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02

 
「いやー悪いな名字急に呼んで。」
「いえ……こちらこそほんとすみません、木兎が……。」
「少し予想はしてましたが。」


私は今、赤葦と一緒に監督の車に乗って地区大会の打ち合わせ会場に向かっている。
何故マネージャーの私がそんなところに行く羽目になっているのか……全ては木兎のせいである。赤葦から預かったプリントはしっかり渡していたし口でも説明していたのに、木兎は寝坊した。待ち合わせ時間になっても一向に現れず、連絡を入れても全然応答が無いことに痺れを切らした監督が私に電話をかけてきて今に至る。


「ていうか私場違いじゃありません?今からでも木兎叩き起こしに行った方が……」
「いやいい。というかむしろ木兎より名字に来てもらった方が理解してもらえる。」
「確かに。」


確かに木兎に注意事項とか説明しても半分も理解してもらえないだろうな。
思わぬチャンスにそわそわしてしまう。だって学校も部活もない日に赤葦に会えるなんて。お互い制服だけど休日に赤葦と一緒にいるという事実だけで勝手にデート気分になれる。急だったから全然おしゃれできなかったけど髪型大丈夫かな。ヘアゴムくらい可愛いのにしてくれば良かったと後悔した。


「おおー……」
「多いですね、人。」


会場に着くと既にたくさんの人で溢れかえっていた。都内のバレー部の顧問と主将たちが集まってるんだから当たり前だ。中にはマネージャーの女子の姿もあったから私もそこまで浮かなかった。よかった。
しかし……さすがバレー部主将達、みんな背がでかい。もしもこの中で迷ってしまったら見つけてもらえる自信がない。そんな中で引けをとらない赤葦を見て身長が大きいんだなぁと再認識した。毎日のようにバレー部員と接していると感覚がズレてしまう。


「大丈夫ですか?」
「え、何が!?」


チラリと盗み見てたつもりが目が合ってしまった。
もしかして心の中でデレデレしてたことがバレたのでは、と内心めちゃくちゃ焦る。いやいやきっと大丈夫、さすがの赤葦も心を読むことはできないはず。


「周りみんなでかいので。ぶつからないようにしてくださいね。」
「大丈夫だよー。」


大丈夫ですかは私を気遣っての言葉だった。こうやって心配されるとなんだか自分が女の子扱いされてるみたいですごく嬉しい。調子に乗ってしまいそうになるけれど、紳士な赤葦はきっとここにいるのが私じゃなくて雪絵でも同じことを言うんだろう。センチメンタルになる必要はない。それが赤葦のいいところで、そういうところを好きになったんだから。


ドン


「あっごめんなさい!」


せっかく赤葦が心配してくれた矢先に人にぶつかってしまった。


「こちらこそ……って名前ちゃん?」
「あ、黒尾くんだ。」


ぶつかったのは音駒高校主将の黒尾くんだった。副主将の海くんもいる。音駒高校とは毎年合同合宿をやってるから顔なじみだ。ぶつかってしまったのは申し訳ないけど知ってる人で良かった。
それにしても黒尾くんは相変わらずすごい髪型だ。去年の合宿でこれはセットじゃなくて寝癖なんだと聞いた時はすごく吃驚した。


「赤葦も合宿ぶり。」
「どうも。」
「今日はエースいねーの?」
「ちょっと諸事情で……」
「寝坊です。」
「あ、言っちゃうんだ。」
「ぶはっ!」


あまり他校に身内の失態は言わない方がいいかと思ってぼかしたら、思いのほか赤葦がサラリと言ってしまって木兎の寝坊がバレた。これはきっと次の合宿でいじられる。まあいいか。


「なるほど。それで代わりに名前ちゃんがいるってわけね。相変わらずエースのお守りご苦労さん。」
「ホントだよ。」
「もう付き合っちゃえば?」
「絶対ない。」
「案外お似合いだと思うけど。」
「お母さんにはなれるかもしれない。」
「ははは、間違いねーな!」
「ちょっと!」


笑いながら頭をくしゃくしゃされた。黒尾くんは軽くやってるつもりでも、彼の大きな手で触られたらたまったもんじゃない。
たいしてセットしてるわけじゃないけど、赤葦の目の前でなんてことをしてくれるんだ。いそいそと乱された髪を整えていると、好戦的に笑った黒尾くんの顔が近付いてきた。


「名前ちゃんは赤葦と付き合いたいんだもんな?」
「な……!?」


私の核心をつく言葉に身動きができなくなった。
え、うそ、何で。赤葦や黒尾くんと比べたらポーカーフェイスなんてうまくできてない自覚はあるけど、他校の黒尾くんにバレてるなんて思わないじゃん。


「じゃ、合宿楽しみにしてる。」


焦る私の顔を満足気に見下ろして黒尾くんは去っていった。とんでもない爆弾を投下して処理もせず帰るとはなんて奴だ。
どうしよう、顔が熱くて赤葦の方向けない。


「……黒尾さんと仲良いんですね。」
「え!?あ、うん、木兎が仲良いからね!」
「……」




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