間接キスを緑間にとられる虹村
自販機に飲み物を買いに来たら名字先輩がいた。
「あ、にじむーだ。」
「うす。何飲んでんすか?」
「んー?これ。」
名字先輩が手にしているのはおしるこ。
「この暑い中よくそんなん飲めますね。」
「本当は隣の爽やか日向夏を飲みたかったんだけどね、ボタン押し間違えちゃった。」
「ふーん…」
確かに日向夏の隣にはおしるこが並んでいる。間違えた割には先輩はさほど後悔していない様子だった。さて、俺も飲み物を買いにきたわけだが…
「あっ!」
「お、これうまいっすよ。」
先輩が狙っていた日向夏のボタンを押してこれみよがしに飲んでやった。羨ましそうな先輩の視線が気分いい。
「一口!一口ちょーだい!」
「…どうしよっかなー…」
「私のも一口…いや三口あげるから!」
「いや別に…」
…ちょっと待てよ。これってもしかして間接キスのチャンスじゃ…?
先輩が俺の日向夏を飲む。おれが先輩のおしるこを飲む。……どっちにしろ間接キスじゃねーか…!
「ひ、一口だけっすよ?」
「わーいありがとう!」
「あああ…!」
あくまで平然を装って先輩に日向夏を渡そうとした時。自販機の前で絶望する男が現れた。
「真ちゃん!どうしたの?」
「おしるこが…売り切れているのだよ…!」
「おしるこ…?」
緑間だ。そういえばこいついつもおしるこ飲んでたな。しかし自販機のおしるこのボタンには売切れの文字。さっき先輩が買った一本が最後だったようだ。
「よかったら私のあげるよ。」
「!?」
「いただいて…いいんですか?」
「もちろん!」
いやよくねーよクソ!!お前何ちゃっかり先輩と間接キスしようとしてんの!?
あーもう渡しちゃったし!くっそ、緑間に間接キスっつー邪念がないことが更にむかつく!
「先輩、何飲みますか?」
「買ってくれるの?ありがとー!」
「当たり前です。」
そして先輩の飲み物を緑間が買うことで俺と先輩が間接キスする未来は完全に断たれた。
緑間コノヤロー覚えとけ…今日の練習しごいてやるからな…
「じゃあ…ファンタグレープ!」
…あれ、日向夏じゃねーんだ。
「ありがとうございました。」
「こちらこそありがとー!」
先輩確か炭酸飲めないんじゃなかったか?
「…ファンタでいいんすか?」
「だってにじむーファンタ好きでしょ?はい。」
「は…?」
「だから日向夏ちょーだいよね!」
差し出されたファンタを受け取って、飲みかけの日向夏を渡した。
毎回思わされるが、この人には本当敵わないな。
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