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紫の肩車


今日はいつもよりHRが早く終わって、部活一番乗りです!
同じクラスの青峰は宿題出さなかったとかで先生に捕まっている。まあ自業自得だ。
うーん……誰もいない体育館ってなんかいいな。貸切りしてるみたい。


「………」


ふと見上げるとバスケットゴール。私が小学生の時に使っていたゴールよりも高くて、ジャンプしてやっとネットに届くくらいかな。
チーム内でも背の高い方ではなかった私はダンクシュートなんてものとは無縁で、テレビや漫画に憧れを抱いていたものだ。
それがここの男子バスケ部員ときたらほいほいとダンクを決めてくれるからなんていうか……ちょっと悔しかったよね。所詮男と女じゃあ体の造りが違うんだ。それを恨むつもりはないけど、やっぱり羨ましい。


「ほっ……んっ…!」


誰もいないということで、今の私でどこまで届くかジャンプして確かめたところ、やっぱりネットに届くくらいだった。リングなんてはるか彼方、すごく遠くに感じた。
……いいなあ、男の子は。


「名前ちん何してんの〜?」
「!?」


ぎゃあああああ見られたあああああ!!
突如体育館に響いた間延びした声は妖精と名高い癒し系むっくん。
ちょ、本気で恥ずかしいんだけど。だってここには私一人しかいないと思ってたから。いくら仲良しのむっくんでも恥ずかしいものは恥ずかしい。あ、でもこれが青峰とか赤司くんとかよりは断然マシだわ。


「あ、いや、届くかなーって……」
「んー……名前ちんちっこいから無理じゃない?」
「あはははそうだよねー。いいなあ、むっくんは大きくて。」
「……」


ほら、むっくんは馬鹿にするとかしないもん。さすがむっくんマジ天使。青峰なら間違いなく馬鹿にしてきた。赤司くんはこれをネタに脅迫ぐらいしてきそうだ。見られたのがむっくんで本当に良かった。


「名前ちん。」
「ん?………んん?」


ぼーっとしていたむっくんが急に私の前でしゃがんだ。
わー、むっくんを見下ろすとかなかなかない状況……じゃなくて、何で?


「肩車してあげるー。」
「へっ!?」
「そしたら届くでしょ?」
「……!」


つまり、ちっさい私のためにむっくんが土台になってくれると……そういうこと?
ああもうむっくんは優しい子だなあ!そして可愛いなあ!正直ちょっと恥ずかしいけど、折角のむっくんの厚意を無駄にはできない。


「えっと……じゃあ、失礼しまーす。」
「よーいしょっと。」
「ひゃっ!?」


むっくんが立ち上がると思ったより衝撃を感じて、私は思わずむっくんの頭にしがみついてしまった。そして安定してから見下ろすと……地面が遠い!


「わあああすごい!すごいよむっくん!」
「何がー?」
「高い!すごい!」
「そーだねー。今名前ちん俺より高いかんね。」


むっくんより高いとか……つまり、今の私の視界は約2メートルからの景色を映してるってわけですね。こんな経験おそらくこれから先ないだろうから、今のうちに満喫しとこ。


「ねえむっくん、ゴールのとこ行って!」
「りょうかーい。」


ってことで、念願のダンクをやってやりますよ、ええ。
ゴールのとこまで行ってもらうと、手を伸ばせばすぐ掴める位置にリングがあった。おおおと感動しながら、そのリングをグッと掴んでダンクの感触を味わう。


「見て見てむっくん!ダンクー!」
「……楽しそうだねー名前ちん。」
「うん!だってリング掴んだのなんて初めてだもん!」
「ふーん。」


私が上ではしゃいでいる間もサクサクとまいう棒をかじる音が聞こえる。うん、見てないよね。いいけどね。
何はともあれむっくんありがとう。無駄に高身長そろってるバスケ部でもこんなこと頼めるのむっくんしかいないよ。青峰はセクハラしてきそうだし、黄瀬っちはいろいろと煩くなりそうだし、緑間くんはイケメンすぎてこっちが緊張しちゃうし、赤司くんじゃちょっと物足りな……


「楽しそうだね、二人とも。」
「ひっ!?」





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