣れてきたはずだ。
あと注意すべきなのは体格の良い火神くらいだが……体格が良いということはつまり、欺きやすい。
名前は勝利のイメージを胸に立ち上がった。


「いたぞ!」


教室から出た瞬間、名前を出迎えたのは降旗、福田、河原の3人だった。
名前は3人が構えている方とは逆に走り出し、階段を下っていった。
いくら高校男子と言っても競争の舞台は学校。しかも昼休みとなれば、当然多くの生徒が行き交う。そんな廊下で全力疾走なんてできないのはお互い様で、むしろ体格が小柄な分名前の方が素早く動けるというのが事実だった。
一階の渡り廊下を走りながら振り向いて、ちゃんとついてきてるのを確認する。前方も確認したところで名前はその場に立ち止まった。


「!?」
「なんだ、もう諦めたのか?」
「よし、捕まえるぞ!」


3人が名前との距離を縮めるが、その距離が0になる前に名前は右に逃げた。もちろん3人もそれに対応して切り返す。しかし、その後を追うことはできなかった。何故ならば前から後ろから、すごい人波が押し寄せてきて名前とは逆方向に押し流されてしまったからだ。
その先にあるのは購買。昼休みに突入したばかりのこの時間は購買戦争勃発の瞬間だった。イベリコ豚カツサンド三大珍味のせが発売される27日より大分マシではあるが、それでもその半分の生徒が集まる。
押し寄せる人波に勝てる術もなく、降旗、福田、河原の3人は購買の方まで流されていってしまった。


「よし!」


これで一気に3人が片付いた。名前はガッツポーズをして中庭を走る。
この後は人目につかない場所に隠れてやり過ごそうと考えていたのだが、目の前に大きな体が立ちはだかった。


「黒子の言った通りだぜ。」
「!」


向かう先に待ち構えていたのは火神だった。口ぶりからして黒子からアドバイスをもらったのだろう。
今から折り返しても追いつかれるのがオチだし、戻ったところで購買の人の波だ。したがって、進む先は一つだけ。


「………」
「! 俺と1on1するってのか…?」


中学と比べたら高校男子と女子の体力差は明らかだが、体格が違う分一度だけなら抜けると名前は考えていた。
正面から突っ込み、直前で重心を下げれば背の高い火神には一瞬名前が消えたように見えるはず。その隙をついて横を通り抜ければ、あとは全力疾走するだけ。


「…ッ!?」
「あっ…!」


確かに一度、抜いたかのように見えた。事実名前を捕まえようとした火神の手は空気を掴んだだけだった。しかし火神はそこから切り替えして反対の手で名前の服の端を掴んだのだ。
逃げ切れたと確信していた名前は思わぬ重力にバランスをくずし、そのまま正面へ倒れこむ。


「捕まえました、名字さん。」
「テツくん!?」


多少の擦り傷を覚悟した名前だが、地面に倒れこむ前にいつの間にか現れた黒子に受け止められていた。


「火神くん、いくら勝負でも女の子を転ばせるのはどうかと思います。」
「わ、悪ィ!」
「まあ、ほぼ計算通りでしたけど。」
「なっ……」


ぼそりと呟いた黒子の発言に名前は背筋が凍った。つまり、黒子は元から火神を抜いた後を狙っていたのだ。


「名字さん、約束は約束です。マネージャー、よろしくお願いします。」


こうして名前は高校でもバスケ部のマネージャーをやることになった。





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