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赤の評価

「赤司くんって友達少なそう。」


俺に向かってかなり失礼なことを平然と言ってのけたのは新しく入ったマネージャー、名字名前。数ある条件を全てクリアして選ばれた者だ。
実際にその能力は本物で、運営面の雑務は俺が指示する前に大体できているし、選手のサポートも卒なくこなしている。
女子にありがちな男目当てという感じは一切なく、誰に対しても平等を貫く態度はなかなか好感を集めている。


「宿はここで決まりだな。」
「うん。絶対みんな卓球台に釣られたよね。」
「何で部活の合宿に行って卓球をやる必要があるんだ?」
「赤司くんは何ていうか……学生としての楽しみがズレてるよね。」


ちなみに今は部活が始まる前の時間を使って今度の合宿の打ち合わせ中だ。
このことに関しても名字の仕事ぶりはなかなかのものだった。俺が言う前に宿の候補は絞ってあったし、それぞれのメリットデメリットを表記した資料も作成済みだった。


「赤司くんって休日何してんの?」
「何でそんなことを聞くんだ?」
「だって想像できないもん。ゲームとかしたことある?」
「ある。負けたことはない。」
「うっわ出たよ。」


勝利は俺にとって基礎代謝のようなもの……前に名字にそう言ったら、本気で引かれたのを覚えている。
勝利といえば、俺は一度だけ名字に負けている。名字の入部をかけての鬼ごっこをした時だ。廊下で1on1という状態の中、正面から突っ込んでくる名字。右に行かれても左に行かれても動ける準備はしていた。それにも関わらず、俺は一瞬にして名字を見失い、突破されてしまったのだ。
その後追いつき、もう一度勝負をしかけたが名字はそれに応じなかった。勝ち逃げしようなんて全くいい度胸じゃないか。
結局全体の勝負としてはバスケ部が勝って名字は入部することとなったが、負けっぱなしは性に合わない。
名字が入部した後にも1on1に誘ったが一切応じなかった。「どうせ負けるしめんどい」だそうだ。
確かにもう一度勝負したら今度は間違いなく俺が勝つ。何故なら須藤が消えた仕掛けはわかっているからだ。名字もそれがわかってるから二度目は勝負しなかったし、今も受けないんだろう。
しかし俺からしてみれば負けたままということになって非常に不快だ。だから俺は決めた。何かしらの勝負で名字に勝って、この負けを清算しようと。


「そういえば、何でバスケ部に入らなかったんだ?」
「え?入ってんじゃん。強制的に。」
「女子バスケ部だ。そこまで強くはないようだがな。」


桃井のデータによれば、名字は小学生の時にミニバスで全国大会を経験している。俺を抜いた時の動きもブランクがあるとは思えない程のいい動きだった。
帝光中学にも女子バスケ部はある。何故名字はそこに入らず、運動とは無縁の家庭部に所属していたのか。


「んー……恋と勉強に力を入れようと思いまして。」
「……」


嘘だな。短い付き合いだけどそれくらいわかる。
そんな見え透いた嘘に騙されるような俺ではないが……今はまだはぐらかされておこう。


「今度の期末テスト、勝負しようか。」
「赤司くんそういうのまじうざいわー。」


俺に対する減らず口は耐えないが、名字をマネージャーにして後悔したことは今まで一度もない。
彼女もまた、帝光が勝ち続けるために必要な人材だ。






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