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黒と相合傘


6月……梅雨の季節ですね。
この時期は朝方晴れていても夕方から振り出すなんてことはよくある。だから天気予報のチェックを毎日するか、折り畳み傘を常備しておくと安心です。
今日の天気は16時……つまり下校時間くらいから雨。ちなみに部活はない。しっかり天気予報を確認してきた勝ち組の私は人知れずドヤ顔で靴箱に向かっていた。そして上履きからスニーカーに履き替えたところで気がついた。


「私の傘が……無い……。」


そう、私の傘はパクられていた。
雨……特に朝は晴れていたのに帰る頃になって雨が降る日はこういった事件が多発する。
私の傘はこの前コンビニで買った315円のビニール傘。名前も特に書いていない。恰好の餌食だったわけだ。
犯人に対して多少の苛立ちは感じるけど、借りパクする気持ちもわからなくもない。それに過ぎたことを嘆いていても仕方ない。今は傘なしでこの雨をどうやって切り抜けるかが問題だ。
止むまで待つか……でも今日は撮り溜めしておいたドラマを見るという使命があるから、できるだけ早く帰りたい。
濡れて帰るか……私の家は学校から徒歩20分。家に着く頃には体重3割り増しになるくらい濡れそう。
こうなったら私も借りパク……いやいやいやダメだ。それはいかん。


「名字さん。」
「うわっ、テツくんいつの間に!?」
「結構前からですけど……」


うんうん悩んでいたら私の正面にテツくんが立っていた。テツくんっていつもいきなり現れるから吃驚するわ。


「傘、無いんですか?」
「うん、パクられたみたい。」


テツくんが手に持つ黒い傘を羨望の目で見つめながら答えた。
ちくしょう、何でよりによって私の傘が……ああ、ビニ傘で名前書いてないからか。
こうなったらちゃんとした傘買おうかな?いやでも結構いいお値段するんだよね、傘って。安物もあるにはあるけど大体柄が派手だからなあ。私花柄とか水玉の傘は持ちたくない。


「じゃあ家まで送ります。入ってください。」
「……え?」


今テツくんはサラリと何と言いましたか。
私の聞き間違いじゃなければ「家まで送る」とか、相合傘を示唆するような言葉が聞こえたんだけど……。
自分の傘をさして私を見つめるテツくん。私がそこに入ってもいいと言うのですか。


「……帰らないんですか?」
「いや、帰りたいのは山々なんだけど……」
「じゃあどうぞ。」
「入っていいの?」
「もちろんです。風邪でも引いたら大変です。」


こういうことをサラリと言ってのけちゃうテツくんに「天然タラシ」の称号をあげましょう。まったくけしからん!
ここはお言葉に甘えて相合傘してもらおうかな。これさつきに見られたら怒られるな。でもまあドラマのためだからしょうがない。


「お願いします!」
「はい。」









「テツくん肩濡れてる。もっとそっち傾けてよ。」
「そしたら名字さんが濡れてしまいます。」
「いーの肩くらい!」
「僕も肩くらい濡れても平気です。だから僕が濡れます。」
「テツくん…(きゅん)」






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