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05

 
"今日の晩飯何?"
"鳥南そば!"
"行く。"


あれからお隣の宮くんとは連絡先を交換して、毎週土曜日は私の部屋で2人でご飯を食べるのが恒例になってきた。
もちろん宮くんの最初の言葉通りやましいことは何一つされていない。宮くんは自分のお茶碗とお箸を持ってやってきて、私が作ったご飯を美味しいと食べて、洗い物をして帰っていく。本当にそれだけだ。友達に話したら「ありえない」と言われてしまった。
私だって別に宮くんと付き合いたいと思ってるわけじゃない。ただ、宮くんのために料理をするのはすごく楽しい。男の子と何を話せばいいかわからなくて女同士の輪の中に閉じこもってきた私にとって、宮くんは初めての男友達だった。


「宮くんって何が一番好き?」
「え……そんなん選べんわ……。」


宮くんは食べることが好きで私は料理が好きだから、ご飯という共通のテーマで話題は尽きない。一番の好物を聞いてみたらどうしても決められないらしくて深刻な顔で悩み始めてしまった。


「最後の晩餐に何食うかは俺の人生のテーマやからな。」
「最後かあ……私はお米かなあ……。」
「結局な。わかるわー。米とたくあんとか最高やんな。」


側から聞いたらどうでもいい会話に聞こえるかもしれないけれど、ものすごく楽しい。宮くんとの時間はとても心地良くて落ち着けて、自然体で話すことができた。


「名字さんは将来料理人とかになるん?」
「ううん、料理は趣味だから仕事にはしたくないなぁ。」
「ふーん……そういうもんか。」
「うん。料理してると無心になれるというか……ひたすらキャベツの千切りするのとかストレス解消になるよ。」
「なるほど、キャベツの千切りが出たらストレス溜まっとるってことやな。」
「あはは、そうだね。」


料理を始めたのはここ最近のことだ。
宮くんには恥ずかしくて言えないけど、大学で初めてできた彼氏に振られて落ち込んで、何か没頭できるものを探した結果が料理だった。こんな理由、話したらきっと呆れられてしまう。
もちろん今では単なるストレス解消法なんかじゃなくて、胸を張って趣味だと言える。


「今日もうまかった。ごちそうさまでした。」
「ありがとう。お粗末さまでした。」


その料理を毎回美味しいと言って食べてくれる存在はとても貴重だ。
宮くんはきっといい旦那さんになるだろうなぁ。






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