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08


(うわああああ……!!)


言うつもりなかったのに!言うつもりなかったのにーーー!!
一心不乱に走り抜けた校舎裏の隅で私は頭を抱えてしゃがみこんだ。
木葉のおかげでようやく素直に受け止められた赤葦への気持ちを、木兎がデリカシーの欠片もない大声で復唱するものだから……絶対聞かれた。
ていうか赤葦いつからいたんだろう。場合によっては木兎より前に私の言葉を直接聞いていた可能性もある。だとしたら恥ずかしくて死ねそう。


「名字先輩!」
「ひっ!」


少しずつ落ち着いてきたところでまた一気に心臓が跳ね上がった。今赤葦が背後にいることは振り返らなくてもわかる。


「あ、ああの!あれは、その……!」
「……」


さっきのことを誤魔化そうと言葉を探すけれど見つからない。だって、私が赤葦が好きなことは事実だから。言い訳でも嘘だなんて言いたくなかった。


「先輩は……ずるいです。」
「え!?」


振り返ると赤葦は今までに見たことない表情をしていた。走ってきたからかな、ちょっと顔が赤くなっていて、余裕の無さそうな表情がなんだか新鮮だった。


「先輩は部活のことを気にするだろうと思って……俺がどれだけその言葉を飲み込んできたか知ってますか?」
「え?」
「それなのにこうもあっさり言われるなんて……。」
「あ、あれは!いつの間にか口にしてて……わ、忘れて……!」


やっぱり私の「好き」の方も聞かれていたみたいだ。どうしよう、私もう明日から部活来れないかもしれない。


「……わかりました。」
「……!」


自分で「忘れて」と言ったくせにこうもあっさり了承されるとそれはそれで寂しいと思ってしまう。
でもそうだよね、赤葦だって困るだろうし……だったらお互いになかったことにして、また前みたいに戻れるんだったらそれが一番良いのかもしれない。


「名字先輩のことが好きです。付き合ってください。」
「……!?」
「さっきの名字先輩の言葉は忘れたので、俺から告白したってことになりますよね。」
「へ……いや……え!?」


赤葦の口から信じられない言葉が聞こえた。夢じゃないか、今目の前にいるのは本物の赤葦なのか、落ち着かない頭で考えた。そして赤葦の言葉を思い返して確認する。「好き」、「付き合う」、「告白」……何度も何度もイメージしていたフレーズが、確かに赤葦の口から出てきていた。聞き間違いじゃない。目の前の赤葦の顔は赤い。きっと私の顔はもっと赤い。


「わ、私も……!赤葦のこと、好き。付き合いたい……です。」
「じゃあ、一緒ですね。」


しどろもどろな言葉に頷いて笑ってくれた赤葦の顔を、私は一生忘れないと思う。




■■
元々5話程度で収めようと思ってたので急展開だったと思いますが、最後まで読んで頂きありがとうございました。


( 2017.9〜2018.2 )

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