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黄とお喋り

「じゃあ名前、お願いね!」
「はいよー。」


隣のクラスの澪りんは何回も念を押して去っていった。
私の手にはさっき購買で買った明太子パンと、黄色い布で包まれたお弁当。うん、恋する女の子は可愛いなあ。













「いやー、助かったっス!」
「どういたしまして。」


えーっと……説明すると、購買で今日のお昼を手に入れて廊下を歩いていたら黄瀬っちが走ってきて「匿ってほしいっス」って言って背後の空き教室に入って、間もなくして去年同じクラスだった澪りんが小走りで来て「黄瀬くん見なかった」と聞かれて私は全てを察して「知らないよ」と言ったら同じクラスだったよしみか何かは知らないけど澪りんは私にお弁当を託して「黄瀬くんに渡して欲しい」と言ってきたのだ。
可愛い女の子の頼みは断れない私はつい二つ返事でOKしてしまい、今に至る。


「お弁当、何で受け取ってあげないの?」
「いやー、今日はもう別の女の子からもらっちゃったんスよ。断るのが申し訳なくて。」


今の台詞にイラっとしたのはきっと私だけではないだろう。
相手が女の私だからまだよかったものの、男子の前でそんなこと言えば一発もらっても文句は言えない。悪気が無いからタチが悪いんだよねえ。黄瀬っち程KYな人間を私は未だ嘗て見たことがない。


「渡しといてって頼まれちゃったから、ちゃんと食べてよ。」
「モデルとして太るわけにはいかないんスよ〜。あ、名前っち食べていっスよ!」
「私も女子として太るわけにはいかないんだけど。今じゃなくても部活前とか部活後にでも食べて。折角作ってくれたんだから。」
「……わかったっス。」



私の持論だが、恋をすると女の子は可愛くなる。
可愛い澪りんが黄瀬っちのために早起きして一生懸命作ったお弁当を本人が食べないなんて許さん。


「折角だし、一緒に食べよーっス!」
「うん、いーよ。」
「いいんスか!?」
「だって思わぬタイムロスくらったし。黄瀬っちもまた出歩くと捕まりそうでしょ?」
「名前っち…!」


今更教室に戻ったところで友達は半分くらい食べちゃって私が取り残されることは目に見えてるから、今日はここで黄瀬っちと食べよう。


「名前っちは自分でお弁当作ったりしないんスか?料理上手なんでしょ?」
「学生の朝は忙しいの。恋する乙女みたいにお弁当のために早起きはできない。」
「えー…じゃあ名前っちは恋してないんスか?」
「……黄瀬っちの話題って女の子みたいだね。」
「まー女の子と話すこと多いっスからねー。」
「はい出た嫌味ー。」
「え!?」


この男は本当に自覚無しで嫌味をサラっと言っちゃうんだなあ。
まあイケメンモデルとなると必然的に女の子に絡まれやすいだろうし、しょうがないのかな。
聞けば黄瀬っちがバスケ部に入ったのは私より少し前……二年生になってかららしいじゃん。
私はバスケ部に入る前の黄瀬っちを知らないけど、……正直、つまらなかったんじゃないかな。ファンの女の子と話してる黄瀬っちを見るとそんなことを思う。
こうやって話題が女の子向けになっちゃうのも、女の子との接点が多かったから無意識なんだろうな。


「そういえば昨日、青峰からボールとってたね。」
「そーなんスよ!まあすぐ取り返されたんスけど……でも、あの動きは自分でもなかなかだと思ったんスよ!!」


だってほら、バスケの話をしてる方が何倍も楽しそう。
目標があって、仲間と一緒にバスケをしてる黄瀬っちは雑誌の表紙を飾る黄瀬っちより断然かっこいいと思うんだよね、私は。
私だって強制入部とはいえバスケ部の一員なんだから、黄瀬っちには自然体で接してほしい。


「青峰っちに勝てる日もそう遠くないっスよ!!」
「ふふ、楽しみだねえ。」
「!」


そうやって意気込む黄瀬っちが可愛くて思わず笑ってしまったら、黄瀬っちは急に黙ってしまった。


「なんか……名前っち、ズルいっス…。」
「は?何で?」





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