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04

 
「……名字さん。」
「!」


テスト期間で早めの時間に帰ったら、名字さんがエントランス前で大きな荷物を地面に置いて鞄をゴソゴソしとった。2つの買い物袋にはそれぞれ米と食材が入っとる。すごい量や。これを女子一人で運ぶのは大変やったやろな。


「ごめん、今開けるね。」
「うん、これ持つよ。」
「え!あ、ありがとう。」


エントランスの鍵を名字さんに開けてもらって、俺は地面に置かれた袋2つを持ち上げた。重っ。


「めっちゃ買うたな。」
「土曜日はまとめ買いの日で……お米もあったから重くて。助かったー。」


そういえばお隣さんからええ匂いが漂ってくんのは決まって土曜日やったな。


「お礼に……あ、お煎餅食べる?」
「んー……お礼してくれんのやったらめし分けてや。」
「!」


煎餅でも嬉しいけど、どうせやったらめしにありつきたい。こんぐらいのことでめし強請るとか、図々しいと思われたやろか。


「今日ハンバーグだけど大丈夫?嫌いなものある?」
「うん、何でも食う。」
「じゃあ、出来たら持ってくね。」


名字さんは快く頷いてくれた。ええ人や。しかもハンバーグとか最高やん。
……米だけ炊いとこ。



+++



ピンポーン


「はーい。」


それから1時間後くらいに玄関のチャイムが鳴った。
わくわくしてドアを開けると、そこにいた名字さんは手ぶらやった。


「あの、色々作ってたら品数多くなっちゃって……運ぶの手伝ってもらってもいい?」
「うん。」


まさかハンバーグ以外にも作ってもらえるとは思わんかった。


「あ、俺が茶碗と箸持ってそっち行こか?」
「えっ。」
「……あ、ごめん別に変なことするつもりはないんやけど……嫌やんな。」


何往復もするより俺が茶碗と箸持って行けば楽やんと思って提案してみてから、よくないことやと気付いた。下心無さすぎて普通に言うてまったわ。付き合うてない女子の部屋に上り込むなんてよくないよなぁ。


「ううん、誰かと一緒にご飯食べるの久しぶりだから嬉しいよ。」
「ほんま?彼氏おらん?」
「うん。宮くんがよければ。」
「じゃあ行くわ。ちょお待ってて。」


名字さんは一瞬戸惑ったものの受け入れてくれた。良かった。お互い恋人がおらんなら俺が手ェ出さなきゃ何の問題もないやろ。
めしを早く食いたいという欲求には勝てなかった。



+++


(夢主視点)


 
「うんま!」


私の部屋でお隣さんの男の子が私の手料理を食べている……こんな展開想像もしてなかった。
しかもこのお隣さんがなかなか整ったお顔立ちをしているものだから、私なんかがこんないい思いをしていいのかと、一生分に近い運を使ってしまったのではと思ってしまう。


「めっちゃうまい。店で出せんちゃう?」
「ほ、褒めすぎだよー……」


お隣さん……宮くんは私の手料理を幸せそうにもりもり食べてくれている。大袈裟に言ってくれているとはわかっててもやっぱり嬉しくて、つい顔がニヤけてしまう。


「名字さんどこの大学?」
「西大だよ。宮くんは?」
「俺赤学。」
「え、頭良いところだ。」
「俺スポーツ推薦やからアホやで。」
「すごい!何やってるの?」
「バレー。」


料理は好きでよく作るものの、こうやって誰かとお喋りしながら食べるのは久しぶりだ。
やっぱり誰かに食べてもらえるのって嬉しいな。自分だけのためより、誰かのために作る方が何倍も楽しい。調子に乗っちゃってあれもこれもと作っていたらかなり品数が多くなってしまった。
余った分は明日の私の朝ごはんにしようと思ってたのに宮くんの食欲は私の想像以上で、全てペロリと平らげてしまった。


「すごい、食べちゃったね。」
「うん。めっちゃ美味かった。毎日でも食いたいくらいや。」
「えっ。」
「……あ。」


そんな、宮くんは深い意味もなく言ったんだろうけど私はその言葉に過剰に反応してしまった。特に深い意味はないとわかってはいてもどんどん顔に熱が集中していくのがわかって恥ずかしい。


「ごめん、そういうつもりやなくて。」
「わ、わかってるよ。でも、あの、気を付けた方がいいと思う……。」
「うぃっす。」


こういうことを平気で言っちゃうなんて宮くんは天然タラシなのかもしれない。宮くんみたいにかっこいい人に言われたらほとんどの女の子は意識しちゃうと思う。
この先犠牲者が生まれないように僭越ながら注意させてもらった。








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