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06

 
"今日のめし何?"


毎週土曜日は隣の名字さんの家でめしをご馳走になるのが習慣になってきた。
部活が終わったタイミングで献立を聞くと大体すぐに返事が返ってくるのに今日は全然返事が来ない。もうすぐ家に着いてまうんやけどな。何かあったんやろか、電話してみよかな。


"ごめん、風邪引いちゃった。"


電話をかけようとしたところで返事がきた。風邪引いてたんなら仕方ないな。
大丈夫やろか。一人暮らしの風邪はしんどいよな。少し迷ったけど通話ボタンを押した。


『も、もしもし……』
「ごめん、大丈夫?」
『うん、返事できなくてごめんね。』
「全然。」


電話口から聞こえた名字さんの声は少し掠れていて明らかに調子が悪そうやった。


「めし食った?」
『ずっと寝てたから、まだ……』
「何か持ってこか?」
『えっ……』
「いつも作って貰てるし。おかゆくらいなら作れると思う。」
『本当?作って貰えるなら助かるなあ。』
「わかった、待っとって。」


一人暮らしで風邪をひいても看病してくれる人はおらん。いつもみたいに料理を作る元気もないやろう。
いつも世話になってる分、こういう時くらい力になってやらな。


「あ、レシピ送っといて。」
『ふふ、うん。』


おかゆ言うても何をどのくらい入れればええかとかはわからんから作り方は教えてもらおう。



+++



ピンポーン


「ありがとう。」
「おー。」


名字さんが送ってくれたレシピ通りに作ってみたもののなんかうまくいかんかった。
こんなんでええんやろかと疑問を抱きつつ隣の部屋のインターホンを押すと部屋着姿の梅津さんが出迎えてくれた。冷えピタ貼っとる。しんどそうやな。


「一応できたけど、うまないかも。」
「ううんありがとう。あ!マスクつけて!」
「あ、うん。」


名字さんは俺の作ったおかゆを受け取る前にマスクを押し付けてきた。そんな気にせんでええのに。


「いただきます。」
「ほんまな、うまないと思うで。」
「大丈夫だよ、頑張って作ってくれたんだもん。ありがとう。」


ちょっと味見してみたけど薄くて水っぽくてうまいとは言えんかった。教えてもらった通りにやったつもりやけどうまくいかんもんやな。


「うん、美味しい。お腹空いたけど何も作る気起きなかったから助かった。」


名字さんの料理と比べたら不味いはずなのに、お世辞でもこうやって美味い言われるのって嬉しいもんや。
名字さんが優しいのをええことにいつも甘えてまってるけど、少しくらいは恩返しが出来たやろか。


「お隣さんが宮くんで良かったぁ。」
「……」


それは言い過ぎや。
風邪のせいか力の抜けたふにゃっとした笑顔を見せられて少しだけ変な気分になった。




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