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01

 
男の子って野蛮で子供っぽいから苦手だ。教室の中で紙飛行機を飛ばしたり、流行のお笑い芸人の真似をしたり。小学生の時も中学生の時も、そして高校生になった今も、どうも同い年の男の子は幼稚に見えた。


「年上と付き合いたい。」
「またそれ?」
「残念。3年になった今先輩はもういませーん。」


付き合うのなら年上。私の恋愛観を語る上で欠かせない第一条件がこれである。
落ち着いた余裕のある大人の男性って素敵。そう、男の子じゃなくて男性。残念ながら同学年以下はみんな男の子。全然ときめかない。早く大学生になって年上の彼氏とキャンパスライフを楽しみたい。そのために今年は部活と勉強に全てを捧げることを人知れず誓った。



+++



「そう思っていた時期が私にもありました。」
「何の話?」


いやでも根本的な恋愛感は変わってない。私は落ち着いた余裕のある男の人が好きなんだ。それに当てはまるのが年上が多いって、ただそれだけのことなんだ。


「赤葦かっこいい。」
「はいはい。」
「またそれね。」


まさか私が年下を好きになるなんて思ってもみなかった。
赤葦というのは私が所属している男子バレー部のセッターで副主将を務める2年生。マネージャーだから去年から知ってはいたけど、接点が多くなったのは彼がレギュラーになってからだった。年下とは思えない落ち着きっぷりに頭の回転の速さ……そしてバレーに熱心に打ち込む姿を近くで見て私はいとも簡単に恋に落ちた。


「ほら名前、赤葦くん来てるよ。」
「えっ!?」


友人に言われて反射的に入口に視線を向けると赤葦が立っていた。かっこいい。赤葦は私と目が合うとペコリと会釈をした。かっこいい。


「ど、どうしよう髪型変じゃない?食べかすついてない?」
「大丈夫可愛い可愛い。」
「大丈夫告ってこい。」
「ななな何言ってんの!」


髪を手櫛で整えて食べかすをチェックして、小走りで赤葦の元へ向かう。この間だけですごくドキドキしてるというのに、私赤葦と目合わせられるかな。


「どうしたの?」
「すみません急に。」


赤葦の前に立つ時には自分なりに精一杯平然を装った。第一声を噛まなかった自分を褒めてあげたい。私がこんなにドキドキしてることは赤葦にはバレていないはずだ。もし知ったら赤葦はどんな反応をするんだろう。考えてみたけど赤葦がポーカーフェイスを崩す姿はどうしても想像できなかった。


「これ、木兎さんに渡しといてもらませんか。」


赤葦から渡されたのは1枚のプリントだった。内容は今度の大会の打ち合わせのお知らせで、確か毎年監督と主将、副主将で行っていた気がする。


「木兎教室にいなかった?」
「はい。多分外でサッカーやってます。」
「ああ……ごめんね。」
「別に、名字先輩が謝ることじゃないですよ。」


赤葦の落ち着いた返答に胸がきゅんとした。この落ち着きっぷりと礼儀正しさ、そして紳士なところがすごく好きだ。木兎とのやりとりを見てるとたまにどっちが年上かわからなくなる時がある。


「えっと……」


プリントを託すという赤葦の用事は終わったのに、私は赤葦とまだ話していたくて「じゃあね」の一言がなかなか言い出せなかった。特に話題があるわけでもないから変な沈黙が続く。


「きょ、今日部活来るよね?」


しどろもどろに続いた言葉は自分でも呆れてしまうものだった。何、「部活来る?」って。赤葦真面目だから部活休むなんて滅多にないし。何今更なこと聞いてんの馬鹿なの私。


「はい行きます。先輩も来ますよね?」
「うん。」
「良かったです。それじゃあまた部活で。」
「うん、じゃあね!」


こんな変な質問にも真面目に返してくれる赤葦ほんと好き。
赤葦の「また部活で」という言葉を聞いて放課後もまた会えるという喜びがこみ上げてくる。頬が緩みそうになるのをなんとか堪えて赤葦に手を振った。


「名前ニヤけすぎ。」
「!」


振り返った瞬間にはもうニヤけていたらしい。




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