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緑のラッキーアイテム


今日のかに座はおは朝占いで12位……つまり最下位だった。しかし案ずることは無い。何故なら俺は人事を尽くしているからだ。こうやってしっかりラッキーアイテムのキャラもののストラップを鞄に……


「!?」












今日のかに座はおは朝占いで最下位。
ラッキーアイテムであるキャラもののストラップは鞄につけていたはずだったが……気づいたらチェーンが外れてなくなってしまっていた。そのせいで今日は英語の教科書は忘れるし消しゴムはなくすし黄瀬は煩いし……最悪だったのだよ…。
これからの部活も何か良くないことが待っていそうで非常に足取りは重いのだが、行かなければならない。


「あ、緑間くんだー。」
「……名字か。」


間延びした声で呼ばれたから振り向くと、紙パックのジュースを飲む名字がいた。
名字はこの前新しく入ったマネージャーだ。今更中途半端なマネージャーなんて邪魔になるだけだと思っていたが、正直名字の働きっぷりは見事なものなのだよ。他の女子のように変な下心も全く無いようだし、名字が来てから部活の士気も上がった気がする。


「見て見て、ジュースもう一本当たったの。」
「……名字、星座は?」
「え?おとめ座だけど。」


なるほど。今日のおとめ座はおは朝占いで1位。
そしてラッキーアイテムは果汁100%のジュース……まさに今名字が手にしているものだ。まったく人事を尽くそうとしていない人間がこうも恵まれているというのに……


「緑間くん今日テンション低いねー。」
「おは朝占いで12位だったのだよ。」
「あー、はいはい。ラッキーアイテムは?いつもドヤ顔で持ってるじゃん。」
「落としてしまったのだよ……」
「あらら。」


名字は女のクセして占いとかそういった類のものに興味が無いらしい。
俺のラッキーアイテムを小バカにする態度は頭に来るが、今は怒る気もしないのだよ…。


「ちなみに今日のラッキーアイテム何だったの?」
「キャラもののストラップだ。」
「え?じゃあもしかしてこれ、緑間くんの?」
「……!!」


名字がポケットから出したのはまさしく俺が探しているものだった。
こんな広い校舎で、こんなに人がいる中、名字が見つけて拾ってくれるとは…!運はまだ俺を見放してなどいなかった。やはり人事を尽くしていれば心配することなどないのだ。


「そうなのだよ!名字、これをどこで?」
「さっき渡り廊下で。てか、キャラもののストラップで緑間くんがバ○ボンチョイスとか……爆笑していい?」
「し、仕方ないだろう、これしかなかったのだから!」
「あはは、まー拾っといてよかったよー。感謝して。」
「ああ……!!」
「どしたの?」


一見解決したかのように見える今回の事件………俺はここで重大なことに気づいてしまったのだよ…!


「チェーンは……チェーンはついていなかったか…!?」
「チェーン?私が拾った時にはそいつだけだったよ。」
「チェーンがなければこいつはただの人形……ストラップではないのだよ…。」
「……ああ、なるほど。(めんどくせー。)」


『ストラップ』とは鞄や携帯などに付けるものをそう呼ぶ。持つものではない。
チェーンがなくなった今、こいつはただのバ○ボンの人形……ラッキーアイテムとしての効力は失ってしまったのだよ…。


「じゃあ、こいつあげる。」
「!」


名字がさっきとは逆のポケットから出したのは、くまのストラップ。
確か、最近女子に人気のキャラクターだ。脱力した感じが可愛いんだとか。まあ俺にはそんなことどうでもいいが。


「いいのか?」
「うん。黄瀬っちにもらったんだけどさ、私キャラもの好きじゃないから。」


なるほど。なんとなくその場面が思い浮かぶのだよ。
黄瀬には悪いが、名字本人が好きじゃないと言ってるのだからありがたく借りるとしよう。


「すまない、助かったのだよ。」
「いいえー。イケメンの笑顔が見れたので良しとします。」
「なっ、何を言ってるのだよ…!」
「私的に黄瀬っちより緑間くんの方がイケメンだと思うんだよねー。」
「黙れ!」






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