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赤の呼び出し

「名前、付き合ってくれ。」


昼休み。赤司くんの一言で私はもちろん、クラス中が凍りついた。










「赤司くんまじ何なのバカなの?」
「何がだ?」


一応言っておくが、さっきの「付き合ってくれ」に変な意味はない。「ちょっと部室の備品のチェックをしたいから一緒に部室まで」付き合ってくれという意味だ。言葉が足りなさすぎる。
私は赤司くんという人間を少しは理解してるつもりだから鳥肌がたったけど、クラスのみんなは大いに色めきたっていた。みんなしてそわそわして私と赤司くんを見つめてくるもんだから私はわざとらしく大声で「はいはいどこまで付き合えばいいの」と言って教室を出て来た。
まったく、赤司くんも顔だけはいいんだから安易に紛らわしい発言をするのはやめていただきたい。ニヤニヤしてるのを見る限り、絶対わざとだ。


「あー赤司くんのせいでいじめられたら私もう学校来れない。」
「いじめられるようなタイプじゃあないだろ?」
「女子中学生は怖いの!」
「名前ならうまくかわしそうだけどな。」
「……」


まあ、かわせる自信はなくもない。けどそれを赤司くんが確信を持って言うことが……なんか嫌だ。
赤司くんは洞察力に優れている。例えば表情の変化がわかりにくいテツくんの調子が悪いこととかもすぐ見抜いちゃう。そしてそうやって感じ取った情報を元に、的確な判断・指示ができる。だからこそキャプテンを任されてるんだと思う。実際にコートの中での彼の司令塔っぷりは素晴らしい。


「名前は俺と似たタイプだからね。」
「………」


ものすごく心外だ。
私がいつ「勝利は基礎代謝のようなもの」だとか「逆らったらペナルティ」だとかいう態度を取りましたか。いいえ、取っていません。


「心外だっていう顔だな。」
「ええそりゃもう。」
「周りの人間のタイプを瞬時に判断し、それに適応した態度で接する。」
「……」
「そしてその中での自分の立ち位置をすぐに理解できる。俺の場合はその立ち位置が統べる側で、名前の場合は支える側だった……それだけの違いだ。」


なんとなく赤司くんの言いたいことはわかったけど、それでもやっぱり賦に落ちない。
確かに私はどんなタイプの人とでもそれなりにうまくやっていく自信はある。けど赤司くんみたいに複雑な計算とか打算はしていないつもりだ。赤司くんの言い方だと私がすごく計算高い女みたいじゃないか。失礼な。


「そういえば、私のこと名前で呼んでるね。」
「こっちの方が親密な感じがするだろ?」
「わーい嬉しいなー。」
「まったく……いい性格してるよ。」
「赤司くんに言われたくない。」


別に苗字で呼ばれようが名前で呼ばれようが私はどっちでもいいんだけど。
どうせ赤司くんはみんなの勘違いを誘うためにってとこなんだろうな。いい性格してるのはどっちだ。


「あ、そうだ赤司くん。部室じゃなくて体育館なんだけど、上の窓が1ヶ所開かないんだよね。ついでに報告しといてくれない?」
「そうなのか?」
「うん。これから暑くなるし、窓が開かないと不便だからさ。」
「……名前をマネージャーにして本当に良かったと思ってるよ。」
「な、何急に……」
「勝利に必要な要素はいくつかあるんだ。資質のある選手、それを統べる者、スタイルに合った練習、的確な情報……そして、選手が練習に集中できる環境だ。名前が入ってくれたおかげで全て揃った。俺達が負けることは、これから無い。」
「……赤司くんは一回ボロ負けすればいいのに。」
「ありえないな。」
「即答ですか。」
「ああ、でも名前には借りを返さなきゃな。」


赤司くんは私の入部をかけた鬼ごっこの時に、私に抜かされたことを相当根に持っているらしい。状況がバスケの1on1と似ていたから尚更なんだろう。鬼ごっこが終わった後も度々勝負をけしかけてくる。
でもあれは私が小柄で、相手が大柄だからこそできるもので、赤司くんもそれに気づいてる。次やったら確実に負けることは目に見えてるわけだ。私だって負けるとわかってる勝負には挑まないし何より疲れるし。
何度も断るうちに、赤司くんはそれに限らず何かにつけて勝負を挑んでくるようになったのだ。


「今度ゲームセンターにでも行くか。勝負のために。」
「………」


ほらきた。
でも太鼓の達人とかダンレボとかやる赤司くん……ちょっと見てみたい気もする。







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